皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素である、「ビオチン(ビタミンB7)」。抜け毛や切れ毛が多いときや薄毛対策として、ビオチンのサプリが効果的だという情報を耳にしたことがある人もいるかもしれません。けれど実際のところ、それってホントなの…?
そこで<コスモポリタン アメリカ版>は、専門家たちにビオチンの育毛効果に関する見解を取材! 本記事では、皮膚科医のダヴァル・G・バヌサリ先生と、ニューヨークなどに美容サロンを展開する「Paul Labrecque Salon and Skincare Spa」で毛髪専門家を務めるブリジッド・ヒルさんによる解説をお届けします。
そもそもビオチンってなに?
ビオチンとは、水溶性ビタミンのひとつである「ビタミンB7(以前はビタミンHと呼ばれていた成分)」のこと。
アメリカ国立衛生研究所によれば、体内にビオチンが不足している場合、(体のほかの部位と同様に)髪が薄くなったり、爪が割れやすくなるといった症状が起こる可能性があるんだそう。
ただし、バヌサリ先生の話を聞くと、ビオチン欠乏症になる可能性は低いよう。
「ビオチンは肉、卵、魚、ナッツ、一部の乳製品をはじめとする多くの食品にも含まれているため、普段の食事でしっかり摂取できます」
ビオチンは育毛に効果的なの?
結論としては、「ビオチンに育毛効果があるかどうかの十分な科学的証拠はない」というのが現段階での真実。
「強く健康な長い髪を手に入れたいならビオチンのサプリメントを摂るべきという考えは、すでに過去のものです。実際のところ、サプリを飲んだ場合とそうでない場合との違いを示す証拠はほとんどありませんので…」とバヌサリ先生。
「もちろん、ビオチンのサプリを服用しても体に害がないと考える皮膚科医は多いでしょう。しかし同時に、目に見える効果がほぼないのも事実です」
注目すべきは、ビオチンが水溶性であるという点。たとえビオチンを大量に摂取しても、過剰分は尿から排出されるため体内には残らないのだとか。
ヒルさんも、ビオチンの育毛効果は限定的であることを強調しています。
「体内のビオチンが欠乏している場合のみ、サプリを飲むことで育毛効果が期待できます。つまり、サプリで過剰にビオチンを補給しても、育毛に繋がる“栄養補給”にはなりえないんです」
ビオチンの効果はどのぐらいで出るの?
妊娠中や授乳中に軽度のビオチン欠乏症になる可能性はあるものの、特定するためには血液検査が必要。
バヌサリ先生は「ビオチン欠乏症になる人の割合は低いものの、もしそのような症状が出た場合、サプリ服用後数ヵ月で効果が期待できる場合があります」と解説。しかし、目に見える効果がほとんど得られない人もいるのだとか。
ビオチンの副作用とは?
バヌサリ先生によると、ビオチンは甲状腺の検査(脱毛の理由として検査されることが多い)や心筋トロポニン測定(心筋梗塞や狭心症の検査)の精度を変化させる可能性があり、深刻な病気を隠してしまうことがあるんだとか。
また、ビオチンの過剰摂取がニキビの原因になる可能性もバヌサリ先生は指摘しています。
「ビタミンB5の吸収を妨げてしまい、皮膚のバリアを破壊してしまうことがあるのです。この症状を立証する研究を目にしたことはありませんが、サプリの服用開始後にニキビが悪化した場合は、(ビオチンのサプリ服用の副作用を)疑うべきかもしれません」
バヌサリ先生はビオチンのみのサプリよりも、ビオチンも含有しているマルチビタミンを補給することをすすめているそう。効果は少ないものの、こういった副作用を避けられることも。
「抜け毛が気になる人の場合、髪を強化する成分であるビタミンDの補充をすすめることもあります。しかし、育毛・発毛に影響をおよぼすビタミン的要因はほかにもあります。抜け毛がひどい場合、まずは医師に相談し適切な治療を受けましょう」
皮膚や髪の健康を保つには、食生活や生活習慣を見直すことが結果的には近道なのかもしれません。
※この翻訳は、抄訳です。
Translation: 宮田華子