インターネット上でのSNSやオンラインゲーム、動画ストリーミングなど、インターネットにアクセスして楽しむ娯楽が主流となるなかで、「ネットポルノ」の消費と依存症も問題視される昨今。

本記事では、現在問題となっている「ポルノ依存症」を巡る議論や、注意するべき兆候などを専門家の知見を交えながら解説します。

増加する「ポルノ依存症」への悩み

英国依存症治療グループ(UKAT)」のデータによると、イギリスでは2022年に、約6万人がネットポルノ依存症の克服を支援する関連のウェブサイトを訪れており、これは前年のアクセスのほぼ倍の数値であることを発表しています。

ポルノ依存症とセックス依存症の治療を専門とする施設「ザ・ローレルセンター」の創設者であるポーラ・ホール博士は、統計は「絶えず変化している」としたうえで、彼女のクリニックへの問い合わせが現在も増え続けていると言います。

インターネットポルノ依存の片りんの症状に気づいている人もいれば、認識していない人や行動に移して助けを求めようとしない人がいるのも事実。そのため、実際にポルノ依存に悩んでいる人を数値化するのは難しいのが現状です。

そもそも現在はインターネットを通して様々な方法で気軽にポルノを視聴できるため、ポルノコンテンツの消費方法や、ポルノ視聴による影響には個人差があるもの。そのため、ポルノ依存症を定義すること自体も難しい状態なのです。

「ポルノ依存症」という言葉も議論の的に

性生活と人間関係を専門とする心理療法士ミランダ・クリストファーズ氏は、「ポルノ依存症」という言葉にも賛否両論があると説明します。

そもそも長年にわたって「性依存症(セックス依存症)」という用語を依存症の分類に含めるべきかという議論が、国内問わず行われていた背景があり、DSM-5(精神疾患の国際的な診断基準)では、いまだに「依存症」として認められていません。

「性依存症という言葉の代わりに、『Sexual Compulsivity(強迫的性行動症)』などが使われています」

そのため、ポルノ依存症についても同様に、依存症として分類されるかは議論の最中なのです。

また、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究では、「神経学的な観点では、ポルノ観賞には依存性がない」としています。

研究対象者が官能的な画像を見たときの脳を調べたところ、脳の反応や働きが低下。喫煙やギャンブルなどの依存症だと、脳の反応が活発になることを考えると、研究の結果ではほかの依存症とはこれは逆の反応を示しています。

internet addiction
Mladen Zivkovic//Getty Images

「ポルノ依存」による影響

ポルノ鑑賞の頻度や種類など、消費方法や許容量には個人差があります。

1日に数回ポルノを見ても生活に悪影響が出るという科学的な根拠がなく、人間関係や仕事に支障がないこともあるため、「1日に〇回ポルノを見る場合には問題」「〇時間以上見ている場合は危険」と決めつけないことが重要だとクリストファーズ氏は言います。

そのためポルノ依存を定義づけるのは難しいものの、ポルノの消費が自分自身に有害な影響を与えていると感じるのであれば、それに対応して視聴する時間や頻度、内容などの習慣を見直すことが大切。

「羞恥心を誘発させたり、より過激なもの求めるようになったり、パートナーとの性的親密さが欠けてきたと感じることがあります」
「ポルノを見たくなる衝動を強く感じるようになり、仕事中など、適切ではないタイミングで衝動が押し寄せてくることもあります」

ポルノを楽しんでいないにもかかわらず見続けてしまう場合も、注意するべきサイン。

「消費量というよりかは、心理的依存が問題です。孤独感や職場でのストレス、大切な人との別れ、精神的・肉体的な健康問題など、人生における困難に対する“慰め”や気晴らしとしてポルノ観賞を止められなくなることがあります」

「ポルノ依存症」との向き合い方

恋人やパートナー、家族がポルノに依存している可能性がある場合には、実際にポルノに依存しているのか、それともあなたの道徳的な尺度に合わないことを依存と決めつけているかを見極めることが重要です。

婚姻関係や交際関係において、どちらか一方がポルノ依存症の状態であることが判明すると、不安を覚えたりして少なからず関係性に影響を与える可能性も。

そのため、もしも身近な人がポルノ依存症を抱えている可能性があると思った場合には「その原因を勝手に決めつけたりせず、慎重に理解するようにしましょう」とクリストファーズ氏はアドバイスします。

「(相手がポルノ依存症だと知ることで)パートナーが自分に対してどう考えているのか、そして自分がパートナーにとって十分でないのではないかという点などに疑問を持ち、関係性が崩れてしまうカップルもいます。自分以外のところに性的な喜びを見つけるパートナーの姿を見ることで、自尊心を傷つけられてしまうのです」

あなた自身がポルノ依存症の可能性がある場合はもちろん、身近な人にその兆候がある場合でも、自己判断をせず、セラピストなど専門家のサポートを受けることが大切です。 必要な場合には周囲の手を借りながら、少しずつ克服の道を歩みだしましょう。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: ARI
COSMOPOLITAN