日本では医師の診察や処方箋のもとに処方されている「経口避妊薬(ピル)」。避妊や月経痛・PMS(月経前症候群)の緩和、生理周期を整えるためなどに使われています。

アメリカではこのほど、初めて処方箋なしで服用できる経口避妊薬が3月末から販売されると発表され、注目を集めています。

アメリカ初の市販の経口避妊薬

今回、アメリカの大手小売店や薬局で処方箋なしに買えるようになったのは、経口避妊薬の「オピル(Opill)」。

経口避妊薬は飲み薬による避妊方法で、毎日決まった時間帯に服用することで高い避妊効果を発揮するもの。アメリカではほかにも避妊注射や避妊の皮下インプラントなどの選択肢がありますが、ピルの使用率が一番高いそう。

妊娠の可能性がある性交の72時間以内に接種することで避妊効果を示す「緊急避妊薬(モーニングアフターピル)」はすでにアメリカ国内で薬局などで販売されていますが、経口避妊薬の市販は初めてとなりました。

製造元のペリゴ(Perrigo)社は、2023年7月にFDA(食品医薬品局)の承認を受けたのちにすでに店頭への出荷が開始されたこと、そして3月末にはオンラインでの購入も始まる予定だと報告しました。

同社の希望小売価格によれば店頭での価格帯は、一カ月分は19.99ドル(約2,930円)からで、3カ月分 49.99ドル(約7,340円)ほどだそう。

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    「オピル(Opill)」とは?

    オピルは黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを使用している単独ホルモン剤で、規定通りに服用すれば98%の確率で安全かつ効果的に妊娠を防ぐことできると示されています。

    一般的に避妊や月経痛・月経不順の改善などに使われる「低用量ピル(低用量経口避妊薬)」はプロゲステロンとエストロゲン(卵胞ホルモン)を含んでいます。<verywell health>によるとオピルは、“ミニピル”と呼ばれる種類のピルで、副作用のリスクを最小限に抑えたい人などに選ばれている薬なのだそう。

    ミニピルはエストロゲンによる副作用が現れてしまう人や、肥満や喫煙などの体質を理由に低用量ピルの処方を受けられない人も服用が可能とされています。ただし他のピル(低用量ピル)より、同じ時間に確実に服用することがいっそう重要になります。

    オピルは全年齢対象のOTC医薬品(一般用医薬品)ですが、乳がんのある方、または乳がんにかかったことのある方は服用できないとのこと。また緊急避妊薬ではないため、避妊をしていない性行為の後に服用しても妊娠を防ぐことはできず、HIV/AIDSやその他の性感染症(STD)の予防にはコンドームの着用が推奨されています。

    誰もがアクセスしやすいように

    ペリゴ社によると、アメリカで報告されている毎年610万件の妊娠のうち、ほぼ半数(45%)が意図しない妊娠であるとのこと。経口避妊薬を入手するにも、医療機関との受診日の調整や医療機関までのアクセス、アメリカにおける保険の加入状況による費用の問題などが、多くの人にとってハードルとなっている現状があります。

    アメリカでは2022年7月に、女性が人工妊娠中絶を受ける権利は憲法で保障されるべきことだと決められていた「ロー対ウェイド事件」を覆す判決を連邦最高裁判所が下しました。それ以来、中絶の禁止は各州の方針に委ねられることになったことも受け、経口避妊薬の市販を求める声が広まっていました。

    一方、市販されることに対してFDAの研究者からは、飲むべきでない人や10代の人がきちんと規定を理解した上で服用できるかについての懸念の声もありました。<NEWYORK POST>は、アメリカ産科婦人科学会は10代の人を含む、経口中絶薬の接種を希望する人は適切にその判断ができることを研究結果が示していると述べた、と報じています。

    処方箋なしで経口避妊薬を取り扱うことで、すでに薬局に並んでいるほかの避妊法よりも効果的な避妊法の選択肢が増え、幅広い年齢層の役に立てるはずだとペリゴ社は発信しました。

    日本で経口避妊薬を入手するには、婦人科で受診をして処方してもらう方法に加えて、オンライン診療に対応したクリニックやサービスが増えています。月経困難症や子宮内膜症の治療を目的として服用する場合は保険が適用され、避妊や月経移動を目的とする場合は保険適用外での処方となります。

    緊急避妊薬(アフターピル)」については、処方箋なしに必要とする人が適切に利用できる仕組みを検討するために、全国145カ所の薬局での試験販売が2023年11月に開始されました。