イングランドで開催される世界最大規模のロック・フェス「グラストンベリー・フェスティバル」。世界的に有名なアーティストが出演することもあり、チケットはなかなか取れないのが常。

コスモポリタン イギリス版によると、ブロガーのローラ・ホワイトハーストさんは今年、仲良しグループの友人たちとチケットを手に入れたそう。その時は喜びもひとしおだったという彼女。

しかし、チケットを取得してからフェスまでの期間に、ローラさんは恐ろしい思いをすることに。フェスに一緒に行くはずだった仲良しグループの男性2人からレイプされ、恐怖のどん底に突き落とされた彼女は、「その夜の記憶は曖昧なんだけど、酔った状態で他の友達に送った助けを求めるメールや、怪我ははっきりと残っていた」とブログに綴っています。

それだけでもトラウマなのに、グループの他のメンバーたちから、メールや電話で「事件のことを通報するな」と言われ、さらに追い込まれたローラさん。メールには「グループを崩壊させないで。私たちまでグランストンベリーに行けなくなっちゃうでしょ」と書かれていたとのこと。嫌がらせは続き、ローラさんはついに警察に相談することを決意。

「3時間の面談が終わっても、心の平穏は得られなかった。休職して、2カ月分の傷病手当金で生活費も切り詰めている状況だった上に、何カ月も前から楽しみにしていたフェスに『来るな』って皆から脅迫されて…

警察官は、安心してフェスに行けるよう、グラストンベリーの主催側に相談するように提案。ローラさんはその助言に従い、そしてフェスの後、スタッフたちの親切な対応への感謝の気持ちをブログで公開したことで、話題を呼ぶことに。

(グラストンベリーの)電話番号もメールアドレスも見つからなかったから、ウェブサイトの問い合わせフォームに記入して送信したの。きっとこれだけの規模のフェスだから毎日数百件もの問い合わせがあって、私の依頼なんて見落されてしまうだろうと思った。でもそれは大間違いだった。

すぐにマリアンナという素敵な方からメールが送られてきて、イベント・オペレーション責任者から電話するとのことだった。数日後、その責任者のエイドリアンさんという元警察官の方が電話をくださって、事情を説明することに。知らない人に事情を詳しく説明するのは辛かったけど、彼のおかげで私は心が落ち着いたの。

即、スタッフの方たちは準備を始めてくれた。私が確実にフェスに参加できるよう、できる限りのことをして、私の安全を確保するために。私の事件を担当する警察官にも連絡して、一緒に計画を練ってくれた。イベント・オペレーション責任者は、フェス前の数週間はきっと世界でも彼ほど忙しい人はいないという状態のはずなのに、自ら対応してくださった。感動したわ(ここに至るまでに私は感動して5回くらい泣いたけど、この後も何度も感激して泣くことに…)。

あるレイプ被害者の人生を救った、感動の「音楽フェス」
Getty Images

責任者のエイドリアンさんは、まずローラさんがスタッフ専用の駐車場を使えるよう手配。その理由は、フェス行きの高速バスに乗れば加害者グループと鉢合わせするかもしれないから。

そしてついにフェス初日。ローラさんが友達1人を連れてスタッフ専用の駐車場に車で到着すると、最初にメールをくれたマリアンナさんが警備員のケリーさんとともにハグで迎えてくれたそう。初対面にもかかわらず、懐かしい友人に会うようだったと振り返るローラさん。他のフェス参加者は、バスの駐車場から会場入口まで長蛇の列を成して歩く必要があるけれど、マリアンナさんとケリーさんはローラさん達のテントと5日分の荷物を警備車両に積み、会場まで送迎してくれたとのこと。そして、加害者とその仲間たちとすれ違うのではないかとビクビクしていたローラさんの手を、マリアンナさんはずっと握っていてくれたのだとか。

さらに、いざという時に近くにいるスタッフに渡せる緊急連絡カードや、緊急時の電話番号、そして、静かなところで心を落ち着かせたくなった時のために、会員制のバーに入る許可証も提供してもらえることに。

ローラさんは加害者がいるグループとは別のキャンプに誘導され、そこの世話役のスタッフも事情を把握。彼らもローラさんをハグで迎え入れてくれ、荷物を運びテントを作るのを手伝ってくれたとのこと。

フェスは素晴らしかったわ。確かに近寄れない場所(加害者たちが滞在しているキャンプ)もあったし、大好きなバンドでも会場が小さいと行かなかったけど(彼らがいるはずと分かっていたから)、ありがたいことに緊急連絡カードは一度も使わずに済んだ。[中略]素敵な友達とも出会い、刺激的なパフォーマンスを観て、思いっきり日焼けをして、信じられないくらい二日酔いもした。そして、最終的には自分が被害者であると感じずに済んだ。念願のグラストンベリーにようやく来られた一参加者の気分を味わえたの。

この手紙は、感謝の気持ちを伝えるためのもの。感謝という言葉だけでは足りない。私に対するスタッフの親切な行為を知る人はほとんどいないはず。彼らは後で公表するためでも、昇級のためでも、名誉のためでもなく、ただただ本当に私のことを思いやって、これらのことをしてくれた。私のブログの数少ない読者がこの手紙を拡散しても偉大なる(グラストンベリー主催者の)マイケル・イービス氏まで届くとは思えないけど、この手紙は、もっと広い意味で、思いやりは存在するんだって伝えたくて書いてる。時としてあらゆる希望を失ったとき、見知らぬ人の信じられないほど利他的な優しさが、戦い続ける力をくれる。私はこれまでひどい人にも会ってきて、彼らのせいで精神も打ち砕かれ、正直、自分の人生はもう生きる価値がないと思うこともあった。今回のグラストンベリーは私にとって単なるフェスではなく、限りない善意を持つ人々と出会い、人を信じる力を取り戻すことができた経験だった。

だから、エイドリアンやマリアンナ、ケリー、そしてその他のスタッフにこの手紙が届くよう願ってる。届かなかったとしても、皆さんの思いやりで私の世界が変わったこと、生き続ける力を私に与えてくれたことを知っていてくれればと願うわ。

愛をこめて。

ローラ

自身の辛い体験をブログ上で公開するには、きっとかなりの勇気が必要だったはず。それでも悲惨な事件に負けず、すべてを包み隠さず書くことで、スタッフたちへの感謝の気持ちを示したローラさん。

彼女のブログは、世界には善意にあふれる人もたくさんいて、そういう人々のおかげでこの世は一層輝くのだと、改めて教えてくれているようです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Takako Fukasawa(Office Miyazaki Inc.)

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