配偶者や恋人など親密な関係にある、または過去にそれらの関係にあった人から身体的・精神的に振るわれる暴力を指す、「ドメスティック・バイオレンス(DV)」。DVはあらゆるかたちで広がっており、被害者の状況が表面化することは多くありません。

しかし、統計が示すのは、ショッキングな現実。全米DV防止連合によれば、アメリカでは、平均すると1分間に20人が親密なパートナーから身体的な暴力を受けており、合計すると1年で男女合わせて1,000万人以上が被害に遭っています。

今回は<グッドハウス・キーピング>より、数字で見る「アメリカのDVの現状」についてお届け。「女性の3人に1人、男性の4人に1人が、親密なパートナーから身体的な虐待を受けたことがある」というその背景や原因とは――。

※記事内には暴力や性暴力に関する記述が含まれています。心身への影響を懸念される方は、閲覧にご注意ください。


アメリカでは9秒に1人の女性が暴行を受けている

2017年に<ハフィントン・ポスト>が発表したデータによると、現在、あるいは過去の男性パートナーに殺された女性の数の合計は11,766人。

あらゆる統計の数字を見ても、DV被害は拡大しています。にも拘わらず、社会はこの現実に目をつぶりがちです」と語るのは、DVの防止に取り組む「ブレイク・ザ・サイクル」ディレクター、エイミー・サンチェスさん。

この10年間の間にアメリカ国内のDVの割合は減ったものの、まだまだ暴力的な家庭で暮らしている女性や子どもたちが大勢いるのは事実。

「喫煙や心疾患のように、何百万人に影響を与える健康問題があれば、社会は協力してどうしたらいいかを考えます。ところが、DVは“家族間のプライベートな問題”であるとされ話題に上がることは多くありません」

女性の4人に1人、男性の7人に1人が親密なパートナーによる深刻な身体的暴力の被害者になったことがある

アメリカ家族療法学会によると、夫婦や親密なパートナー同士のおよそ20%が身体的な暴力を経験。精神的な虐待は、さらに多いと言われています。統計情報を見ると、18歳から24歳の女性は最もパートナーからの暴力にさらされやすい年代で、DV被害者の85%が女性だとされています。

アメリカ合衆国司法省によると、複数の人種のルーツを持つ女性が親密なパートナーから暴力を受ける割合が最も高く、アメリカ疾病予防管理センターは、白人、黒人、ヒスパニックの女性はすべて同じ割合でこうした暴力を受けていると報告しています。

ある報告では、アラスカ州やメイン州、ニューメキシコ州、テキサス州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州、ヴァーモント州でのDVの数が多いとされているものの、州によって定義が変わるため比較するのは不可能だそう。

business man's hand pointing at tiny woman
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DVのホットラインには2万件以上の電話相談が

ナショナル・センター・オン・ドメスティック・アンド・セクシュアル・バイオレンス」のデボラ・タッカーさんは、「多くの人々がDVの存在を受け入れたがらないのは、現実から目を背けたいからです」とコメント。

「DVは“恵まれない人々の問題”だと考えている人が多いようです。問題を自分自身と切り離して、自分の身の回りには起こらないと信じたいから。でも、DVはどこにでも存在しています。受け入れるのは大変つらいことなのです」

DVの問題は、あらゆるセクシャリティやジェンダーの間で起こっていること。

女性に対する暴力について調べた全米の調査によると、「女性同士の同性カップルでは、ヘテロセクシュアル(異性愛)のカップルに比べて、親密なパートナーからの暴力が少ない」という報告も。対照的に、DV被害者の男性グループの中で最も多い割合を占めているのが、男性パートナーと暮らしている男性だと伝えられています。

被害者のうちの34%しか治療を受けていない

親密なパートナーから傷つけられた人々のうち、治療を受けたのはわずか34%で、法の介入を受ける割合はそれ以下。そして、女性に対する暴力について調べた全米の調査によると、女性に対する身体的な暴力で警察に通報されたものは、年間で全体の27%という現状も。

「重傷を負いながら、助けも求めずに一週間そのまま過ごしている女性たちを見てきました」と語るのは、タッカーさん。

その理由として挙げられるのは、多くの人々が、加害者の怒りに触れたり、脱出計画が失敗したりするのを恐れているから。DV介入プログラムは、「関係が続いている間に比べて、逃げた後の2週間の間に女性が殺される割合は、70倍に上る」と報告しています。

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DVの19%には凶器が用いられている

これは特に警察官の配偶者に当てはまることで、複数の研究が、警察官の家族のうちの24〜40%がドメスティックバイオレンスを経験していると報告(一般的な家族では10%)。

被害者が助けを求める相手が虐待者の友人や同僚であるというだけでなく、虐待者自身も銃を所有していて、そのことが殺人のリスクを500%にまで高めていると調査では明らかになっています。

性被害を受けた女性の45%が親密なパートナーから

また、なんとかして虐待的なパートナーから逃げられたとしても、その後の生活は容易ではありません。

虐待を受けた女性の99%が、パートナーにすべての金銭を支配されるという「経済的DV」を経験すると推測されており、虐待によって生じた問題から、21〜60%が仕事を失っています。つまり逃げられたとしても、収入も財産もないという状態に陥る可能性があるということなのです。

全米ホームレス連合は、39%の都市で家族でホームレスになる一番の原因はDVだと報告。 そして毎年、1,000万人におよぶ子どもたちがDVにさらされており、アメリカ疾病予防管理センターはこれを「深刻で、予防可能な公衆衛生問題」と捉えています。そして、胸が痛むことに、DVにさらされている子どもたちの90%は被害の目撃者で、その影響を生涯にわたって受けつづけると言われています。

世界保健機構(WHO)によると、男性が親密なパートナーに暴力をふるう傾向を高める最も確実な危険因子の一つが、子どもの頃にDVを目撃したか、経験したこと。

サンチェスさんによれば、「暴力的な家庭で暮らしている若者が希死念慮を抱える割合は6倍」だと言い、こうした男性のおよそ半数は問題を繰り返したくないと思っているにもかかわらず、しばしば個人的な関係で苦しんでいると言います。

これは、子どもの頃に健全な人間関係や重要な信頼、尊重を学ぶ機会がなかったことが原因とされています。

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毎年、子どもの15人に1人が親密なパートナーから暴力を受けている

DVに関する法整備は整っているものの、それだけでは十分ではありません。

女子高校生の21%近く、男子高校生の13%以上が、身体的、あるいは性的な虐待を恋人から受けたことがあるという調査結果もあり、そういった考え方が根本的に変わらないと意味がないとサンチェスさんは言います。

「誰もがこれは自分の問題だと理解する必要があります。警官や裁判官だけの問題ではありません。私たちには皆、向き合う義務があるのです」
「30年前、文化的に喫煙は自宅でも職場でもどこでも許されていました。しかし今では、法律違反で文化的にも許されません。私たちは規範や行動を転換したのです。リサイクルについても同じです。今では、私たちは自分たちの行動、価値観を変え、リサイクルしています。DVについても同じことが言えます。私たちは、どうしたらいいのかわかっているはずなのです」

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※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
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