一般的に「旗」は、国やコミュニティのシンボルとして、アイデンティティを表すためにも重宝されるもの。今や実際に掲げる大きな旗以外にも、ボタンピンや絵文字など、さまざまな場面で使われていますが、それは世の中に対して、自分が何者であるか、または自分の意思・信条を表明するための大切な役割をもっています。

LGBTQ+の「プライドフラッグ」にはコミュニティそれぞれを表現する多くの種類がありますが、トランスジェンダーのプライドフラッグは、水色、ピンク、白の3色で5つの線があるデザインのもの。トランスジェンダーやノンバイナリーのコミュニティにとって深い意味をもつこの旗の意味や歴史について、<GOOD HOUSEKEEPING>からご紹介します。

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トランスジェンダーのプライドフラッグの意義

トランスジェンダーのプライドフラッグは1990年代後半に登場し、過去10年ほどで一般的に使用されるようになりました。これはトランスジェンダーやノンバイナリーの人々の可視化と比例していると考えられます。

2022年6月に発表されたピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカの成人人口の1.6%がトランスジェンダーかノンバイナリーに自分があてはまると考えているそう。また、若年層の5%は、出生時に割り当てられた性別と自身のジェンダーが異なると答えています。しかし、トランスジェンダーの人々が社会から受け入れられているとは言いづらいのが現状です。

アメリカ自由人権協会は2022年、トランスジェンダーの人々が学校、医療機関、職場などで差別に直面することが多いと示すレポートを発表。さらに、11月8日時点での同機関のデータによれば、各自治体を含むアメリカ国内で反トランスの法律が制定されたケースは506件にのぼります。

35%のトランスジェンダーの若者は、ジェンダー・アファーメーション・ヘルスケア(個々のジェンダー身体の希望に合わせた医療と健康ケア)を禁止している州に住んでいることがヒューマンライツ・キャンペーン・ファンデーションのデータからわかっています。

だからこそ、当事者だけでなくアライ(ally:同盟や支援、味方などを意味する英語)としても、トランスジェンダーのコミュニティを支援する姿勢を見せたり、トランスジェンダーの人々の可視化のために働きかけたり、トランスジェンダーの人々の声や貢献、これまでの功績を讃えたりすることが大切なのです。

transgender pride flag waving on the blue sky
nito100//Getty Images

トランスジェンダーのプライドフラッグの歴史

トランスジェンダーのプライドフラッグは、トランス女性で元米軍海軍のモニカ・ヘルムズさんが1999年にデザインしたのだそう。彼女は、アクティビストとして活動し、トランスジェンダー・アメリカン・ヴェテランズ・アソシエーションを共同創設しています。

transgender flag
Vladimir Vladimirov//Getty Images

そして、2000年のフィーニックス・プライド・パレードで、自作のプライドフラッグをもって行ったことが、初めての使用例に。

モニカさんは、2017年の<デイリー・ビースト>とのインタビューで、「ある日の朝、たまたまデザインが頭に浮かびました。“神のお告げ”とよんでいる」と語っています。そして当時は多くの人が関心を寄せていたけれど、まさかここまで世界中に広がるとは思っていなかった、とも。

「私自身のために作ったもので、誰かに受け入れられなくてもいいって考えていました。でも、多くの人がそれぞれの色が示すものやデザインを気に入ってくれて、使ってくれるようになりました」

2019年に出版した回顧録『More Than Just A Flag』のなかで彼女は、「フラッグの使用が広まるスピードには驚きましたし、歴史的な役所や建物の上ではためいているフラッグやその写真を見るたび、誇りに満ちた気持ちになります」と語っています。

また、LGBTQ+コミュニティとデザインに関する書籍である『クィアxデザイン』によれば、モニカさんは1番最初に作ったトランスのプライドフラッグを2014年、国立アメリカ歴史博物館に寄贈したのだそう。

各色が表すものとは?

モニカさんが想いを込めて考えたデザインには、それぞれ意味が。デザインに関しては、「ストライプの配置は、どの方向に持っても“正しい”ように左右上下対称なデザイン。これは、自分らしい“正しさ”を探す私たちを表している」のだと言います。

LGBTQ+メディアの<プライド>とのインタビューで、モニカさんはそれぞれの色の意味について以下のように説明。

  • ピンク…伝統的にフェミニン(女性的)だとされてきた色。女性らしさを表しています。
  • 水色…伝統的にマスキュリン(男性的)だとされてきた色。男性らしさを表しています
  • 白…トランジション(移行)中の人や、ジェンダーがない、ニュートラルな人、インターセックスの人々を表しています

トランスジェンダー以外のプライドフラッグもある?

それぞれが自分だけのアイデンティティをもっているのと同じように、それを象徴するだけの数多くのプライドフラッグが存在しています。もしあなたやあなたの周りの人が、LGBTQ+コミュニティをサポートする方法を探している場合は、プライドフラッグを掲げてみてはいかがでしょうか。

pride protest
Vladimir Vladimirov//Getty Images

当事者じゃないアライの人の場合は、支援を表明するのに声をあげることはとても意義のあることです。特に国際トランスジェンダー可視化の日(3月31日)、国際トランスジェンダー認知週間(11月13〜19日)、国際トランスジェンダー追悼の日(11月19日)などはいっそう意識をすると良いでしょう。

トランスジェンダーの人々が暮らしやすい社会にするためには、たくさんの人の協力が必要になります。ひとりひとりがトランスジェンダーの人々へのサポートの声をあげることが大切です。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:佐立武士
GOOD HOUSEKEEPING