日本ではまだ馴染みが薄いものの、強い甘味を持ち、ミネラルが豊富で健康効果のあるドライフルーツとして、近年人気が上昇している「デーツ」。スーパーやコンビニで見かけたことがある人も多いのではないでしょうか?

そこで、今回はデーツの種類や栄養価、それがもたらす健康効果やおすすめの食べ方について、菜食コンサルタントのYukaさんが解説していきます。

デーツとは

デーツとは、北アフリカから中東を原産とするヤシ科の植物、ナツメヤシの果実。まだ熟していないデーツは、リンゴのようなサクッとした食感でほのかに甘く、熟すとトロリと柔らかくなって甘味が増していきます。実を採らずにつけたままにしておくと、太陽の光を浴びて樹上で完熟、そして乾燥していき、一般的に知られているドライフルーツ状のデーツになります。

甘味の強いデーツは、昔からパンやケーキの材料として使われたり、ワインや酢の原料としても使われてきました。現代では実の甘味を活かして、デーツの果汁を煮詰めて作るデーツシロップなどが作られていますが、ドライフルーツとしての流通が主流です。

砂漠や乾燥地帯といった過酷な環境でも育つ生命力の強さから「生命の樹」と呼ばれ、乾燥したデーツは保存性に優れ、栄養価も高かったため、遊牧民や砂漠に暮らす人々の栄養源として重宝されてきました。

そしてデーツの歴史は古く、紀元前7千年頃にはすでに食用とされていたそう。イスラム教の聖典であるコーランには「神の与えた食物」として登場し、旧約聖書のエデンの園の物語に出てくる「生命の樹」のモデルはデーツの木であると言われています。ギルガメッシュ叙事詩や聖書にもナツメヤシは頻繁に登場しており、イスラム教の予言者ムハンマドもナツメヤシが好物だったと伝えられています。

イスラム教徒がラマダン(断食月)明けに最初に口にする食べ物がデーツだと言われるほど、中近東諸国では欠かせない食べ物です。

date palm with dates
Hanan Isachar//Getty Images

デーツの種類

デーツは長い歴史がある分、種類も多く、全世界で400種類以上が栽培されています。現在は、中近東やアメリカなどの様々な地域で生産されていますが、そのなかでも日本で手に入りやすいものは、アメリカ産とイラン産のデーツ。イラン産にはピアロム種やサイヤー種、アメリカ酸にはマジョール種やリグレットノア種があります。

同じデーツでも種類によって大きさや形、色、柔らかさ、弾力、水分量、味わいなどが異なるので、用途や好みによって選ぶのがおすすめ。

なかでも最高級と言われているはイラン産のピアロム種で、キャラメルのような甘さと上品な香りが特徴です。同じくイラン産のサイヤー種は甘さが強めですが、濃厚でコクがあるのがポイント。

アメリカ産のリグレットノア種は、甘さが控えめなので食べやすい一方、マジョール種は水分量が多くねっとりとした食感が特徴です。さらに、マジョール種は実が他の種と比べて大きく、食べ応えがあります。

ここからは、4種類のデーツの細かい特徴をご紹介。

アメリカ・リグレットノア種

琥珀色をしているデーツで、クセがなくあっさりとした甘みが特徴。サイズは中粒~大粒サイズまでと様々で、お酒のおつまみとしても、おやつとしてもおすすめです。

アメリカ・マジョール種

琥珀色~赤褐色のデーツで、干し柿のようなねっとりとした甘さと豊かな風味が特徴です。大粒で肉厚、噛み応えもあるため、お菓子の材料としても最適で、刻んでクッキーやパンにいれても美味しく食べることができます。

イラン・サイヤー種

赤褐色の細長いデーツで、サイズは2.5~4センチほど。皮は少し硬いですが、中身は柔らかく、黒糖にも似た濃厚でしっかりとした甘みをもっているのが特徴で、コーヒーや紅茶によく合います。

イラン・ピアロム種

長さ2~5センチほどの濃い茶色のデーツで、イランで取れる最高級のデーツだと言われている種類です。グミのような弾力があり、キャラメルを思わせる上品な甘味があります。お菓子作りに使うよりも、そのままで十分に美味しい味と香りを楽しむのがおすすめ。

some date fruits on a pink plate
Javier Zayas Photography//Getty Images

ナツメとの違い

日本では「なつめやし」とも呼ばれるデーツは、ドライフルーツにしたときの見た目と果実自体の名前が似ていることから、「なつめ(棗)」と間違えられることがよくあります。ですが、実際は全く違う植物で、栽培されている地域も異なります。

日本では、デーツがなつめに似ていることから「なつめやし」と呼ばれるようになりましたが、英語圏では逆になつめが「Chinese date(中国のデーツ)」と呼ばれることも。

このように名前も見た目も近いデーツとなつめですが、実際にどのような違いがあるのか見ていきましょう。

デーツ

デーツは、ヤシ科ナツメヤシ属に分類され、北アフリカから中東あたりの地域が原産です。デーツはとても甘味の強い果実で、黒糖や餡子(あんこ)、干し柿を思わせる濃厚さがあります。なつめと比べるとサイズは一回り大きく、直径2~3センチ、長さ3~7センチの楕円形。ドライフルーツとして売られることが多く、世界中で親しまれています。精製糖の摂取を控えるために、おやつや甘味料の代わりとして取り入れられることも多いそう。

なつめ

一方なつめは、クロウメモドキ科ナツメ属の植物で、中国や西アジアが原産地です。日本には奈良時代に中国から伝来し、現在は福井県などでごくわずかに栽培されています。多くの場合、乾燥させて強壮作用(きょうそうさよう)や胃腸への効果のある生薬として使われますが、果実は生でも食べることができ、リンゴのようなシャキッとした食感とほんのりとした甘み、少しの酸味があります。

デーツのようにドライフルーツとしてそのまま食べることはなく、甘露煮にしたり、薬膳鍋などの料理に使用されることが多いです。デーツよりもあっさりとした甘味で、食感も、ねっとりとしているデーツに比べてフカフカとしているのが特徴。世界三大美人に数えられている楊貴妃も好んで食していたと言われています。

デーツ
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(左)なつめ、(右)デーツ

デーツに含まれる栄養素

ドライフルーツになる過程で栄養素がぎゅっと凝縮されることから、古くから栄養価が高い食べ物として重宝されてきたデーツ。ここでは、実際に含まれている栄養素を見ていきましょう。

デーツは100g(デーツ5粒程度)あたり266キロカロリーと、決してカロリーは低くなく、砂漠で暮らす人々の栄養源とされていたのも納得がいく数値。ただ、カロリーが高いだけではなく、食物繊維や、鉄、銅、カリウム、カルシウム、リンなどの多くのミネラルが豊富に含まれているのも特徴です。成人女性がデーツを1日に5粒(約100グラム)食べた場合に摂取できる栄養は次のとおり。

  • 食物繊維:約38%(7グラム)
  • マグネシウム:約20%(60ミリグラム)
  • 鉄:約7%(0.8ミリグラム)
  • カルシウム:約11%(71ミリグラム)
  • カリウム:約21%(550ミリグラム)
  • リン:約7%(58ミリグラム)
  • 銅:約57%(0.4ミリグラム)

※1日に必要な栄養価のうちデーツ5粒で補える割合

デーツに含まれるマグネシウムやカリウム、カルシウム、銅、リンなどは、同じ量のプルーンよりも多いため、プルーンを日々の食事に取り入れているという人は、デーツをプルーンの代わりにしてみるのもおすすめです。

dates fruit in selective focus
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デーツの健康効果

特にミネラルを豊富に含むデーツは、その栄養価の高さや食物繊維の多さから、色々な健康効果が期待されています。今回はそのなかでも注目されている4つの健康効果をご紹介!

便通改善

現代人は精製食品や動物由来の食品を食べることが増え、食物繊維の摂取量が以前よりも少なくなってきていることから、便秘に悩む人が増えていると言われています。

デーツには食物繊維が豊富に含まれるうえ、そのほとんどが「不溶性食物繊維」という体内の水分を吸収して便のカサを増すはたらきをする食物繊維。その不溶性食物繊維のはたらきが、ぜんどう運動(腸が便を押し出す動き)を活発化することで、便秘を解消しやすくなります。

生活習慣病予防

デーツはGI値という食後の血糖値の上昇のしやすさを示す数値が低く、食後の血糖値が急上昇しにくい食材として知られています。血糖値の急上昇は、肥満や糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病の引き金になりやすいため、精製された砂糖を使って作られたお菓子の代わりにデーツをおやつとして食べたり、甘味料として他の精製食品の置き換えにデーツを使ったりすると、生活習慣病の予防につながります。

骨の健康維持

私たち人間は、加齢とともに骨の密度が下がって脆くなりやすく、骨粗しょう症のリスクが高まっていきます。デーツには、骨をつくる成分であるカルシウムやリンだけでなく、骨を強くするはたらきがある銅も含まれています。そのため、骨の健康を維持するために、おやつとしてデーツを取り入れるのもおすすめです。

貧血予防

デーツには赤血球をつくるのに欠かせない鉄が豊富に含まれているため、デーツを食べることで貧血予防や貧血症状の改善効果が期待できます。特に女性は定期的な月経があることから、男性よりも貧血になるリスクが高いため、意識的に鉄を摂取していくことが大切です。デーツは調理の必要がなく、そのまま食べることで鉄分摂取につながるので、貧血予防の強い味方になります。

raw organic medjool dates
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デーツが美容にいい理由

デーツは、世界三大美女のクレオパトラも愛した果実だと言われており、美容に良い食材としても認知されています。上述した様々な健康効果に加え、美容にも良いと言われる理由を探っていきましょう。

腸内環境の改善

デーツは腸内環境の改善効果が期待できます。すでにお伝えしたとおり、デーツを食べることは、食物繊維を摂取でき、便秘改善につながります。ただそれだけではなく、デーツに含まれる食物繊維は善玉菌の餌にもなり、腸内環境も改善してくれるのです。これは肌の炎症を防いだり、代謝が良くなる効果があるとされています。

健康的な肌の維持

何歳になっても肌の健康を維持したいと思う人は多いはず。デーツにはポリフェノールの一種であるフラボノイドや、フェノール酸、ベータカロテンといった抗酸化作用が高い成分が多く含まれていて、体の中の活性酸素を除去することができるので、肌の老化を防ぐ効果が期待できます。また、健康的な肌を保つために必須のビタミンB群やベータカロテン、そして亜鉛も豊富に含まれているため、健康的な肌づくりをサポートしてくれるのです。

むくみ解消

デーツに豊富に含まれるカリウムと食物繊維は、むくみを解消するはたらきがあります。カリウムには、体内の水分量を調整してくれるはたらきがあり、体内の老廃物や、余分な塩分と水分を体外に排出してくれます。

食物繊維も、腸内環境を整えて老廃物をスムーズに排出するのをサポートしてくれるため、血流の巡りが良くなり、むくみ解消につながります。そのため、カリウムや食物繊維が豊富に含まれたデーツは、むくみやすい人のおやつとしてもおすすめです。

dates and coffee for ramadan iftar
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デーツのおすすめの食べ方

ここまでデーツの魅力をたくさんお伝えしてきましたが、まだ食べたことがないという人のなかには、取り入れ方に迷っている人もいるはず。ここでは、そのまま食べる以外にも色々な取り入れ方ができる、デーツのおすすめの食べ方をご紹介します。

料理やお菓子の具材として使う

デーツは、実を刻んで焼き菓子やパン、グラノーラの具材にしたり、ヨーグルトにトッピングするなどの取り入れ方が代表的ですが、他にもサラダにトッピングしたり、キャロットラペやさつまいもとりんごのサラダなどに入れてみるのもおすすめです。

甘味料の代わりとして使う

手作りアイスクリームを作るときに、砂糖や蜂蜜などの代わりにデーツをミキサーでペースト状にして使うことができます。また餡子を作るときに、砂糖の代わりにお湯でふやかしたデーツを入れて一緒にねかせると、美味しい餡子が出来上がります。

他にも、デーツとアーモンドやカシューナッツなどのナッツ類、ココアパウダーを一緒にフードプロセッサーにかけて、丸めてココアパウダーをまぶせばチョコトリュフ風のおやつを作ることも可能!

high angle view of dried fruits in yogurt with honey on table
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デーツを摂取するときの注意点

デーツは栄養豊富で、色々な取り入れ方ができる食材ですが、摂りすぎには注意が必要です。デーツはドライフルーツにすると、1粒で50キロカロリー前後あり、1日に10粒や20粒などと大量に食べると、糖質過多になります。

また、中毒性や食べ過ぎによる有害な作用はないものの、食物繊維の含有量が多いため、食べ過ぎるとお腹が張ったり、逆に便秘気味になったりすることがあります。このような注意点をふまえて、今までの食生活に追加するというよりは、甘味料や普段のお菓子の置き換えとして取り入れていくのがおすすめです。

最近では普通のスーパーでもよく見かけるようになってきたデーツ。これを機に不足しがちなミネラルなどの栄養素を補うために、デーツを食べることを習慣づけてみてはいかがでしょうか。