スーパーやコンビニで一年中いつでも手に入りやすく、持ち運びがしやすいフルーツ「バナナ」。消化が早い、栄養価が高い、カリウムを多く含有するなど、たくさんの健康面でのメリットがあるけれど、腸に良い食物繊維を含んでいることも注目のポイント。
今回はイギリスのサプリメント販売企業「Healthplan」の栄養士を務めるロブ・ホブソンさんに聞いた、「バナナに含まれる栄養と健康効果」を<ネットドクター>からご紹介。「心臓の健康を守る」「ワークアウト時のエネルギーになる」など、科学的に実証済みの効能12をピックアップしました。
1.栄養価が高い
バナナの成分のほとんどは炭水化物と水分。完熟していないバナナに含まれる炭水化物はレジスタントスターチ(難消化性または耐性でんぷんとも言われる)であり、完熟するとブドウ糖、果糖、ショ糖に変化するそう。また、バナナはタンパク質や脂肪をほとんど含有していないのだとか。
標準サイズのバナナ(120g、約103キロカロリー)に含まれる栄養素は、脂質0.1g、炭水化物23.2g、総糖質20.7g、食物繊維1.7g、タンパク質1.4g。その他にも、下記のような微量栄養素を含有。
- カリウム:396mg(RDAの20%)
「カリウムは筋肉や神経の働きを正常にする働きに加え、血圧を下げ、疲労感を和らげる効果もあります」 - マグネシウム:32mg(RDAの9%)
マグネシウムは筋肉や神経の機能にも関係しており、食べ物をエネルギーに変換する過程を助けてくれるそう。「健康な骨を作り、またストレスに対処するために必要なミネラルでもあります」 - チアミン(B1): 0.18mg(RDAの16%)
「チアミンは、体内でのエネルギー生産、炭水化物の消化、心臓の機能のために必要なビタミンです」 - ビタミンB6:0.37mg(RDAの27%)
「体内でのエネルギー生産や、免疫系および神経系の健康維持に必要です」 - 葉酸塩(B9):17mg(RDAの8%)
「胎児の神経管閉鎖障害を防ぎます。また健康な免疫システムと貧血予防に欠かせないビタミンです」 - ビタミンC:11mg(RDAの14%)
「抗酸化物質であるビタミンCは、体内の過剰なフリーラジカルによるダメージを軽減するのに役立ちます。また健康な皮膚、創傷治癒、免疫力アップにも欠かせません」
※括弧内はホブソンさんのコメント。RDA(1日の推奨摂取量)の数値はイギリス基準
2.消化器系を健康に保つ
バナナには食物繊維が豊富に含まれており、消化器系の健康には欠かせないもの。
バナナに含まれる食物繊維は、ペクチンとレジスタントスターチの2種類。どちらも水溶性食物繊維と呼ばれるもので、体内でプレバイオティクスとして作用するそう。
「水溶性食物繊維は、バクテリアによって発酵している腸内を通過することが可能です。また、大腸細胞のエネルギー源である『酪酸菌』と呼ばれる短鎖脂肪酸を形成します。これにより、大腸の細胞と粘膜の健康維持に貢献するのです」
3.血糖値レベルを安定させる
ホブソンさんによると、「ペクチンとレジスタントスターチは、胃の中の糖分の放出を遅らせる働きがある」とのこと。
また、バナナのグリセミック指数(GI、食品の血糖値の上昇を示す指標)は、低~中レベルに位置付けられているそう。つまり、健康な人がバナナを食べても、血糖値が急上昇する可能性は低いということに。
4.満腹感がある
ダイエット中の人に朗報! バナナは食欲を抑え、満腹感をキープしてくれる食品だとか。これは、食物繊維含有量が多いことによる効果。
「食物繊維を多く含む食品は、食品そのものの量(かさ)を増やすのに役立ち、満腹感を保てるのです」と、ホブソンさん。研究でも、バナナに含まれる食物繊維(ペクチンとレジスタントスターチ)の食欲抑制と満腹感効果は証明されているとのこと。
5.心臓を守る
バナナは心臓の健康に欠かせない、カリウムとマグネシウムを豊富に含有。
カリウムは腎臓による余分な塩分を洗い流す機能を助け、「血管の緊張を和らげ、血圧を下げる働きがあります」とホブソンさんは解説。既存の研究を再調査した結果、毎日1.3~1.4gのカリウムを摂取することは、心臓病のリスクを26%低下させることにつながることも判明。
「バナナに豊富に含まれている食物繊維は、高コレステロールや2型糖尿病など、心臓病につながる危険因子を減らす効果もあります。バナナには抗酸化作用のあるフラボノイドも含まれており、体内の炎症抑制も期待できます」
6.濃縮したエネルギー源
「バナナは日中のエネルギー補給に最適です」とホブソンさん。
「バナナには濃縮されたエネルギー源である果糖が含有されていますが、繊維質も豊富なため、結果、ゆっくりとエネルギーが放出されるのです」
また、濃縮したエネルギー源でありながら、大きなバナナであっても100キロカロリー程度なので、食べ過ぎなければカロリー過多になる心配もないのもありがたい!
7.インスリン感受性を高める
インスリン感受性とは、インスリンの放出に対して細胞の敏感さを指す言葉。細胞の反応が鈍くなるとインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇。2型糖尿病につながる可能性が高くなるそう。
バナナに含有されているレジスタントスターチはインスリン感受性を高める働きがあり、「特に熟していないバナナにはレジスタントスターチが多く含まれているのです」とホブソンさんは指摘。
「1日に15~30gのレジスタントスターチを摂取すると、4週間以内にインスリン感受性が33~50%改善されることが研究で示唆されています。もちろんこれは、バランスのとれた食事と健康的なライフスタイルを守った上でのこと。日々の生活習慣が健康の基本です」
8.腎臓をサポートする
カリウムは、体内の水分バランスの維持や血圧のコントロールに欠かせない栄養素。腎臓を健康に保つためには適量のカリウム摂取は不可欠であり、1日1本を食べるだけでRDAの20%を摂取できるバナナは、豊富なカリウムの供給源と言えるのだとか。
「高血圧は腎臓に負担をかけ、機能に影響を与える可能性があります。研究によると、週に6回バナナを食べる人は(そうでない人と比較し)腎臓病を発症する可能性が50%低いことが示唆されています」
9.運動時のエネルギーになる
高額なエナジーゼリーや砂糖たっぷりのドリンク類はもういらない⁉︎ 持久力を必要とする運動のエネルギー補給に、バナナは有益なんだとか。
アパラチア州立大学の研究チームが、自転車競技者による約3時間、46マイル(約74キロ)の模擬ロードレースを実施。15分ごとに炭水化物飲料1杯またはバナナ1/2本を摂取し、その前後の血液分析を行ったそう。その結果、パフォーマンスに差がなかっただけでなく、抗酸化物質やビタミン、ミネラルが含まれているバナナの方が有益な食品であることが判明。
また、バナナはスポーツドリンクよりも糖質が健康的にブレンドされているのもメリットだそう。
10.筋肉痛を軽減する
筋肉のけいれんや痛みは、運動後によく見られる症状。「けいれんが起こる原因は完全には解明されていませんが、脱水と電解質のバランスが崩れていることが原因と考えられています」とホブソンさん。
「バナナに含有しているカリウムとマグネシウムは、どちらも体内で電解質として作用します。バナナとけいれんの緩和を結びつける研究はまだこれからの分野ですが、バナナがけいれんの予防に役立つと結論づけている研究もあるのです」
11.食べ方もいろいろ
バナナは持ち歩けるスナックとして便利なだけでなく、さまざまな食べ方が可能。焼き菓子に使う場合は砂糖の代用にもなり、パイやフリッターに使うと栄養価がグッと上昇。「バナナはさまざまな料理に使えます。パンやケーキはもちろんのこと、カレーに入れても風味をアップしてくれます」とホブソンさん。
「冷凍した完熟バナナをブレンダーに入れるだけで、ヴィーガンアイスクリームになるんです。無糖のココアパウダーを加えたチョコバナナ味もおいしいですよ」
12.利便性が高い
持ち運びができ、腐りにくいのもバナナの良い点。「皮で“包装”されているので、携帯用のおやつにも最適です」とホブソンさん。また、皮が厚いためバナナには高レベルの農薬や汚染物質がほとんど含まれていないのだとか。
そのまま食べても調理してもおいしいバナナ。ぜひかしこく活用して!