既婚・交際中であっても、互いに合意の上で他の人とも関係を結ぶ「オープンリレーションシップ」。欧米ではこの交際スタイルが近年ますます注目されていて、「パートナーと以前よりうまく行くようになった」という声もあるのだとか。

2016年には、アメリカで行われたとある調査に参加した4000人ほどのうち5人に1人以上が、人生で少なくとも一度は同意の上でノン・モノガミー(非一夫一婦制)を経験したことがある、との結果も。さらに、2020年にアメリカで行われたオンライン調査によれば、回答者の中で完全な一夫一婦制を求める人はわずか56%で、特に若い世代は1人のパートナーとのみ性的な関係を持つことへの関心が最も低かったそう。

では、オープンリレーションシップとはどういうもので、どうしたらうまくいくのでしょうか? オープンリレーションシップのルールや、始める前に考えておくべきこと、どうやって現在のパートナーに自分の希望を伝えるべきかなどを、<プリベンション>が専門家に取材しました。

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オープンリレーションシップって?

「オープンリレーションシップにおいては、メインのパートナー以外の人と自由に性的な関係を持てます」と語るのは、サンフランシスコにある私立大学カリフォルニア・インスティテュート・オブ・インテグラル・スタディーズの学長である、ニコル・ザピーン博士。積極的な合意が必要なため、こうした関係は浮気とは見なされないのだとか。

また「オープンリレーションシップの定義は一つではありません」と語るのは、心理療法士のタマラ・ピンカスさん 。さまざまな形があり、必要に応じて新たな形が生まれるとのこと。

ポリアモリー(複数の人々と同時に恋愛関係を持つこと)的で、他の人を好きになる人もいます。性的にアクティブだったり、アプリを使ったりする人もいますね」

オープンリレーションシップでは、愛情の面でも、セックスの面でもオープンで、その期間はさまざま。ただし、一般的にオープンリレーションシップでは、ルールについてカップルで話し合うことや、関係性の見直しへの同意、会話を継続することが必要だとザピーン博士はコメント。

相手がどういう意図で“オープンリレーションシップ”という言葉を使っているのか、まずはそこを知ることが大切です」と語るのは、世界でも珍しいポリアモリーに関する専門家のエリザベス・シェフ博士。

シェフ博士によると、他に相手を探してはセックスをする(パートナーも一緒に、あるいは別々に)人々もいれば、ほぼ独占的な関係を維持するカップルもいるのだとか。

オープンリレーションシップのルールとは?

「オープンリレーションシップ」の定義が一つではない以上、その取り決めやスタイルもさまざま。

通常、人々がオープンリレーションシップを選ぶのは、それぞれの必要を満たすため。パートナーと性的なミスマッチがあったり、ポリアモリー的なカップルはメインパートナー以外に精神的な関係を求めたり、深い関係ではなくセックスだけを求めたり…といろいろなパターンがあるよう。

また多くのカップルは、今後パートナーになりうる人のジェンダーや安全なセックスのかたち、デート前後のコミュニケーションについて取り決め、同意しているのだとか。

ザピーン博士とピンカスさんによると、オープンリレーションシップのルールは、かなりクリエイティブなのだそう。

「こうしたルールは相手を失う恐怖から生まれることが多いものです」
「長期にわたるポリアモリー的な関係では、ルールが少ない場合もあります。こうしたことが起きても、相手を失うことはないと思うようになるからです」

オープンリレーションシップは健全?

「オープンリレーションシップを採用している人々の多くは、健全な人々です」と話すのはシェフ博士。一夫一婦制を採用している人々と同様、人生に前向きな魅力的な人々だと言います。

ただ結局のところ、オープンリレーションシップという交際関係が健全に機能するかどうかは、双方が「愛情」「誠意」「思いやり」を相手に持っているかどうかが重要。関わっている人すべてが正直で、自分の欲求や出会いについて相手に伝えられることも不可欠だそう。

「強制があったり、情報がきちんとシェアされていなかったり、事前に伝えられたかたちで同意できていなかったりする場合、その関係は不健全だと言えるでしょう」(ザピーン博士)

もっとも、2018年の調査によると、性的にアクティブな人々は一夫一婦制の人々よりも高い性的満足を得ており、オープンリレーションシップを採用している人々は一夫一婦制の人々と同じくらいその関係に満足しているとの結果も。

オープンリレーションシップは自分に合っている?

シェフ博士によれば、オープンリレーションシップを始める条件は、何よりもまず、自分が要求するのと同じ自由をパートナーにも許す気持ちがあること。

「もっとセックスをしたいからといって、ポリアモリーやオープンリレーションシップが自分に合っているとは思わないでください」
「多くの人々が複数のパートナーというアイディアに興奮するのですが、自分のパートナーが同じことをすると気分を害するのです」

オープンリレーションシップを始めるには、まずメインパートナーとの関係が健全であることが必要。今の関係がうまくいっていなくて、修復するためにオープンリレーションシップを追求することは逆効果なのだそう。

また、自分はオープンリレーションシップに賛成でも、パートナーを意気消沈させることも。良いセラピストやセックスセラピストに相談すれば、双方の間に立って交渉を進め、選択肢になかった将来像を考える手助けをしてくれる場合もあります。

まずは関係を築くための時間をかけ、オープンなコミュニケーションをすることが必須。

ピンカスさん:「新しい人とセックスをすることに興奮するあまり、パートナーとセックスすることを忘れたり、パートナーに喜んでもらう行動をやめたりすることがしばしばあります」

オープンリレーションシップに興味があるなら、まずは広い視野で考えてみて。もし気まずい思いがあったり、相手が誰かといることを想像するだけでも耐えられないなら、オープンリレーションシップは合っていないのかもしれません。

オープンリレーションシップの切り出し方

オープンリレーションシップについての会話を始める方法として、シェフ博士がおすすめするのは、メディアで読んだ記事やテレビで見た番組などから話をしてみること。オープンリレーションシップについてどう思ったか、聞いたことがあるかと聞きながら、相手の様子をうかがってみるといいそう。

もし相手の反応があなたの期待するものではなくても、明晰に、粘り強く自分の感情を調整できるように心がけて。もし、双方とも検討する価値があると決めたなら、ルールが有効に機能しているかどうか、時折自分自身やパートナーの状況を確認するのが大切。安全な性交渉を心がけ、性感染症にかかっていないか定期的に検査を受けるのも重要です。

なぜそのパートナーと一緒にいるのか・いたいのか、そして、嫉妬を感じたとしても相手に敬意を持つことができているか、ということを考え、お互いを思いやり寛容な姿勢であること。これは、オープンリレーションシップに限らず、どんな交際スタイルでも大切なことのはず。

※この翻訳は抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
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