多くのカップルが通る道だとされている、「パートナーを親に紹介する」というステップ。ドラマや映画で、親に紹介するかどうかが交際への真剣度を計るサインとして描かれているのを観たことがある人も多いでしょう。

2022年3月に<Slingo>がイギリスで行なった統計によると、一般的にパートナーを親に紹介する“正しい”タイミングとして、3人に1人が「交際3〜6カ月」が最適だと回答しています。

もちろんタイミングはカップル、そして親によって異なるもの。実際に先ほどの統計では、2%の人が「親には会わせたくない」と回答していて、その理由として「パートナーを親から守るため」という場合もあるよう。

本記事では<コスモポリタン イギリス版>より、「パートナーを親に紹介する」ことの難しさについてレポート。さまざまなカップルの実体験や、悩んだときのアドバイスもお届けします。


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「親に紹介する」ことのルーツ

そもそもなぜ私たちはパートナーと親を会わせようとするのでしょうか。心理療法士のハンナ・ベケット=プラットさんは次のように説明します。

「『親に紹介する』というのは、結婚するのに親の許可が欠かせなかった時代の慣習がルーツです。特にヘテロセクシャル(異性愛)カップルの場合、親に紹介することが、真剣交際をしているカップルの通り道だとされています」
「映画やドラマでは、パートナーを親に紹介するのは“本気のサイン”として描写されていることが多いです。これによって、相手から愛されていると感じるようなシーンもあります」

しかし、こういったポップカルチャーでの描かれ方には問題点があるそう。

「エンタメ作品でよくある、男性が女性パートナーの父親に会い、父親が彼に威圧的な態度を取るシーン。女性が意思を持てず、父親や恋人によって人生を決められているように描かれる傾向がありますが、これには性差別的な背景があると思います」
「さらに同性間の恋愛について、メディアではほとんど言及されません。『親に紹介する』のは、ステレオタイプな価値観に強く影響を受けている場合が多いですが、本当の意味を決めるのはその人次第です」
son embracing mother in living room
Maskot//Getty Images

“毒親”の場合

香港で育ったナターシャさん(仮名)は、昨年からパートナーと交際中。ずっと連絡を取っていない母親に彼を会わせる予定はないと言います。

「母はいわゆる“毒親”で、ずっと私を批判してきました。パートナーには、同じような思いを絶対にさせたくないんです」

さらにパートナーはナターシャさんとは異なる人種。ナターシャさんの母親は人種差別的な価値観を持っているため、そういった理由でも会わせたくないと考えているそう。

ベケット=プラットさんも親との関係性によっては、パートナーを親に紹介することが難しいと説明。

「比較的多いのが、子ども時代に虐待やネグレクトがありながらも、親と関係性を持ち続けることを望んだケース。これは当事者以外には理解しがたい事例ですが、パートナーを親に紹介することで、あらゆる説明をする必要が出てきます。それが精神的ストレスへとつながるのです」

クィアカップルの場合

親にパートナーを紹介するというのは、一部のクィア(セクシャルマイノリティの人々を意味する言葉)カップルにとっても難しい問題。ナオミさん(仮名)はシスジェンダーのレズビアンで、トランスジェンダー女性のレズビアン、ケイティさん(仮名)と交際して3カ月。

ケイティさんの両親は、彼女の性別適合手術をサポートしなかったこともあり、ナオミさんは「彼女の親には会わない」と考えているそう。

「私はケイティの立場を尊重したいと思っています。彼女の家族は受け入れられないのだから、無理に押し付けても仕方がありません」
「ケイティは、相手を尊重しない人たちと一緒にいようと考えていませんし、自分自身を大切にしています。彼女の父親の代わりにサポートしてくれる人には会う予定です」

ケイティさんも、「ナオミが自分の両親に会わないことに対して、心配はしていません。私の“父親”の方がずっと大切ですし、彼には会う予定なので」と付け加えています。

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悩んだときのアドバイス

自分に大切な人ができた場合、「親に会わせるか」を悩む人も多いはず。もし不安を感じたら、下記のアドバイスを参考にしてみるのもいいかもしれません。

正しいタイミングはない

ベケット=プラットさんは、親に合わせる“正しい”タイミングはないと強調します。

「パートナーを親に紹介したいと感じたときにするべきです。人それぞれなので、正しいタイミングかどうかを気にする必要はありません」

コミュニケーションが鍵

パートナーや自分自身を守るために、親に紹介しないのも選択肢の一つ。「親と会う意味」について、パートナーとコミュニケーションをとることが大切だとベケット=プラットさんは言います。

「パートナーの親に会うというのは、言ってしまえば他人の親に会うことでしかありません。パートナーが、“親に会う=真剣交際のサイン”などと感じていなければ、特別な意味はないのです」

パートナーの大切な人たちに会うことが重要

「“家族は選ぶもの”だと思っています。私とパートナーは、親に会わなくてもお互いにとって大切な人たちには会いました」と話すナターシャさん。

ケイティさんも“家族”に会うことは大事な通り道だと言います。

「パートナーを家族に紹介することで、自分のこれまでの人生を理解してもらえると思います。ただし、LGBT+コミュニティでは、“Chosen Family(自分で選んだ家族)”であることが多いです」
「私にとって家族とは、自分が愛し、大切にしたいと感じ、自分をサポートしてくれる人だからです」

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Haruka Thiel
COSMOPOLITAN UK