コスモポリタンが今月テーマにしているのは「幸せ」。仕事でもプライベートでも、人や会社がどう思っていようと「自分らしさ」があればブレずに生きやすくなると提案しながらも、私も自分の軸を探しながら書いています。
今月初旬、取材にお伺いしたのがLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)を対象に「自分らしくはたらく」をテーマにした12の企業と学生が集うワークエクスポ。今回が初となる開催にも関わらず、1日で約530人が来場し、会場は学生と企業の担当者で溢れました。
実は、この「自分らしく」というのが、LGBTが就職をする上でハードルになるのだそう。「エントリー時点から履歴書で男女のどちらに枠をつけていいのかわからない、就職活動でいざカミングアウトをしたら帰れと言われたなどの差別的言動や、ハラスメント行為を受けることも」とイベントを主催したNPO法人ReBitの藥師実芳さんは以前の取材でも話してくれました。
参加企業のブースが並び、人事・ダイバーシティの担当者がセミナーを開催。熱心に耳を傾ける参加者たちにとって、自分の性別にためらいを持たず、担当者に直接話を聞くことができる貴重な機会になっているよう。実際に参加した3企業の担当者に話を聞きました。
――LGBTをサポートするに至った経緯は?
ユニリーバは、現在190カ国で事業を展開しています。ダヴやリプトンと言ったブランドは世界共通ですが、製品は各国の消費者に合わせて開発・販売をしています。それぞれの国の生活習慣や文化、宗教などの違いを認め、尊重しているからこそ、世界中で愛されるブランドを提供できているのです。
だからこそ、社内でも、1人ひとりの違いを認め、尊重してきました。190カ国で働く多様な社員の中で、LGBTであることは、例えば背が高かったり、日本人だったりするのと同じように、その人の個性を形づくる1つの要素だと捉えられています。それぞれ違う個性を持った社員が、自分らしく生き生きと活躍し、個人として成長すること。それが会社の成長にも繋がると考えています。
――初開催のエクスポですが参加してみていかがですか?
もともと、LGBTに限らず、誰でも個性を認め合い、「Be Yourself(あなたらしく)」ということを大事にしてきました。
ただ今日LGBTの方と話してみると、葛藤や努力が伝わってきて…その思いを受け止められるといいなと思います。企業が打ち出すメッセージの中に、たった一言、一行でも「体制が整っています」「サポートしています」という言葉があるだけで就職活動が前向きにできるという言葉を聞いて、私たちは「オープンですよ!」と伝えることが大事なんだと感じました。
弊社でもカミングアウトしている人もいますし、社内のアンケートには性別区分も設けていません。私たちは個性を発揮できる環境を作り、LGBTの方が、その人らしく一歩が踏み出せる、職場、仕事にしたいと思っています。
――NTTの前身が公共企業体ということで、日系企業の強いイメージがありますが、ダイバーシティ(多様性)、LGBTを推進するに至った経緯は?
国内というイメージが強いかと思いますが、今では広く世界展開をしています。世界各国の多様な考え方を取り入れていきたいという考えがベースにあり、多様な人材が多様な考え方を持ち、お客様、従業員、パートナーへ理解を深めていくことが企業の競争力を高めていくと考えています。
――今までの取り組みにはどんなこと挙げられますか?
多様性の1つとしてLGBTの取り組みに関しては、4月に社長メッセージを発信しています。社内外への理解を醸成するためにHPへの掲載、勉強会の実施はもちろん、人的なものでは非公開のアライ(LGBTの当事者でない人が理解し支援するという考え方)のネットワークを作るなどの活動をしています。
これからも様々な企業の取り組みを参考にしたいですし、知っていただけたらと。それに、参加者のみなさんからもご意見いただきたいと思っています。
――2011年からダイバーシティの戦略を進めてきたそうですね。
2010年に経営破綻後、従業員は5万人が3万人になり、全社員総力戦で今までの慣習から離れ「会社を変えていく」という士気が高まったことがあります。海外スタッフの採用、女性の活躍、障がい者の雇用など、社員全員が活躍できるような取り組みを進めていく中で、LGBTの方についても活躍の場を広げられるよう取り組んできました。
――今年2月から同居を証明する住民票などがあれば家族として認め、同性カップルでマイルを貯められるなどの取り組みも始めていますね。
こちらも破綻後の意識改革がとても大きかったですね。お客様視点を持ち、いろんな意見を出し合い改善していく体制の中で生まれたサービスです。弊社社長の植木は、パイロット出身という珍しい経歴があるのですが、彼が旗を振りながら、とにかく豊かな個性からでてきたアイデアを大事にしていこうという方針です。
――今回のエクスポへの参加を決めた理由はなんだったのでしょうか?
主催のRebitさんからお声がけをいただき、LGBTの方々が、自分のしたい仕事内容ではなく、会社からの受け入れがあるかどうかで選んでしまっているということを聞き、もし私たちが無意識にその印象を作り出し、負担に感じさせてしまっているのであれば払拭させたいという思いで参加しました。まだ課題は多いですが、実際にこの場に参加して、さらにスピード感を持った対応をしていきたいと感じています。
3社の話に共通するのは、働く人全員が個性を発揮でき、働ける職場作りをしていくということ。このあたり前のようなことが、実際できていない企業は多いのかもしれません。
今回参加した12社は、日本電気(NEC)、LGBTファイナンス、グーグル、野村證券、ギャップジャパン、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス、アクセンチュア、日本航空、資生堂、LITALICO、日本アイ・ビー・エム、NTTグループなどの名だたる有名企業ばかり。これらの企業がロールモデルとなり、性別マイノリティの「自分らしく」が受け入れられる企業は、着実に増えていくのだろうと感じられました。