今月は「幸せ」がテーマだっていうから、ここ数週間ずっと悩んでた女装のおじさんですぅ。(締め切りに間に合わなかった言いわけも兼ねて)。「幸せ」ってアンタ、もう最終回かってくらい究極のお題じゃない? そもそもアラフィフに突入するホモおじさんが毎日ハロウィンみたいな女装で働いてる人生、幸せなのかって自問自答が始まっちゃうわけよ。

まずデータ的な話からすると、国連が出してる「世界幸福度報告書」の2016年度版では、日本は157か国中、53位です。これ、ランキングの6要素のうちGDPと寿命、汚職の少なさでは日本はトップクラスだけに、残りの「人生の選択の自由」「社会の寛容さ」がどんだけ低いのか思い知らされるわよね。

「女らしく生きろ」だの「性的にだらしない」だのって他人を叩いて縛り合うことで、お互いが不幸になっていく状態。最近の芸能ニュースを見てても、「アンタらそんな他人にキレイごと求めてると足元すくわれるよ!」と思うもん。ちなみに堂々1位のデンマークさんは、もう27年も前に、世界ではじめて同性パートナーシップ制度を定めた国でもあるのよ。

「お金はまだ十分稼げている国なのに幸福度は低い」ってのに関連して、「幸福度と年収の関係」って調査もあり…。毎日1杯のかけそばをシェアする極貧よりは、自由になるお金がある方が幸福度が上がりやすいのはもちろんなんだけど、ある金額から上になっても幸福度は下がっていくっていうのよ。

ノーベル経済学賞も受賞したプリンストン大学教授の大規模調査ではじき出されたその金額は……約630万円ですって。意外なほど低めで驚いたわ。もちろんこれはアメリカでの話だし、以前読んだ心理学の本では1500万円って数字も。いずれにしても、ある一定以上の年収は、それに伴う多忙や気苦労なんかで「幸福感が減っていく」のは本当みたい。みんなも稼ぎすぎには気をつけて! そんな心配いらない女子が多そうだけど!

金銭的・物質的に満たされる感情というのは麻薬的で、耐性がついてはエスカレートしていくキリがないもの。セレブなんてみんな豪邸で孤独感じてんのよ~(多分)。ファッション誌のいちいち高いアイテムに「買えねよこんなん!」ってツッコんでるうちが、たまの奮発に喜べる良い生活レベルってことで、これはアタシもコスモポリタン・ガールズもみんな合格よね。あ、万が一、年収が億いってるって読者がいたら、不幸の元だからアタシに送金してくれれば手厚く供養しますからね。

でも、幸せだとは思えない。LINEの既読スルーもイラつくし、インスタでいいねが少ないのも寂しいよぉ。…と、すっかりネットコミュニケーションの弊害に毒されたデジタルガールズの救いは、"メンタルな御導き"よね。つい、女性誌表紙に謳われた「しあわせの引き寄せ術」にふらふらと引き寄せられてしまう寂しい女たちだらけよ。

もちろん雑誌はお商売ですから、そんな読者を引き寄せる術を駆使するし、特集内に「私のハッピーを叶えるロ〇エしあわせ素肌」ってPR記事が挟まれているのも仕方ないことなの。雑誌業界は大変な時期なんだから! だから買い支えてほしいんだけど、ただそこに書いてあるラッキーアイテムを買ってパワースポット巡りをしてれば、ほんとに幸せになれるのかって話なのよ。鵜呑みにできる人って、ある意味幸せな気もするけどさ。

アタシたち性的少数者は、世の中が一番わかりやすく与える幸せの図、"みんなに祝福される恋愛"や"子供たちと笑い合う家族"とは縁遠いところにいるでしょう。実際に、いじめ被害率や自殺率も高い。でもだからこそ「幸せになってやる」とあがいた先人も多いのよね。

世界一のドラァグ・クイーンで、「MAC」コスメのイメージガールにもなったル・ポール先生も、"心の幸せ"の重要性を語り続けてるお一人。後輩女装たちを育てあげる『ル・ポールのドラァグレース』(Netflixで配信中)って最高に楽しい番組があるんだけど、第5シーズンに出たクイーンが幼少の頃に母親に捨てられて孤児院で育った悲しみを語ったのよ。実際、性的少数者は家族から拒絶されることも多い。でもル・ポールねえさんは、アタシたちが下の血縁の家族を簡単に作れないことを逆手にとって、彼にこう言ったの。「私たちは自分たちで家族を選んで作れるのよ。みんなで家族を築きましょう」って。そして毎週の勝ち抜き戦の最後には「他人を愛すなら、まずは自分を愛しなさい」と繰り返し言うの。幸せじゃない、愛が足りないのなら、誰より先に自分で自分をちゃんと愛して、そうして生み出した愛を周りにも巡らせるようになっていけばいいってこと。

愛も天下の回りもの。少々ブスだって気づいていても、「あんたよくやってるわよ! 今日もイケてるよ!」って鏡に向かって1日を始めてみて。幸せな人生へ、HAVE A GOOD FLIGHT