スマホやWi-Fiがない生活なんて考えられない――これは、現代に生きる人にはいたって普通の感覚。けれど、どこへ行ってもネットをつなげることに必死になったり、スマホを家に忘れてくると一日中落ち着かなかったりするのって、逆にデジタルに囚われすぎていて不自由なんじゃ…?

実際にそんな疑問を持つ人が、世の中に少しづつ増えはじめている様子。そこで今回は、コスモポリタン アメリカ版でセックス・恋愛コンテンツのディレクターを務めるフェイ・ブレナンが寄稿した、デジタル環境から離れた「アンプラグドな週末の体験レポート」をご紹介。

デジタルに囲まれた生活に「ちょっと疲れた」と感じている人にとって、考えるきっかけになるはず。ほんの数時間でも、SNSフリーな時間を経験したくなるかもしれません。

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語り:フェイ・ブレナン

私は、かなりのデジタル好きを自認しています。朝起きるときのアラーム、仕事、友だちとのコミュニケーション、音楽、テレビ、会計、健康管理、ワークアウトなどなどすべてをデジタルで管理しているほど。

でも、正直もう“いっぱいいっぱい”。絶え間なく鳴りつづけるスマホやパソコンからの「ピン!」という音を聞くたびに、「働きすぎ」「情報を詰め込みすぎ」「あれもこれも手を出しすぎだ」という気分になるんです。川にスマホを投げ捨て、DMもテキストもメールも全部「未読のまま葬り去りたい!」という衝動にさえかられるほど。

そんな風に感じていたある週末、彼と一緒に「完全アンプラグド」な質の高い時間を過ごすために、デジタル逃避行を実行しました。

宿泊先はレンタルハウスサービス、Gatawayで予約。アメリカ全土の大都市郊外に展開しているキャビンレンタルサービスで、小さなキャビンを借りたい人にはピッタリのサイトです。

Gatawayのキャビンには電話、Wi-Fi、そしてモダンなテクノロジーを搭載した機器は一切設置されていません。美しい景色が広がる人里離れた場所にありつつも、快適な設備(温かいシャワー、トイレ、ふかふかのベッド)がしっかり完備されているのが特徴。外部から100%遮断され、プライベートな時間を満喫できる環境です。

昨年11月、私たちはニューヨーク中心部から車で2時間ほどの場所にある、キャッツキルズ・ウエストのキャビンに2泊滞在することにしました。予約をすると「キャビンに備え付けの物リスト(有料ミニバー、バス用品、薪やマッチなどのアウトドアグッズ、本数冊、ボードゲームなど)」「持参した方が良い物(アウトドア用の温かい衣服)」「滞在時に便利そうなキャンプ用レシピ」が記載されたメールが届き、とても参考になりました。

1.食べ物とお酒は持ち込む

キャビンを予約すると、Gatewayがキャビンの名前と住所、キャビンのカギを開けるキーコードをテキストメッセージで送信してくれます。24時間体制のサポートラインはあるものの、キャビンでの出迎えはありません。

レンタカーをピックアップする前に、スーパーなどで必需品を購入しました。キャビン内には小さな調理用レンジ、鍋、フライパン、お皿数枚が完備されています。私たちはワイン2本、ポートワイン1本、シャンパン1本、ココアに入れるミニリキュール1本を持参しました。

キャビンに到着したのは午後8時頃。森の中のキャビンだったので、辺りは怖いぐらい真っ暗でした。キャビンは昔ながらの古いキャンプ場にあるのですが、キャビンそのものはモダンなスタイルです。私たちが訪れたキャンプ場には12のキャビンがあり、各々のプライバシーがしっかり確保されるように、間隔を持って建てられています。

とはいえ「まったく人気のしない場所」「文明から隔離された場所」というほどではありませんでしたが、私たちにとっては「森の奥深く、大自然の中にいる」という感覚でした。

キャビンの中に入り、部屋の中を温め、買ってきたものを食べてワインを飲みました。他に特に何もせず、その後すぐにぐっすり眠ってしまいました。

2.自然の中で目が覚めた

Gatawayキャビンの「インスタ映え」ポイントのひとつは、ベッドのそばにある大きな窓! まるで野外で寝ているかのような錯覚を起こさせます。晩秋だったので木には葉がなく、鳥のさえずりを除けば“野性味”は特にない眺めなのですが、大きな窓から見る外の風景は壮観でした。

小さなピクニック用テーブル、いす、ファイヤーピット(火を起こす場所)、その向こうに流れる小川、そしてなんといってもその先に広がる果てしない森の風景に心が鎮まる気持ちに。

実は、Gatawayの案内書に「熊に遭遇したときの対処法」が書かれていたので、本当に出るんじゃないかと心配していたのですが…窓からの爽やかな光景を前に、前日の晩に感じた恐怖心はすっかりなくなりました。

実際、滞在中に熊などの野生動物がひょっこり出てきて、私たちの「アンプラグドな週末」を台無しにされるようなことがなかったのは本当に良かったです。

3.スマホをまったく見ないで食べる朝ごはん

BGMはFMラジオ(スマホのBluetoothを経由してSpotifyに接続)だけ。あとは2人、向き合っておしゃべりするのみ!

ここでは、一緒に来た人とのコミュニケーションがすべて。会話をする気がない人にとっては「辛い時間だった」という苦い経験になってしまうので、この手のキャビンはおすすめしません。山の中でのキャンプを想像してくれたらわかるかと思いますが、お互いが一緒にいることを楽しみ、そしてお互いを楽しませようという気持がなければせっかくの週末が退屈な時間になってしまいます。

お互いが一緒にいることを楽しみ、そしてお互いを楽しませようという気持ちが大切

朝食づくりでさえ、いつもとは違いました。いつもはインスタをスクロールしたり、メールをチェックしながら、ベーコンを焼いたりインスタントコーヒーを淹れたりの「ながら調理」。

でもここでは彼と私は一緒に話しながら流れる音楽のリズムに乗り、ちょっと宇宙船にも似た形の「天然浄化トイレ」について笑いあったり。そして自然の風景をしっかり眺めながらの朝食を楽しみました。

4.ハイキング

朝食を食べてシャワーを浴び、そして着替えてから周囲の探検に出かけました。案内書に書かれていたハイキングコースが手軽そうだったのでトライすることに。

けれど、実際にはなかなか高度なハイキングだったことが判明。落葉で地面が隠れてしまったため、トレイル(ハイキング用の開かれた道)がわかりづらく、マーキングもサインもなかったのです。トレイルをなんとか探しながら歩きましたが、森の中で方角が分からなくなる恐怖をはじめて知りました。

映画『ブレア・ウォッチ・プロジェクト』のように行き倒れる心の準備はできていなかったので、とにかく道に沿って歩き続けると、競走馬用の牧場を発見。外で草を食んでいた馬を眺めて、しばしホッとしていました。

5.ずっと「積読(つんどく)」だった本を読む

ハイキングの後、キャビンに帰って1時間ほど本を読みました。そして何とも満たされた気持ちになったんです。ちゃんと本を読むなんていつ以来? 幸せすぎて、泣きそうになるほどの豊かな時間でした。

6.ファイヤーピットに火を起こす

彼が「炎の魔術師」であることを知ったのもこの週末(笑)。彼はもともと暖炉に火をつけるのが好きだったのですが、野外のファイヤーピットに火を点けた途端、その「炎愛」は100倍になったようでした。

薪がしっかり燃えはじめたので、森の中で薪拾いをしました。松ぼっくりや木の枝がパチパチ燃えるのを眺めるのは、本当に贅沢なひとときでした。火はとても暖かかったので、陽がとっぷり暮れたあとも私たちは3時間も外で話していました。キャビンと目の前の炎以外は漆喰の闇。

さあ、そろそろ中に入る時間です。

7.二人だけのゲームに興じる

チリコンカンを温めたディナーを食べた後は…さて、どうする? テレビもなければ近所のバーに繰り出すオプションもなし。アンプラグドだからスマホをいじることもできない。

そこで二人でトランプをしたり、流れてくる曲でイントロクイズをして、負けた方が1杯飲むというゲームに興じることに。

すっかり楽しんで、酔っぱらってしまった私たち。最後は小さな窓を開けたまま、そしてブラインドを下ろさずに寝てしまったほど。つまり夜通し野外と“一体”となって過ごした一夜だったのです。

8.ゆっくりと「現実」に戻る

自然の中のキャビンを去るときまで、私がどんなにこの「アンプラグドな週末」を必要としていたのか気づきませんでした。

実は最初、完全にデジタルフリーの状態で3日間過ごせる自信がなかったんです。キャビンでの生活そのものは私には向かなそうですが(笑)、でもこの週末を過ごした今となっては、デジタル機器に囲まれた「ハイテク生活」に戻れるかの方が疑問なほどです。

キャビンを出てレンタカーに乗り込むとき、私と彼はふたつのことを話しました。ひとつ目は、この「アンプラグド体験」をきっと気に入るだろう友人たちのこと。ふたつ目は、この森の中での経験を、普段の生活でも一部取り入れようということでした。

具体的には、夕食時、および週末の数時間はスマホを寝室に置いておくこと。テレビもNG。会話、読書、そしてただ「2人で一緒にいること」だけを楽しむ、ということ。森の中で二人だけで過ごした時間とは違うかもしれないけれど、でもきっと素敵な時間になるはず。

そして春になったら、またあの森のキャビンで週末を過ごしたい、と今から楽しみにしています。

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN US