毛穴からシワのお悩みに対して、幅広い効果が期待できるアンチエイジングの救世主「レチノール」。多くの皮膚科医やスキンケアの専門家も、フェイスクリームや美容液に欠かせない“鉄板の成分”とみなしているとか。

「レチノールは市販されている中でも、もっともよく使われている真のエイジングケア成分と言えるでしょう」と皮膚科専門医でスキンケアプロダクトブランド「SLMDスキンケア」の創設者であるサンドラ・リー博士はコメント。

そんな気になる「レチノールの効果と副作用」について、<グッド・ハウスキーピング>が解説。専門家のアドバイスを交えながら、レチノール配合の製品を使う前に知っておくべきことを紹介します。

レチノールって?

レチノールはビタミンAの一種で、脂溶性ビタミンのひとつ。

「主に全乳、脂身の多い魚、レバーのような動物性食品に含まれており、体をつくるのに役立ち、健康な肌の維持、免疫系を調節する役割、さらには感染予防にも効果があると言われています」と説明するのは、グッドハウスキーピング研究所の栄養管理士ステファニー・サッソスさん。

レチノールは、医師の処方が必要な医療用薬品であるレチノイン酸(トレチノイン)の一般用医薬品であり、ニキビ治療やアンチエイジングの目的で使われることが多いとリー博士。

「レチノールとレチノイン酸は、ともにレチノイドと呼ばれるビタミンA誘導体の主な成分です。レチノールはレチノイン酸と同じ効能がありますが、レチノイン酸よりも生理活性が低く、それだけ刺激も少ない。そのため、皮膚科医は肌を成分に慣らすために、レチノールから使いはじめることをすすめています。けれど、それらの効果を得るために、必ずしも処方が必要なレチノイドを使う必要はありません。レチノールならわざわざクリニックに行く必要もないし、レチノイン酸よりも低コストで入手することも可能です」

シワの予防に効果的?

「レチノールはコラーゲンの分解を防ぐと同時に、急速な細胞のターンオーバーを促し、シワができる皮膚の皮下組織の層を厚くするというような形で肌に作用します」とリー博士。

コラーゲンとエラスチンは皮膚のたんぱく質で、みずみずしくふっくらとした肌を保ち、ハリのある艶やかな顔色を作るとされる成分。顔に塗ると、レチノールはコラーゲンが分解するのを阻み、コラーゲンとエラスチン両方の生成を促進し、小ジワやシワの予防に効果的なのだとか。

『Journal of Drugs in Dermatology(皮膚科用薬ジャーナル)』に掲載された研究によると、レチノール濃度0.1%の保湿剤を1日1回使用した場合、レチノールが配合されていない保湿剤と比較すると、8週間で小ジワ、色素沈着、弾力性、ハリおよび光損傷を著しく改善する結果が出たのだそう。

また、レチノールは皮膚細胞のターンオーバーの促進を意味する、角質溶解性があるとリー博士はコメント。

「レチノールは毛穴を清潔に保ち、黒ニキビや白ニキビ(白い角栓)の予防にもおすすめです。ニキビ予防はもとより、肌のトーンやシミを改善し、生き生きとした肌になり、誰もが求める肌の輝きをもたらしてくれる可能性がある成分なんです」

ただし、レチノール製品を使い始める時期に関しては、いくつかの議論があることに留意すべき。レチノールが大人の成熟した肌に良い成分だからといって、老化の兆候があらわれるまで使用は控えるべきという意味ではないと、リー博士は言います。レチノールを使うタイミングがわからない場合は、まず皮膚科医に相談するのがベスト。

副作用があるって本当?

レチノールは、どのようなタイプの肌にも安全に使えるものではあるものの「肌が乾燥したり赤らんだり、ピリピリとした刺激を感じる人もいるかもしれませんが、初めて使う場合には良くあることです。そのため、はじめは少しずつ試していくのがいいでしょう」とリー博士はアドバイス。

「レチノールはデリケートな新しい皮膚を表面に押し出す『細胞のターンオーバー』を加速させるので、皮膚が太陽に対してより敏感になる可能性があります。そのため、レチノールを用いる時は毎日日焼け止めを塗ることが大事です」

レチノールは夜しか使えない?

従来、レチノールは夜用として使われてきました。理論上、肌は眠っている間に回復するので、レチノール以外のアンチエイジング成分も、就寝前に塗るとより効果があらわれるとされます。また、レチノールは日光に敏感に反応し、それに加えて紫外線はレチノールを劣化させ、その効果を低下させてしまうと考えられてきました。

ところが最近は、日中使用する保湿剤にもレチノールやSPFが含まれるようになりました。こういった製品には光による分解を減少させ、有効性を確保するために安定化レチノールが使用されています。

いずれのレチノール製品も、はじめは一晩おきに使うなどして、肌の調子が整ってきたら使用頻度を増やすのが良いそう。

「通常、肌の調子は時間とともに整っていきます。また、刺激を最小限に抑えるために、レチノール製品を使う前には保湿剤を塗るのがおすすめ。もちろん、どのメーカーのスキンケア製品を使うにしても、正しい塗り方そして最良の結果を得るために、ラベルに記載されている指示には必ず従ってくださいね」

高濃度のほうが効果的?

レチノールは空気、熱、光に敏感に反応してその効果が低下することがあります。したがって、光を通さない不透明で気密性の高い包装がされているか、または有効性を確保するためにラベルに「カプセル化」と記載された商品がおすすめ。

肌に作用するレチノールに関しては、“もっとも効果的”という濃度の割合というものはありません。成分の構成は製品全体の調合によるもので、レチノールの割合が高いからといって必ずしも効果的とは限らないためです。

結果が出るまでにはどのくらいかかる?

「レチノール製品に含まれるさまざまな成分は、多くの場合すぐにその変化はあらわれますが、全体的に見て結果が出はじめるには約10〜12週間ほどかかります」とリー博士。

いろいろな効果が期待できそうなレチノール製品。皮膚科医に相談の上、自分に合った製品を見極めて使ってみるとよさそうですね。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 西山 佑(Office Miyazaki Inc.)

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