インドをはじめとするアジア各地で栽培されているターメリック(ウコンの一種)。カレー粉の主原料として日本でも親しまれていますが、最近ではその健康効果にも注目が集まっています。

本記事では、ターメリックに含まれる栄養と健康効果について専門家が解説。学術誌の情報や研究結果なども交えて、<プリベンション>、<グッドハウスキーピング>よりお届けします。

ターメリックの主な成分

ターメリックには、ポリフェノール化合物である抗酸化物質「クルクミン」が含有されています。これは、慢性的な炎症によるリスクを軽減し、体の細胞が通常どおり機能する助けとなってくれると言われています。

「ターメリックの主な成分であるクルクミンには、抗炎症作用があると考えられています」と話すのは、栄養士であり『The Superfood Swap(原題)』の著者でもあるドーン・ジャクソン・ブラットナーさん。

「口の中の歯肉炎から心臓病にいたるまで、あらゆる病気は炎症が引き金となる場合が大半なので、毎日小さじ1杯ほどターメリックを摂取するというのも、良いアイデアかもしれません」

炎症は臓器組織の損傷の原因となるものの、ターメリックに含まれるクルクミンは、血管を炎症から守ってくれるのだとか。ただし、ライフスタイル(運動頻度、食事内容、喫煙の有無など)も体内の炎症に影響を与えるもの。日々の食事に積極的にターメリックを取り入れても、すでに進行している炎症を完全に元に戻すことは不可能だと言います。

また、栄養士であり『Healing Superfoods for Anti-Aging(原題)』の著者でもあるカレン・アンセルさんは、ターメリックの歴史についてこう説明しています。

「近年、その健康効果について注目が高まっているターメリックですが、実際にはこの植物の根は何千年も昔から中国伝統医学やアーユルヴェーダ(インドの伝統的医学)において、炎症の軽減や消化不良の改善のために用いられてきたものなんです」
pumpkin and carrot soup with cream and parsley top view
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ターメリックを摂取する健康メリット

ここからは、ターメリックに期待できる具体的な健康効果をお届けします。

痛みの緩和効果

いくつかの研究によって関節炎痛の緩和とターメリックの関係、また炎症性腸疾患に伴う胃腸痛の緩和とクルクミンの関係が指摘されているそう。

また、最近の臨床研究では、変形性膝関節症の患者に対し、クルクミンは一般的な鎮痛剤と同様の働きをし、さらに忍容性も高かったことが判明。ただし鎮痛剤の代わりにターメリックを摂取すべきかについては、まず医師や医療従事者に相談することが大切です。

認知機能の低下を抑制する可能性

クルクミンには、アルツハイマー病の神経障害の原因となるプラークを抑制するなど、認知機能の低下を防ぐ効果がある可能性があるとのこと。学術誌『American Journal of Geriatric Psychiatry』に掲載された研究によると、特定の種類のクルクミンを毎日摂取することで、加齢による軽度の記憶障害や気分の落ち込みが改善されたのだとか。

しかし、これまでに行われた研究の多くは比較的小規模であり(同誌の研究の参加者は約40名)、今後より大規模な「ヒト試験」を伴う研究が必須。

また、別の研究でもクルクミノイド(クルクミンとその類縁物質)が、認知機能低下のリスクを軽減する可能性があることが判明しています。

また、2006年にアジア人を対象に実施した調査では、認知機能テスト(記憶力や集中力などを測るテスト)において、カレーを多く食べた人の方があまり食べなかった人より高得点を取ったという結果が出ています。

特定の慢性疾患のリスクの低下

クルクミンが、慢性的な生活習慣病(心臓病や2型糖尿病、いくつかの種類のガンなど)の根本的な要因である酸化ストレスの軽減に効果を発揮するという研究も。

2017年に薬理学に関する学術誌『Pharmacological Research』に掲載されたレビュー論文によると、クルクミンの抗酸化作用や抗炎症作用は、糖尿病性心筋症や不整脈など特定の心臓病の予防に役立つかもしれないとのこと。また、とある予備調査では、「ターメリックとバイパス手術後の心筋梗塞のリスク低下との関連性」を指摘し、クルクミンはガン予防にも効果があると考えられているそう。

とはいえ、現時点では、実験の多くは“試験管内”に留まったもの。ターメリックががんにおよぼす影響を確かめるためには、さらなる研究が必要になります。ひとつの化合物に頼るよりも普段の食生活を見直した方が、疾患予防には効果的と言えそう。

変形性関節症の痛みをやわらげる

2016年に発表されたレビュー論文で、クルクミンを4週間摂取し続けると、変形関節症の痛みがやわらぐ(すなわち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やグルコサミンを摂取した場合と同等の効果が得られる)可能性があるという報告も。

花粉症の症状を軽減

花粉症による空咳(乾いた咳)、かゆみ、そして鼻水や鼻づまりでさんざんな思いをする人には、抗酸化作用や抗炎症作用があると考えられているクルクミンが役に立つかもしれません。

2008年に発表されたレビュー論文には、クルクミンのアレルギー症状に対する効果を調べる動物実験を実施したところ、ヒスタミンの放出が抑えられ、アレルギー症状が大幅に軽減されたという報告も。

うつ病の症状を軽減

クルクミンにより、うつ病を患って抗うつ薬を飲んでいる人の症状が、軽減されたというケースもあるそう。ある研究では、クルクミンと実験で用いられた抗うつ薬のプロザックとの飲み合わせに悪い影響は見られなかった上、良好な効果が得られる傾向があったとのこと。

ただし、研究は小規模かつ短い期間(わずか6週間)に実施され、一部ではその結果が誇大表現であるという報告もあるので、それらの点を踏まえた上で考慮しましょう。

コレステロール値を適正に保つ

2017年に発表されたレビュー論文によると、ターメリックとクルクミンが血中脂質濃度に与える影響について7つの研究をまとめたところ、それらが心血管疾患のリスクをいくらか軽減できる可能性があることがわかったとのこと。

しかし、研究者たちは適切な投与量を判断するのが困難なため、臨床の場で用いるのはまだ早すぎると指摘。さらなる研究が必要であると述べています。

歯周病の予防や治療に役立つ

2016年に発表されたレビュー論文には、ターメリックの抗炎症作用や抗真菌作用が、非常に一般的な歯周病のひとつである歯肉炎の予防や治療に役に立つ可能性があるという、いくつかの証拠が示されています。しかし、これにもさらなる研究が必要であると関係者は強調しています。

spoonful of turmeric powder on a plate
annabogush//Getty Images

ターメリックの健康リスクや副作用

ターメリックに期待される健康効果は少なくないものの、摂取する前に医師または医療機関に相談するべき場合もあります。

たとえば、ガンの治療を受けている人。ターメリックは特定の化学療法薬(カンプトテシン、メクロレタミン、ドキソルビシン、シクロホスファミドなど)の作用を妨げる可能性があるので、摂取前には医師への相談が必須です。

また、ターメリックはアスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシンといった、ある特定の薬の効果を弱めることもあるそう。また、ワーファリンなどの血液凝固阻止薬を服用している場合は出血のリスクを高める可能性があるので、胃腸障害や腎臓結石のある人はターメリック摂取前に必ず医師に相談すること。

体質によってはターメリックを摂取することで、胃の不調、めまい、吐き気、下痢などの軽度の副作用が起こることがあるので要注意。

サプリメントで取り入れる場合の注意点

ターメリックは食生活に取り入れることで、健康効果が期待できる食品。けれど、ひとつの食品や食品成分が“万能”ということはけっしてなく、「ターメリックを摂取しているから、健康や食べ物に気遣わなくても大丈夫」と考えるのは誤り。自分のライフスタイルに合わせ、無理のない範囲で取り入れるようにしましょう。

サプリメントでターメリックを摂取する場合は、品質と安全性が第三者機関によって検査されたものであることを確認した上で、必ず医師または医療従事者に相談をしましょう。

また、ターメリックの健康効果の多くはクルクミンによるものである一方で、残念なことにクルクミンの生体利用率は低く、体内に吸収されにくいという性質があるそう。しかし、研究結果によると黒コショウの活性化合物であるピペリンは、クルクミンの体内での吸収率を高める(具体的にはクルクミンの生体利用率が2000%上昇)働きがあるのだとか。そのため、多くのサプリメントにはクルクミンとピペリンの両方が配合されており、食事からクルクミンを摂取する場合は、ターメリックと黒コショウを合わせて食べるのがおすすめです。

基本的には、植物性栄養素はサプリメントからよりも植物そのものから摂取する方が推奨されていることも覚えておきましょう。

ターメリックの取り入れ方・アレンジレシピ

ターメリックは味が好みであればどんな料理にも入れることができて、淡白な料理も栄養たっぷりの黄金プレートに変えるスグレモノ。また、調味料に加えてスパイシーに仕上げてもOK。ターメリック入りのケチャップ、マスタード、バーベキューソースなどもおすすめです。

「ターメリックのサプリも売られていますが、個人的には、昔ながらのスパイスという形で使っていただいた方がずっといいと思いますね」と、アンセルさん。

「とても簡単にお米やクスクス、そしてキヌアなどの穀物に香り付けしながら抗酸化物質を摂取できますし、きれいな黄色に色付けてもくれます。カレー粉の主原料のひとつでもあるので、カボチャやニンジン、カリフラワーなどの焼き野菜に振りかけても、おいしくヘルシーにいただくことができます」
detox drink, ginger, lemon and orange juice with curcuma and chilli powder
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ゴールデンミルクの作り方

「ターメリックをたくさん摂ることができるもっとも手軽な方法のひとつは、ゴールデンミルクです」とブラットナーさん。

ゴールデンミルクは植物性あるいは普通のミルクにターメリックを小さじ1杯入れて、そこに黒コショウ(ターメリックの吸収を促進する食品)をひと振り。さらに、ナツメグやハチミツを少々加えればできるシンプルなドリンク。

摂取量や薬との飲み合わせなどに気をつけながら、ターメリックの魅力を楽しんでみて。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 平田美桜(Office Miyazaki Inc.)宮田華子
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