一般的に「マッチングアプリ」というと、恋愛や私生活におけるパートナーや性的ニーズにマッチした相手を探すアプリという印象が強いかもしれません。しかし近年、マッチングアプリを通して共通の趣味をもつ友人を探す人が増えたり、アプリにも友だち探し用の機能が追加されるように。

ここでは、「大人の男性として、友だちを作ることに一層のハードルを感じている」というマットさんの体験談を紹介。マッチングアプリで友だち作りに挑戦してみた結果や感想とは。

語り:マット・ケンダルさん

友だち作りが「どこかぎこちない」

グレッグとは突如、音信不通になりました。何か変なこと言ってしまったかな? 押しが強すぎたのかな? それとも、趣味が合わなかったと判断されたのかな...。

そもそも僕たちが出会ったのは、デーティングアプリと全く同じ形式の、友だち作りを目的としたマッチングアプリ。彼の趣味は、スポーツ、音楽とアートの展示巡り。少し定番すぎるけど、まあいいかと右スワイプ。ロンドン郊外に住んでいて、似た趣味をもった友だちを探しているそう。

話すことがたくさんあるわけではないけれど、お互いに週末の過ごし方などについて話しました。彼の写真は、色気を出すような、ちょっとカッコつけた風でしたが、気にしないようにしました。

でも、すぐに会話が弾まないという問題に直面。デート用アプリでの会話も難しいけれど、友だち作りのアプリではさらに大変です。もちろん、自分が大人の男であるという要素があるのかもしれません。男同士の友だち作りは、どこかぎこちなく、“妙”な経験だと感じます。

3人に1人は「仲の良い友達がいない」

背景を説明しましょう。自分は、深くて広い友人たちと関りがあり、交友関係は充実している方でした。しかし、年齢を重ねるつれ、みんなの結婚や出産などもあり、平日の夜にふらっと誘えるような、フットワークの軽い友だちは減ってきていました。これは珍しいことではなく、このような経験をしている人はたくさんいるんだそう。

男性がよりオープンに自身のメンタルヘルスなどについて語り合うことを支援する団体「ムーヴェンバー」の2018年の調査によれば、男性は友だち作りにおいて、女性より難しいと感じていることがわかっています。男性の約3人に1人(27%)は、仲の良い友だちがいないと答えたそうです。 この問題は“友情不況(Friendship Recession)”とよばれていて、健康への影響も懸念されています。

“口説かず”に距離を縮めることに苦戦

そんな中、マッチンググアプリの「バンブル」が、友だち作りに特化したアプリの発表。そして多くのアプリが、この需要に着目し始めたように思います。僕は友だち作りアプリをダウンロードした際、会員登録をしながら、「自分は何をしているのだろう」とアプリで友だちを探している自分に少し恥ずかしさを感じていました。

実際、デート用も友だち作り用も使い方において、あまり線引きがはっきりしていないからかもしれません。「スワイプ」「マッチ」といった基本のシステムはまったく同じなので、どこか奇妙さを感じたように思います。

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Photographer, Basak Gurbuz Derman//Getty Images

デートのために使っていたときと同じように、マッチを探し続け、毎回新しい会話を始めるのは骨の折れる作業でした。そして、全てのマッチと会話を始めるのは難しく、時間切れになることも多いのが現状です。話し始めても、途中から返信が来なくなることも頻繁にあります。口説かずに、友だちとしてプラトニックに距離を縮めるためのコミュニケーションにおいて、なんといったらいいのかわかりませんでした。

「今日何してるの? 金曜日だから、気分がいいね。ここのところ雨続きだったけど、今日はやっと止んでくれたみたい」という感じ。何を話したらいいか本当にわかりません。このような調子で1カ月以上使ってみたけれど、リアルで会うことになったケースはまだありません。

多趣味でも会話が弾むわけでもなく…

マッチした男性のひとりであるベンは、モノクロの自撮りばっかりなのが気になりましたが、性格は明るそうな人。彼は、写真、自然、読書と様々なスポーツが趣味だと言っていたので、話しかけてみました。

多趣味だから会話が弾むわけでもなく、「週末の予定は?」「あー。サイクリングに行く予定。晴れるといいんだけど」という感じ。自分の会話術のなさに、落ち込みます。

これまでの経験上、深い友人関係に発展するような出会いは、同じ趣味を持っていたり、友人つながりの集まりで何度も顔を合わせたときが多い気がします。その上、そういった場合でも、「友だちになれそう」とビビッと何かを一瞬で感じるわけではありません。

男性が友だち作りに苦戦する理由

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Maskot//Getty Images

心理療法士のジョージーナ・スターマーさんは、男性が友だち作りに苦戦する理由のひとつには、友だち作りに不可欠な「ヴァルネラビリティ(vulnerability)」の欠如だと言います。

※ヴァルネラビリティは、「ガードを下げ、弱さを人に見せられること」や「自分の弱みを認められること」などと日本語では訳されます。

男性は、自分たちの気持ちについて話さないように社会からプレッシャーを受けて育っています。感情に関連するボキャブラリーも少ないことが多いです」とスターマーさん。続けて、だからこそ男性の友だち作りは、アクティビティを共にすることに重きを置くことが多く、会話や一緒に過ごす時間で関係を深めることの多い女性とは異なると自論を展開。

恋愛カウンセラーのコートニー・ボイヤーさんも、スターマーさんの考えに同意し、「女性は常に友情を探すように教えられ、そうすることが社会的にもいいことだとされていますが、男性の場合はそうではありません。しかし、友だち作りは男性にも必要なのです」と言いました。

ボイヤーさんのクライアントは、キャリアで成功し、家族もいて、持ち家もあるような男性も多いけれど、日常的に孤独や寂しさを感じているそうです。

アプリが解決策になりうる?

では、アプリがこのような問題の解決策になるのでしょうか? ボイヤーさんは、アプリで友だち作りをすることへの抵抗は時間と共に薄まると考えます。

そして、何よりも、根本的に男性が感情などをオープンに話すことが大事だと言います。

「男性のクライアントには、読書サークルなどに参加することをオススメしました。深い会話や思ったことについて話すとても良い機会になります。心を開かない方が安心するかもしれませんが、そのままでは社会のコミュニティの一員になれていないということになります。自分では感じられないかもしれませんが、世界はあなたを必要としているのです」
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Maria Korneeva//Getty Images

また、男性が小さいころから聞かされてきた社会からのメッセージやステレオタイプも変えなければいけません。「男の子なんだから泣くな」などといった言葉を通して、男性は弱みを見せることは、“負け”だと教えられてきたのです。「しかし、弱みを見せることこそが、周りの人々とコネクションを作るもの」だとボイヤーさんは言います。

ユーザーの15%が、友だち作り用に活用

「バンブル(Bumble)」はマッチングアプリ上で、プラトニックな関係性を求めるユーザーが増えていることに着目。

「私たちの調査によれば、3分の1以上の人は、今いる友だちとオンラインで出会ったと答えています。だからこそ、専用アプリを作るべきだと考えました」と需要について言及しました。現在、「バンブル」のアクティブユーザーの15%が、友だち専用のプラットフォームを使用しているそうです。

専用アプリがローンチしたのは今年7月で、まだまだ新しい試みと言えるでしょう。こういったポジティブな歩みを感じる一方で、やはり男性の友だち作りの課題を解決するには、専用アプリだけでなくそれ以上の対策が求められるはずだと思います。

たとえば男性が直面する心理的なチャレンジを理解し、メンタルヘルスのサービスに投資をすること。弱みを受け入れられる“男らしさ”の新しい土壌を作ることなど、社会的、文化的な変化が必要なのではないでしょうか。

その変化を始める心の準備はできているかというと、現状ではわたしにはわかりません。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:佐立武士
COSMOPOLITAN UK