語学を習得したい、キッチンを片づけたい、新しいジムに行かなきゃ…。 あれこれ頭に思い浮かぶものの少しも実行に移せない。そんな時に「なんて怠け者なんだろう…」と自分自身を責める前に、その「怠ける(怠惰)」という行為について、もう少し深く考えてみるといいかもしれません。

そこで本記事では、3人の専門家が「人がだらけてしまう原因と解決策」を解説。

監修者


「先延ばし癖」と「怠惰」の違い

ピチル博士によれば、「私たちが“怠惰”と考えているものは、単に努力をしたくないということであり、“先延ばし癖”と重なる部分もあります」と説明。

「ただしこの2つは“何かをすることを避ける”という点では同じですが、怠惰は“その何かが大変そうだから”、先延ばしは“その何かが嫌だから”というように、根本的な理由が異なります」

ただし、何もしない=怠けているというわけではないんだそう。たとえばすでに忙しいにもかかわらず、週末に翌週の夕食を用意をしようとしたり、洗濯や家中の掃除をするといったタスクを増やしている場合。自分の容量を超えているにも限らず、できていない自分を責めてしまうようであれば「人には限界があること」を思い出しましょう。

プライス博士も「怠ける時間が必要なケースもある」と言います。

「だらけているのではなく、少しスピードダウンして休息をとる必要があるだけかもしれません。体が持たないくらいエネルギーを使うことを、ずっと続けていられるわけがありませんから」

「人間の肉体は、集中力を必要する作業を長い時間ずっと続けるようにはできていない」というのが3人の専門家による総意です。

怠惰の主な原因は?

一方で、人によってはより「怠けやすい傾向」にあるよう。

ピチル博士いわく、個人の性格によるということが研究でも証明されているのだとか。それは、人間の性格特性で「ビッグファイブ」と呼ばれる基本の5つの因子(開放性、誠実性、外向性、協調性、情緒安定性)のうちのひとつ「誠実性」(どのくらい義務を果たそうとするか、まめか)に関係するそう。

人間誰しもが、「非常に誠実な人」から「まったく不誠実な人」までの間のどこかに当てはまります。誠実性が高い人たちは他の人と比べて目標指向型であり自分に厳しいことが多く、おのずとテキパキしてくるのだそう。一方で、誠実性の低い人は怠惰になりがちということに。

「よく誤解されていますが、怠惰とは『感情』です。ある日は怠けたいかもしれないけれど、別の日にはそうでもないかもしれない。仕事をしたり皿を洗ったり、毎日歯を磨くなどのことをたまにさぼったりしてしまうのは、そのときの気分によるもの。すべては自分の意思と、コミットしているかどうかにかかってくるのです。当然、目標指向型で自分に厳しい人であれば、すみやかに行動する傾向にあるでしょう」

でもどのくらい誠実かは、他の性格の特性と同じく、遺伝以外にそのときの環境や状況にも大きく影響されるそう。

たとえばタイムマネジメントのスキルや特定の作業方法がわからない、あるいはそのスキルがない、過去に受けた精神的な苦痛などが、遺伝的な理由ではなく、作業を行う際の「怠惰さ」や「やる気」に影響を与えるのだそう。つまり、生まれつき怠惰な性格の傾向があるからといって、どんな状況でも怠け者になるというわけではないのです。

怠惰になりがちな性格特性を持っている人でも、自分が望まないかぎり、永遠に怠惰でいるわけではないということ。性格は運命ではないから、そのような傾向を変えることは可能とピチル博士も言います。

やる気が出ない原因は?

やる気とは、何かをする甲斐があると感じる理由(怠惰への対抗手段のようなもの)。たとえば空腹や喉の渇き、眠気のような肉体的な欲求や、所属、競争、個人の興味や目標などの二次的な欲求など、さまざまなところから起こるものなのだそう。

また、何かをするための動機には、内的動機外的動機があります。

  • 外的動機:お金や給料など、仕事をすることで得られる外部からの報酬などの「見返り」を指す
  • 内的動機:自分にとってやりがいのあることで、一度やり始めると気分がよく、時間を忘れてしまう、それを続けることが完全に自分の自由意志である状態

内面的なモチベーションを高めるためには、自分がやっていることに熱中し、それをコントロールすることが重要です。

「自分が選んだ行動に没頭していれば、人はよりやる気が出ます。言い換えれば、もしあなたがエクササイズや語学の勉強にやる気が出ないとしたら、それはあなたが怠けているからではなく、自分が本当に大切にしている内面的な選択肢と、それらのタスクや目標が一致していないのかもしれないということ」

疲労には3種類ある?

だらけてしまうことの大きな要因のひとつはずばり「疲労」。これは、先に説明した環境や状況の要素のひとつ。何をするにしろ、疲れていればおっくうに感じるものです。

睡眠医学では、疲労を次の3つに分類しています。

  • 急性疲労:深夜までの夜更かしなどが原因
  • 蓄積疲労:慢性の睡眠不足などが原因
  • 体内時計の乱れ: 時差ボケなど、睡眠や覚醒時間が自分の体内時計と合っていないときに起こる
「特に困難な仕事に直面したとき、十分な睡眠、運動、食事などの健康管理を行い、自分のコンディションをベストな状態にしておくのが大切です。まずはセルフケアを心がけることで、怠惰から抜け出す道が開けるかもしれません」

また、精神的な疲労や消耗もあるんだそう。たとえば悲しいことがあった、ストレスの多い状況に置かれている、長い時間大きなストレス要因に対処してきたなど。それでも私たちは「負けちゃいけない」と思い込みがちですが、そこは考え方を変えて、体が休みを必要としているサイン」と考えてみて。

stack of dirty dishes
Mike Garten

エネルギーとやる気を取り戻すためにできること

やりたくない原因をつきとめる

サンダースさんのアドバイスは、するべきことに対して怠けてしまう原因は何かを見つけ、それに対処すること。たとえば、タスクを実行するために何かスキル(ほんの些細なことだとしても)を身に着ける必要があることが理由で、物事を先延ばしにしていませんか? 原因を認め、そこさえクリアすれば意外と簡単に感じられるはずです。

何について怠けたくないか、はっきりさせる

生活のすべてに対して怠けるということはないはず。たとえば仕事上のメールに答えることや、洗濯やエクササイズならだいたいさっさとできるのに、皿洗いだけはやりたくないなど。

「これだけはきちんとやりたいということを、具体的にはっきりさせましょう。たとえば、食器を使い終えたらすぐに食洗機に入れるといった簡単なことでもいいんです。それを放置すればするだけ、頭の中でより大きな問題に発展しがちですから」

最初の1歩に集中する

あることを成し遂げるために、最初の1歩は何かを見極めましょう。

もし掃除機で部屋を掃除したいのなら、その最初の一歩は掃除機のあるところに行って取ってくるということになるでしょう。ランニングなら、最初の一歩はワークアウト用のウェアに着替え、ランニング用のシューズを履くことかもしれない。その次の一歩のことは考えず、次にすべきことだけに集中することによって、体と心をその方向に向けることになります。

実際、ピチル博士のグループの研究では、このような比較的やりやすい行為から始めることで、最終目標に対する態度と行動に変化が生じるという結果になったそう。たいていの場合、始めてしまえばなんとかなるということですね。

「今の自分」より「未来の自分」を優先

ソファに座ってNetflixを見る日曜日の午後。そろそろ平日用に夕食を作り置きし始めた方がいいけれど、面倒くさいなあと感じる。ここで、未来の自分を想像してみましょう。遅くまで働いて、お腹がぺこぺこな月曜日の夜。1日働きづめで、帰宅してから夕食を作りたい? 未来の自分に共感すれば、先延ばしが減るもの。その延長線上でやる気が出て、今がんばって行動することにつながるとピチル博士は語ります。

他人を巻き込む

友達と一緒にワークアウトする(リアルでもバーチャルでもOK)と決めたら、やらざるを得なくなりますよね。自分ではエクササイズが面倒に感じても、友達へのメンツがあるからという理由でやる気が出てくるというわけ。

運動など、何かをするときに内面的なモチベーションを感じられないときは、外面的な理由を自分に与えるのもひとつの方法だとピチル博士はアドバイスします。

この翻訳は、抄訳です。
Translation: Sasaki Noriko(Office Miyazaki Inc.)
GOOD HOUSEKEEPING