独特な甘い香りのする、「パッションフルーツ」。

日本では、時計の文字盤に似たその見た目から「トケイソウ」と呼ばれる花の果実で、料理やスイーツのほか、スムージーやピュレにしてカクテルに混ぜたりして、ドリンクにも使われます。卵のような形をしたこのトロピカルフルーツは、抗酸化物質や食物繊維、ビタミン、ミネラルが含まれており、栄養価が高いことでも知られています。

本記事では、気になるパッションフルーツの美容や健康に対して期待される効果、“食べ頃”の見極め方、食べる際に注意するべき点などを<ネットドクター>からお届け。

ヘルスケアアプリ<Lifesum>の栄養士であるシグネ・スヴァンフェルトさんの解説を交えながら、詳しく紹介します。

パッションフルーツとは?

南および中央アメリカや西インド諸島、オーストラリアが原産のパッションフルーツは、世界中で550種以上が栽培されている果物。紫や黄色い見た目をしたものが多く、かたい質感の皮は食べることができません。切ると鮮やかな黄色のジューシーな果肉の中に、食べられる種がつまっています。

ちなみに、パッションフルーツの「パッション」のスペルは“passion”ですが、「情熱」という意味とは関係ないのだそう。キリスト教の宣教師が異国でこの花を見て、イエス・キリストが十字架にはりつけられた際に被せられていた「いばらの冠」に似ていると思ったことから、「受難=passion」という名をつけたのだそう。

パッションフルーツの栄養

パッションフルーツは驚くほど栄養が豊富。食物繊維やビタミン、ミネラルの宝庫で、特に抗酸化物質であるビタミンCやAが豊富。18gのパッションフルーツ1個(可食部)に含まれる栄養素は以下のとおり(注:1日の摂取量はすべてイギリス基準)。

  • カロリー:17kcal
  • 炭水化物:4.2g
  • 食物繊維:2g
  • タンパク質:0.4g
  • ビタミンC:1日の摂取量の6%
  • ビタミンA:1日の摂取量の5%
  • 鉄:1日の摂取量の2%
  • 銅:1日の摂取量の2%
  • カリウム:1日の摂取量の1%
  • マグネシウム:1日の摂取量の1% 

数字だけ見ると特筆するほどでもないようですが、その大きさを考えれば、カロリーが少ないわりに栄養価が高いことがわかります。また、パッションフルーツは抗酸化物質のポリフェノールが豊富。レユニオン大学の研究では、バナナやマンゴー、パイナップル、ライチーの含有量より多いことが判明。

パッションフルーツの8つの健康効果

食物繊維とファイトケミカルを多く含むことから、病気の予防や健康維持など、パッションフルーツにはたくさんの効果が期待できます。

ビタミンCが豊富

ビタミンCは生きていくために必須の栄養素。ただし、人間の体内では生成できない成分で、かつ水溶性で体内に蓄積することができないため、食事でたっぷり摂る必要があります。

「(ビタミンCは)組織や骨の成長と修復といったさまざまな体の機能を補います」と、スヴァンフェルトさん。また、植物から摂取した鉄分は体への吸収率が低いというのが一般的な考えですが、ビタミンCは鉄分の吸収率を高めてくれるのだそう。

ビタミンAが豊富

パッションフルーツは、ビタミンAの含有量が抜群に多いと言われています。ビタミンAとはレチノールなど3種の脂溶性化合物の総称で、健康維持に欠かせない成分。

「ビタミンAは体内、それも主に肝臓に蓄えられます。パッションフルーツには、必要に応じてビタミンAに変換されるベータカロテンも含んでいます。ビタミンAは視力や皮膚、骨、そして細胞の再生に必要とされるものです」

食物繊維がいっぱい

腸の健康に欠かせないのが食物繊維。1日に摂るべきとされる30g(日本では20g前後)を、きちんと摂取できていない人が多いそう。

パッションフルーツを1つ食べると2gの食物繊維が摂れますが、そのほとんどが水溶性繊維、つまり消化の過程でどろっとした粘着性のある状態になるもの。消化のペースをおだやかにして、血糖値が急上昇するのを抑えてくれるのだとか。水溶性繊維は体が吸収する脂質の量を抑え、食事から摂取したコレステロールの一部が分解・消化されるのを防ぐ働きがあるそう。

「食物繊維をたっぷり摂ることは消化を助け、肥満や2型糖尿病、心臓血管疾患をはじめとする、さまざまな病気のリスクを減らします」

抗酸化物質の源

パッションフルーツは、さまざまな抗酸化物質を含んでいます。この抗酸化物質とは、体の細胞をフリーラジカルから守ってくれるもの。

フリーラジカルは不安定な原子・分子団で、体内に有害な作用を与える可能性があり、蓄積されると酸化ストレスと呼ばれる状態になります。体の脂肪組織やDNA、タンパクにダメージをあたえ、これががんや心臓病、アルツハイマー病などの病気と関係があると考えられているのだとか。また、酸化ストレスは老化にも関係しているそう。

パッションフルーツに含まれる代表的な抗酸化物質

  • ビタミンC:アスコルビン酸とも呼ばれるビタミンCは、たっぷり摂ることで血中抗酸化物質のレベルが39.5%上昇すると、日本での研究で明らかになっています。
  • ベータカロテン:カロテノイドの仲間。プロビタミンA(体内でビタミンAに変換できる物質)の1種で、肝臓でレチノールに変わります。
  • ポリフェノール:抗炎症性の植物性化合物。パッションフルーツの種にはピセアタンノールが豊富。肥満男性を対象にしたある実験で、インスリン感受性を向上させるという結果も出ています。

カリウムが豊富

カリウムは必須ミネラルのひとつ。人間の体内では作ることのできないもので、パッションフルーツをはじめとした食物で摂ることが必要です。

「この栄養素は、神経や筋肉の機能のほか、血圧にも影響する大切なものです。電解質(水に溶けると電気を通す物質、イオン)であるカリウムは、心拍や呼吸を司る筋肉など体の大切な機能をコントロールする、電気的な信号(インパルス)を出す役割があります」

マグネシウムが豊富

マグネシウムも必須ミネラルのひとつで、体内の全細胞が正しく機能するためにとても重要な栄養素。マグネシウムは食べた物をエネルギーに変えたり、DNAの修復するなど300以上の重要な化学反応に関わり、不足すると多くの慢性的な疾患の原因になります。

イギリスでは、亜鉛に並んでもっとも欠乏症になりやすいのがマグネシウムだとも言われています。

パッションフルーツを100グラム食べれば、1日に必要(イギリス基準)なマグネシウムの約7%を摂取したことに。肉・魚やナッツ類などマグネシウム豊富な食品と一緒に上手に摂取しましょう。

低GI

GI(グリセミック・インデックス)は、食後血糖値の上昇を示す指数。

GIは0から100までの数値で表され、一般的にGI値が70以上を高GI食品、56~69が中GI食品、55以下が低GI食品とされています。パッションフルーツのGIは30と、低GIの範囲。つまり、炭水化物がゆっくりと吸収されることを意味します。

その結果、血糖値もゆっくりと上昇し、血糖値スパイク(食後高血糖)が抑えられます。血糖値が急上昇・急降下するスパイクが長年続くと、内臓や神経、血管を痛めることになり、心臓病や脳卒中、2型糖尿病のリスクを高めるのです。

抗炎症効果

パッションフルーツの皮をサプリメントとして摂取すると、豊富に含まれている抗酸化物質により、非常に高い抗炎症効果が期待できるそう。

マックマスター大学の研究によると、変形性膝関節症のある人が紫色のパッションフルーツの皮から抽出した果皮エキスを摂取したところ、摂取しなかった人に比べて大幅に関節の痛みと凝りが軽減され、身体機能が向上したという結果が報告されています。

パッションフルーツを食べることのリスクは?

ごくまれに、パッションフルーツにアレルギー反応を起こす人もいるよう。特にラテックスアレルギーのある人が、パッションフルーツに反応しやすいのだとか。これは、ラテックスに含まれるタンパク質と、パッションフルーツのタンパク質の構造が似ているためと考えられています。

また、パッションフルーツはごく少量ですが、毒性のある青酸配糖体を含んでいます。特定の品種のパッションフルーツの皮や、未成熟のものに特に多く含まれているのだとか。青酸配糖体は多量に摂取するとシアン化物中毒を起こす可能性もあります。未熟な果実をたくさん食べるのは避けて、サプリメントとして抽出した場合を除き、皮は食べないほうがいいでしょう。

パッションフルーツの食べ方

パッションフルーツは、幅広い料理に応用できる食品。ぜひ毎日の食事に取り入れてみましょう。パッションフルーツを買うときには、表面に少しだけシワのよったものを選ぶといいそう。これが熟している証拠だとか。

調理する前にていねいに果実を洗ったら、半分に切ってスプーンで中の果肉と果汁を取り出します。周りの白い皮は食べても問題ありませんが、苦みがあるので避けた方がいいでしょう。

パッションフルーツの楽しみ方

  • 半分に切ってすくい、そのまま食べる
  • オートミール、スムージー、ヨーグルトなどのトッピングにする
  • サラダやグレインボウルのドレッシングにする
  • ジュースにする
  • ジャムを作る
  • 凍らせてシャーベットにしたり、アイスキャンディーにする
  • ゆでたものを裏ごしして、デザートのソースにする
  • タルトやケーキの生地に混ぜる
  • フルーツコンポートにしたり、フルーツカードにする
  • カクテルに使う

パッションフルーツで、水に香りづけするのもおすすめだそう。「パッションフルーツで水に風味を加えましょう。いつもの水がぐっとおいしくなって、1日の水分補給も楽にできますよ」と、スヴァンフェルトさん。

どんな使い方をしても、バランスのとれた食事にパッションフルーツを添えれば、さらにヘルシーになると言えるかも?

「果物と野菜の多い食事は、さまざまな病気のリスクを下げることが知られています。ただし、『これだけ食べれば健康になれる』という、夢のような食べ物はありません。健康的でバランスのとれた食事をするのが大切です」

この翻訳は、抄訳です。
Translation: Sasaki Noriko(Office Miyazaki Inc.)
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