テレビドラマ「フレンズ」のプロデューサー、クリエイターとして知られるマルタ・カウフマン。メディアが、年を重ねた女性のセクシュアリティについて描写をしないことに疑問を抱き、ドラマ「グレイス&フランキー」を作るに至った経緯を語りました。

語り:マルタ・カウフマン

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年を重ねた人のリアルなセックス模様を描きたい

年を重ねた女性とセックスをテーマにしたテレビ番組を作るのであれば、ジェーン・フォンダとリリー・トムリンを起用するべきだと思っていました。

そんなジェーンとリリーがまたテレビで何かやりたい、と言っていると人伝てに聞いたとき、私はなぜか「2人で一緒に出演したいんだ! 」と解釈したのです。エージェントに連絡して色々探って、またテレビで何かしたい? とアプローチ。返ってきた答えは「そろそろ何かやりたいね」でした。

そうして2015年に2人を起用し、ドラマ「グレイス&フランキー」を制作しました。年を重ねた人々のセックスとセクシュアリティをテーマにしたリアルな何かをつくりたかったのです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
グレイス&フランキー予告編 - Netflix [HD]
グレイス&フランキー予告編 - Netflix [HD] thumnail
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このプロジェクト初期のアイディア交換会で、ジェーンは「世の中には(シスジェンダーの)男性のために、勃起を助ける色々なものが開発されていて、ペニスに注入するものまである」という話をしました。

リリーはそれに対して、「だったら、若いボーイフレンドを見つければいい話じゃない」と言ったのです。それで私は「グレイス&フランキー」のストーリーを思いついたのです。

あらすじは、そこまで仲良くない2人の女性がお互いの夫たちが恋に落ちたことで同時に独り身に。2人は協力し合って、それを乗り越えないといけなくなってしまう...というもの。結果的にそれ以上のストーリーに進化しました。

7シーズン制作し、2022年に最終話を放映した時点では、ネットフリックス史上最長のシリーズに。

メディアにおける扱いに疑問

年を重ねた女性のメディアでの扱いは、とても明るいものではありません。

そもそもあまり実例もなく、特にセクシュアルな面や、何か新しいことに挑戦している姿はあまり描かれません。テレビで描かれるのは、おばあちゃんの役割か成長した子どもの母親、または面倒くさいキャラクターばかり。

ドラマ「ゴールデン・ガールズ」には、とてもセクシュアルな高齢の女性キャラがいましたが、ややオーバーなコメディ要素が多く、リアルとはいえませんでした。疎外され、可視化されていないということに、自分自身が年を重ねて気づいたのです。

良い点も悪い点もすべて見せる

ドラマ「グレイス&フランキー」で大事にしたのは、加齢とセックスの、良い点も悪い点も、難しいこともすべて見せるということ。私ももう67歳、決して雛鳥ではありません。リリーとジェーンも80代です。

los angeles special fyc event for netflix's "grace and frankie" arrivals
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ヴァギナの乾燥やオーガズムに達しにくくなること、陰毛が抜けていくことなど、心の準備はできていないけれど、すべて年を重ねると起きることなのです。でも、人生の「気づき」の時期でもあるのです。

番組の放映が始まると、視聴者からとても大きな反響が。60代、70代の女性から、年を重ねてからのセックスの経験とその「気づき」についての話が多く寄せられました。

1人の女性は、今付き合っている男性は勃起ができないので、2人はオーラルセックスを基本に楽しんでいるそうです。

年を重ねた女性の視点で描くストーリー

「グレイス&フランキー」は年を重ねた女性の視点で描かれています。なので、関節炎とマスターベーションに関するエピソードも自然な流れで盛り込むことに。

ある回では、フランキーは、グレイスがマスターベーションをしないということを知ります。そこでグレイスは試してみるのですが、結果的に関節を痛めてしまうのです。2人はこの経験から、高齢女性のためのセックストイ会社を設立することに…。

マスターベーションは絶対不可欠でありながら、年を重ねると日常的にセックスをするパートナーがいない女性が増えていくことも。マスターベーションはとても重要で、恥ずかしがることはないというメッセージをこめた回ですが、単純に「面白い」と思って書きました。

また他の回は、グレイスが自分よりとても若いボーイフレンドを家に招いたとき、全てをさらけ出すことを恥ずかしがることで始まります。ちょっとした口論になったさいに彼女はメイクを落とし、髪のエクステも取り、彼に自分の杖を見せつけるのです。

とても感情的なシーンで、ジェーンも全力で挑みました。「これが私。これが私の全て」と言うこの姿はとてもパワフルだと感じます。

私自身、変化を恐れているわけでも、成長したくないわけでもありません。しかし、いつかは「これが私の身体、これが私の顔。そしてこれが私の性格と価値観なの」と認めなければいけません。その上で「それが好きかどうかは、あなた次第」と…。

このような女性のキャラクターをつくることは、私自身も色々考える機会になりました。「グレイス&フランキー」を書いていたのは、私自身も私生活で、自分の意志ではない別れを経験していた時期でした。

グレイスとフランキーは夫同士が駆け落ちをして、いきなり独身になりますが、私もいきなり独り身になったばかりでした。ストーリーを夫の目線からも書くことも必要だったので、色々頭の中が整理されました。

「娘の願いは、できるうちに私がいいセックスを楽しむこと」

今は独身で、私は概ねそれに満足しています。結婚や同棲はもういいかなというのが本音です。誰かとクローゼットをシェアしたくもないです。つい先日、デートにいく予定の男性と電話をしていましたが、彼は将来的には一緒にパートナーと住むこと前提で付き合いたいと言ったので、「お会いできて楽しかったです」と丁寧にお別れをしました。

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Catherine Falls Commercial//Getty Images

多くの女性が口をそろえて言います。「誰かの面倒をみるのはもうごめん。付き合いたいだけ。連れは欲しいけど、結婚はイヤ」と。私の娘のハンナの願いは、できるうちに私がいいセックスを楽しむことなんだとか。

若い人に伝えたいことは、セックスというものは年齢と共に変わるということ。

若いうちはたくさん行為を重ねることにも意味があるけど、結婚すると愛を確かめるためのものに変わっていくことも。そして年齢を重ねると、オーガズムではなく、スキンシップの方が大事になることだってあるのです。

どれも良いことで、正解はありません。好きなように楽しんで、したいことをすることを忘れないで。


※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 佐立武士
COSMOPOLITAN US