かつてバージンだったアナタにも、いま現在バージンのアナタにも観てほしい! ひと味違う珠玉の「ロスト・バージン映画」8本を、コスモ編集部が厳選紹介。笑えて、泣けて、考えさせられる。そんな映画をお探しなら…♡

第1弾では、自分の欲望に正直に生きる女を描いた「ニンフォマニアック」と「ミニーゲッツの秘密」から、奔放な処女たちの生きざまに向き合った。第2弾でピックアップする作品は「ファースト・タイム 素敵な恋の始め方」と「ルールズ・オブ・アトラクション」。処女と童貞が直面する「はじめての人」問題について考察してみよう。 →そのほかの「ロスト・バージン映画図鑑」はこちら。

初体験の相手に正解がないのは分かってる。でも…/『ファーストタイム 素敵な恋の始め方』

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Aflo

■STORY

文化系女子の高校2年生オーブリー(処女)は、パーティで1歳年上の高校3年生デイブ(童貞)と出会う。ひょんなことから急速に距離を縮めていく2人だが、デイブにはずっと片思いしている憧れの同級生ジェーンが、オーブリーには年上彼氏のロニーの存在があった…。

■私の初体験、この人でいいのか問題

「初体験は性病をもっていない人と安全に済ませたい」だとか、「めくるめくようなセックスは、初体験を終えてからすればいいことだし」なんて淡々と話すオーブリーは、さほど好きではないが(理想通り)性病検査受診済みの彼氏・ロニーと初体験い及ぼうとする。ところが、ひょんなことから仲良くなった童貞のデイブに「初体験の相手にロニーはダメだ! あいつとだけは絶対しないで!」と言われたオリーブ。「そんな筋合いないわっ!」と一蹴…はせず、彼女の決意はぐらぐらと揺らぎ始める。

「初体験の相手に正解はない」頭では分かっているけど、心のどこかで「本当にロニーでいいの? もっといい男が私を待ってるんじゃないの?」なんて思いが頭をもたげていることは確か。だって、もし本当に覚悟が決まっているのであれば、処女なんてとっくに卒業しているはずだもの…。

誰を選んだって後悔する時はするし、しないときはしない。なんなら忘れちゃうことだってある。でも、考えてみれば、「初体験」に翻弄されるのはバージンたちだけの特権(?)。その苦悩すらも、大人になるためのプロセスとして是非とも徹底的に向き合ってほしいもの。

「初体験は絶対あの人に捧げる♡」と決め込む処女の危うさ/『ルールズ・オブ・アトラクション』

<p><strong><strong>「初体験は絶対あの人に捧げる♡」と決め込む処女の危うさ</strong></strong><br></p><p><strong><strong>▼STORY</strong></strong><br></p><p>金持ちの子どもばかりが通うアメリカ北東部の芸術大学を舞台に、セックスやドラッグに溺れるボンクラ大学生たちを描いた群像劇。</p><p>学内ではめずらしく、処女を貫くローレン。寮で夜ごと開催される乱交パーティの誘惑に負けぬよう、医学書を開いては性病の恐ろしさを確認し、己の性欲を鎮める日々が続いていた。ローレンはある日、大学でドラッグのディーラーをしているショーンと出会い、お互い惹かれるものを感じる。しかしローレンには処女を捧げると心に誓った人、ヴィクターがいた…。</p><p><strong><u>♡詳しいコラムは近日配信予定</u></strong><br></p><p><em>TEXT BY ayami</em></p>
Aflo

■STORY

裕福な家庭の子どもばかりが通う架空の芸術大学「カムデン大学」を舞台に、セックスやドラッグに溺れるボンクラ大学生の日常を描いた群像劇。

学内ではめずらしく処女を貫くローレンは、毎夜のように寮で開催される乱交パーティの誘惑に負けぬよう、医学書を開いては性病の恐ろしさを目に焼きつけて、己の性欲を鎮める日々…。そんなローレンはある日、大学でドラッグのディーラーをしているショーンと出会い、互いに惹かれるものを感じる。しかしローレンには処女を捧げると心に誓った人、ヴィクターがいて…。

見事なまでにすれ違っていく男女の思惑が、それぞれ一人称の視点で描かれた傑作青春群像劇。ブレット・イーストン・エリスの同名小説を映画化したもので、本作に登場するショーンの兄は「アメリカン・サイコ」に登場するエリートサイコ野郎、パトリック・ベイトマンという設定も面白い。

■究極の"思い込み"が招いた失恋

ひとめ惚れには2種類あると思う。外見がタイプど真ん中で、「あの人はどんな人なんだろう?」「相手のことをもっと知りたい!」と恋に落ちていくパターンと、最初っから「あの人は私の運命の人だわ!」と根拠もなく決め込んでしまうヤバいパターン。『ルールズ・オブ・アトラクション』に出てくるボンクラ大学生たちは、全員がもれなく後者なのだ…。

美男子ヴィクターに思いを寄せるローレンは、今夜こそヴィクターに処女を捧げようと覚悟を決めて彼の部屋を訪れる。「ハロー、わたしよ♡」と、ドキドキわくわくしながら話しかけるローレンだったが、ヴィクターといえばローレンのことが誰だか分かっていない様子で「どうしても名前が思い出せないんだよね(笑)知り合いだっけ?」と衝撃の発言をかましてくれる。しかも部屋の奥には、見知らぬ女が下着姿でスタンバイ中というダブルパンチ…! 「こんなはずじゃなかったのに…」と泣くに泣けず途方に暮れるローレン。

と、一見すると可哀想なローレン。でも、よくよく考えてみれば、彼女の"ヤバさ"に気づくことだろう。なにせローレンは、顔もろくに覚えてもらっていない遠い存在のヴィクターに恋い焦が続け、ヴィクターの意志は完全無視の上で「わたしは彼に処女を捧げるの♡」と宣言してしまうような、思い込みの激しい女なのだ! もはや、ホラーでしかない…。

「恋は盲目」とはよく言うが、ローレンはヴィクターのことを観察しているようで、実は"ちゃんと"見えていない。彼女が恋い焦がれているのは、「脳内で理想化されたヴィクター」であって、生身の人間としてのヴィクターではないのだ。だって、現実のヴィクターはヨーロッパにセックス放浪記の旅に出るような究極の遊び人なのに、ローレンの目にはそうは映っていないんだもの…。

「初体験」の相手に理想を追い求めるのは良いけど、現実が見えてないのはちょっとキケンかも。でも、思い込みで突っ走っちゃうローレンを痛々しいって笑ってるアナタ、振り返ってみたら過去に同じようなことしていたりしない…?



「たかが初体験、されど初体験」

『ルールズ・オブ・アトラクション』のローレンは初体験に確固たる理想を掲げて失敗した。一方で『ファーストタイム 素敵な恋の始め方』のオーブリーは、初体験の相手に正解なんてないのだと自分に言い聞かせてはロスト・バージンへの踏ん切りをつけようとしている。

初体験の相手に「正解」なんてないのかもしれない。それでも人生1度きりの「はじめて」に向けて、全力でボルテージを上げていく処女たちの葛藤は清々しい。コメディでもありドラマでもある、誰もが一度は通ったあの頃の気持ちを思い出してくれるはず! ともあれ、初体験が散々な結果に終わったローレンには心からのエールを送りたい…。