ドキュメンタリーのなかでも、密かに人気がある犯罪事件を取り上げた作品。実際の映像や音声が使われているものや犯罪者の心理に迫るものなど、フィクションにはないリアルさが感じられます。
本記事では、凶悪な事件が一体なぜ、どのように起こったのかに密着した、8つの「犯罪ドキュメンタリー作品」をご紹介。SNSを題材にしたものなど、トラブルのきっかけが意外と身近にあることに驚くはず。
※本記事で紹介するドキュメンタリーには、性暴力や殺人に触れた作品が含まれています。
【INDEX】
- 『我々の父親』
- 『アメリカン・マーダー：一家殺害事件の実録』
- 『エリーゼ・マツナガ：殺人犯が抱える心の闇』
- 『ビクラムの正体：ヨガ、教祖、プレデター』
- 『あるアスリートの告発』
- 『インターネットで最も嫌われた男』
- 『サバイビング・R.ケリー：全米震撼！被害女性たちの告発』
- 『塀の中の少年たちーなぜ彼らは殺人を犯したのかー』
『我々の父親』
配信：Netflix
インディアナ州の不妊治療の名医ドナルド・クラインが、10年以上にわたり自分の精子を人工授精していたという信じがたい事件を取り上げた『我々の父親』。
子どもを授かりたいと藁にもすがる思いで病院を尋ねた女性たちに同意なしで治療を行い、数え切れないほどの自分の子どもを出産させていたという実態を暴いた衝撃作です。
父親がクライン医師だと知らずに育った女性は、ある日軽い気持ちでDNA検査キットを試したところ、小さな町に兄弟姉妹がたくさん存在するというがいることを知ります。その数は確認されているだけで100名以上。クライン医師が「正しい行為であった」と自分を肯定する背後にちらつく宗教思想や、その後の裁判についても触れています。
プロデューサーは、『パージ』シリーズなどのホラー映画プロデューサーとして有名なジェイソン・ブラム。ホラー映画よりも恐ろしい現実がここに…。
『アメリカン・マーダー：一家殺害事件の実録』
配信：Netflix
事件が起こったのは、コロラド州の田舎町。ある日突然、妊娠中の母親と幼い2人の娘が失踪。幸せな家族の想像を絶する結末が描かれている『アメリカン・マーダー：一家殺害事件の実録』は、再現ドラマが一切使用されていない実録作品です。
妻のシャナンはSNSが大好きで、毎日のように家族の幸せなビデオや写真を投稿していたこともあり、この事件に対する世間からの注目度も高まりました。
真実に迫るため、妻と友人のチャット内容や警官のボディカメラ映像など実際の映像や音声が使用されており、まるでその場にいるかのような生々しさを感じられます。
犯人は？そして動機は？次第に明るみになる真実に驚愕するはず。
『エリーゼ・マツナガ：殺人犯が抱える心の闇』
配信：Netflix
ブラジル、サンパウロで起こったバラバラ殺人事件。この残虐な行為をしたのは、“妻”だった――。
ブラジルで誰もが知る大手食品会社「Yoki（ヨキ）」の創業家に生まれた夫のマルコス・キタノ・マツナガが、頭部を撃たれたのち7つに切断され遺棄されたという残虐事件に迫った『エリーゼ・マツナガ：殺人犯が抱える心の闇』。同作品はタイトル通り、夫を殺害した妻の生い立ちや複雑な事情にもフォーカスしています。
世にも恐ろしいこの事件は、殺されたマルコスが裕福であることとYoki社の売却が決まっていたことから、最初は誘拐が疑われます。しかし、夫を銃殺した妻が切り刻んだ遺体をスーツケースに詰めて運び出し、遺棄したという衝撃的な真相が明るみになり、マスコミが飛びつく大ニュースに。
元性産業従事者だった美女エリーゼと、大企業の御曹司の“ワケあり”な関係と凄惨な事件の背景、そして残虐な行為をした理由とは？ 加害者のエリーゼが当時を振り返ってカメラに語りかける映像は、犯罪ドキュメンタリー作品でも貴重。
『ビクラムの正体：ヨガ、教祖、プレデター』
配信：Netflix
金色に輝くロレックスに黒い下着というきわどい格好がトレードマークの「ビクラムヨガ」の創始者、ビクラム・チョードリー。『ビクラムの正体：ヨガ、教祖、プレデター』は、ヨガの第一人者として成功をおさめたビクラム・チョードリーが、実は性暴力を繰り返す犯罪者だったという事実に迫った作品。
ビクラムはインドに生まれ、ニクソン大統領の病気を治したことをきっかけにアメリカ永住権を獲得。その後、室温40度、湿度40％以上のスタジオで、世界共通の26種のポーズで行う「ビクラムヨガ」と呼ばれる斬新なスタイルを編み出し、ライセンスビジネスとして世界に展開します。
しかしその裏では、お互いを“ファミリー”と呼び合い仲間意識を高め、暑い室内でヨガ指導を行い生徒たちをマインドコントロールし、性暴力に及ぶ悪のリーダーと化す。2013年にセクハラなどの性暴力、賃金の未払いなど複数の民事訴訟を受けるなど、ビクラムの転落人生が描かれています。
ビクラムを崇拝し、極限までトレーニングに励む異常な生徒たちの姿はまさにショッキング。
『あるアスリートの告発』
配信先：Netflix
アメリカの女子体操業界を揺るがした『あるアスリートの告発』は、アスリートの#MeToo運動とも言えるほど多くの選手を苦しめた性暴力事件と腐敗した連盟の実態を取り上げた作品。
米国体操連盟のチームドクターを29年間続けていたラリー・ナサール医師とその他複数の関係者は、その立場を利用して、まだ若くて従順な生徒たちに対して長年にわたり性暴力を行っていたのです。
驚くべき点は、連盟は問題を起こしてきたコーチを厳しく罰せず、選手たちの匿名の訴えは棄却され、ほとんどのケースが警察に届けられず、もみ消されていたこと。
その理由は、健全なイメージやスポンサーの援助を守るためのものでした。勇気を持って声をあげたのは、「体操の女王」と呼ばれる金メダリストのシモーネ・バイルズを含む大勢の選手たち。告発した女性たちは今も心に傷を負い、トラウマに苦しめられるという現実。表で見せる華やかな印象とは裏腹に、性犯罪が蔓延っていた体操連盟の実態が明らかに。
『インターネットで最も嫌われた男』
配信先：Netflix
＜Is Anyone Up?＞という巨大なリベンジ・ポルノサイトを立ち上げ、無許可でトップレスやヌードの写真を公開したハンター・ムーアを取り上げた、3話構成の『インターネットで最も嫌われた男』。
このハンター・ムーアという男は、自分を振った女の子の写真を自身のサイトで拡散し、バズったことを機に女性のみならず男性の裸写真と個人のSNSをリンクさせ、誰もが投稿できる掲示板のようなサイトを立ち上げます。彼は炎上商法で注目を集め、グッズ販売と広告で月に13,000ドル（約180万円）も稼ぐ巨大な悪質サイトの運営者となる…。
当時のサイトが「見るのは楽しいが、見られると地獄」と言われているように、サイトに晒された被害者は職を失ったり誹謗中傷に遭うなど生き地獄となります。「リベンジ・ポルノの王様」と呼ばれたハンター・ムーアの悪事は、どのように裁かれたのか――。多くの人生を狂わせた男の記録。
『サバイビング・R.ケリー：全米震撼！被害女性たちの告発』
配信先：Amazonプライムビデオ
90年代に時代の象徴となったR&Bシンガーの帝王R.ケリーが、デビュー当時から約30年間に渡り、ファンの女性たちを軟禁し性的虐待をしていたという事件に迫った告発番組。
マイケル・ジャクソンの名曲「You Are Not Alone」を手がけた天才プロデューサーで、キング・オブ・R&Bとして業界に君臨していたR. ケリー。メロウな曲調とセクシーな歌詞は“Baby Making Music”と呼ばれるほどでしたが、その崇拝されるような立場を利用して未成年を含むファンを洗脳・監禁し、セックスカルト集団の教祖的存在になっていたのです。
声をあげたのは元妻やジョン・レジェンド、被害者とその親族たち50名以上。その勇気ある告発は、犯罪行為を裏付ける証言になりました。この番組がきっかけで、R. ケリーが所属するRCAレコードは契約を解除。その後、性暴力や児童ポルノなど11件の性犯罪で正式に起訴され、2022年6月に禁錮30年の実刑判決を言い渡されました。
『塀の中の少年たちーなぜ彼らは殺人を犯したのかー』
配信先：Amazonプライムビデオ、 Apple TV
未成年で殺人を犯し、終身刑になった犯罪者。しかし、アメリカの連邦最高裁の判断により、2012年に18歳未満への絶対的終身刑への再審請求が可能になったことから、少年時代に重罪を犯した者たちが再審の機会を得る。
その裁判にカメラを密着させたドキュメンタリー『塀の中の少年たちーなぜ彼らは殺人を犯したのかー』は、AmazonプライムビデオとApple TVで配信されています。
被害者の中には何とか死を免れたものの、顔の再建手術を32回も受けるほどの大怪我をした女性も。「もう同じ過ちは繰り返さない」と訴える殺人犯と、法の見直しに反対する被害者家族の悲痛な叫び。更生が可能かどうかを慎重に判断する裁判のシーンでは、あらゆる角度から当時の事件が分析されます。
再犯の可能性がある少年たちに、更生のチャンスを与えるべきかどうか。終身刑は日本でも物議を醸しているテーマですが、無惨に命を奪われた事件の背景と罪を裁く難しさが描かれており、考えさせられる作品です。
