11月23日、『ターミネーター』シリーズや『アバター』など数々のヒット作を生み出してきた、映画監督のジェームズ・キャメロン(68歳)が<GQ>に登場。1997年の名作映画『タイタニック』の制作当時を振り返り、主演を務めたレオナルド・ディカプリオのキャスティングについて「彼はジャック役を逃しかけた」と秘話を明かしました。

今年、公開25周年を迎える『タイタニック』。1998年のアカデミー賞で作品賞と監督賞含む11部門を受賞した名作です。主演を務めたレオとケイト・ウィンスレットは、同作で一躍トップスターに仲間入りしました。

キャメロン監督は<GQ>のインタビューで同作の制作当時を振り返り、当初ローズ役にはグウィネス・パルトローなどの他の俳優を候補に考えていたなかで「ケイトをこの役に起用するのは、あまりに型どおりではないかと心配していた」と告白。

「実は、最初はケイトのことを考えていなかったんです。それまでに歴史作品をいくつかやっていた彼女は、“コルセット・ケイト”として評判になっていました」
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そのときは、ケイトをヒロインに起用すれば“怠惰なキャスティング”だと思われると恐れていたそう。しかし、もちろん、その後に彼女がローズ役に最適だと気がつくことに。そして、その采配は映画史に残りました。

キャメロン監督のインタビューでは、ケイトだけでなく、当時21歳だったレオも危うくジャック役を逃しかけていたことが判明。当時、監督はケイトとの相性をみるため、レオをカメラテストに呼んだことがあると言います。

しかし、この日レオはオーディションだとは知らず、ただの顔合わせだと思っていたそう。

「私は撮影のためにカメラをセットしていました。彼(レオ)はその日がカメラテストだとは知らなかったんです。ケイトと顔合わせをするミーティングだと思っていました」
「私が『隣の部屋に行って、いくつかセリフを喋ってもらうのを撮影しよう』と言うと、彼が『僕がセリフを読むということですか?』って聞いてきたので『そうだよ』答えたら、彼は『僕は読みませんよ』と言いました」

レオのその言葉に、監督が「来てくれてありがとう」と伝え帰ってもらおうとしたところ、彼は「待って。つまり、私がセリフを読まなければ、役をもらえないということですか?」と聞いてきたと言います。

監督が、この作品は2年もの時間を費やす“巨大”なプロジェクトで、間違ったキャスティングで台無しにするつもりはないことを説明すると、レオも納得して渋々カメラテストを受けることになったとか。

「部屋に入ってきた彼の態度はネガティブな感じだったんだけれど、私が『アクション』と言った瞬間にジャックに変身したんです。そして、生き生きと輝くケイトとともにシーンに入り込み、役を演じました」
「暗雲が立ち込めていたところに一筋の光が差し込み、ジャックを照らしてくれたというか。『よし、彼だ』と思いました」
 
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また、キャメロン監督によれば、レオにとってジャックを演じることは「当時の彼がそれまで演じてきた役柄とは異なっていたため、簡単ではなかった」と言います。

あるとき、レオが監督に「脚本にジャックの苦悩や過去のトラウマを加えないか」と提案してきたことがあるそう。監督は「『(彼が)ジャックを演じるうえで頼れる“小道具”はない』と伝えた」と、当時を振り返ります。

「『僕が考えているのはもっと難しいことで、君にはまだ準備ができていないのかもしれない』と言ったんです。それを聞いた途端、レオはこの作品が彼自身にとって挑戦であることを理解したようでした」
「そして、私は自分の間違いに気づきました。私は彼に十分な挑戦の機会を与えていなかったのです」

このときにキャメロン監督は、レオが簡単な演技ではなくむしろ「挑戦」を望んでいたこと、そして難しい役どころを追究するのが彼の本能であることに気がついたそう。

「レオやケイトがいない『タイタニック』を想像してみると、いかにこの作品が儚いものであるかがわかります。大変なことだったんです」