2024年1月7日(現地時間)に開催された、第81回ゴールデングローブ賞授賞式。しかし司会を務めたあるコメディアンが、作品や出席者に対しジョークとして“性差別的な発言”を連発したことで批判が集まっている。

性差別的で不適切な発言を連発

“原爆の父”として知られる科学者の生涯を描いた伝記映画『オッペンハイマー』が、作品賞を含む5部門を受賞し、話題となった第81回ゴールデングローブ賞。

今回の授賞式では、先住民女性の俳優など、これまででもっとも多様性に富んだ受賞者が出た一方、司会を務めたコメディアンのジョー・コイは、オープニングのモノローグのなかで映画『バービー』などに対し、性差別的な発言をしたことで非難されている。

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Christopher Polk//Getty Images

『バービー』で描かれたことが現実に

オープニングのモノローグのなかで、ジョーは映画公開日が一緒で話題となった『オッペンハイマー』と『バービー』について取り上げ、以下のように発言したと<Refinery29>が報じている。

「『オッペンハイマー』はマンハッタン計画に関する、721ページのピューリッツァー賞受賞作品が原作になっており、バービーは大きなおっぱいのプラスチック人形が元になっている」
これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

同作品の監督を務めたグレタ・ガーウィグは首を振り、ケン役を務めたライアン・ゴズリングは顔色ひとつ変えない様子がスクリーンに映し出されている。

ガーウィグ監督による映画『バービー』はジェンダー規範などに立ち向かうエンパワリングなメッセージをもった映画だったことから、視聴者の多くはこのジョークは必要がなかった、もしくは単純に面白くなかったと感じたようだと<Variety>は述べている。

10日に<BBC Radio 4 Today>に出演したカーウィグ監督は、「まあ、彼の言っていることは“間違い”ではない」と語った

「彼女(バービー)は初めて大量生産された、胸のある人形なんだから。この映画は、プラスチックの人形を題材にしたものだから、これまでありそうでなかったんだ。ルース・ハンドラー(元マテル社社長で、バービー人形の発明者)が、自身の娘が赤ちゃん人形で遊ぶのを見ていて気がついたのは、娘は“お母さん”役じゃなくて、大人の女性のままごとがしたいんだってこと」

欧米では社会現象にもなった映画『バービー』だけれど、その本質はジョーにはまったく響いていなかったよう。

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CBS Photo Archive//Getty Images
ゴールデングローブ賞でスピーチをするガーウィグ監督(左)とマーゴット・ロビー

Box Office Mojo>によると世界興行収入は14億ドル(約2000億5000万円)を超え、2023年の最高興行収入を記録した映画『バービー』。なお日本では、“バーベンハイマー”を巡るSNSでの不適切な一件があったことなどの影響もあってか、業績はふるわなかった。

ゴールデングローブ賞では、今年新たに設けられた「シネマティック・ボックスオフィス・アチーブメント賞(興行成績賞)」を受賞。9部門で候補入りする最多ノミネートだったが、作品賞やバービー役のマーゴット・ロビーの主演女優賞の受賞は逃した結果となった。

すべての人がいかに家父長制の影響を受けているか、また現代を生きる女性の苦悩や希望を伝えた同作品のメッセージが、改めて強調されることになったと<Women's Agenda>は綴っている。

テイラーをからかう場面も

「シネマティック&ボックスオフィス・アチーブメント(興行成績賞)」には、テイラー・スウィフトの映画『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』もノミネート。

テイラーも授賞式に出席したが、ジョーに現在の恋人であるNFL選手のトラヴィス・ケルシーとのことをネタにされる場面も見られた。

「ゴールデングローブ賞とNFLの大きな違い? ゴールデングローブ賞では、テイラー・スウィフトのカメラショットが少ないことだね」
これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Taylor Swift gives host Jo Koy a ‘deadly stare’ after ‘unnecessarily rude’ Golden Globes joke
Taylor Swift gives host Jo Koy a ‘deadly stare’ after ‘unnecessarily rude’ Golden Globes joke thumnail
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ジョーのつまらないジョークに対し、SNSでは多くの非難の声が集まっている。

心ない発言に笑う必要はない

時に“ジョーク”という名目で心ない発言を耳にするものの、それに対し笑顔を見せる必要はない。こういった小さなアクションが、性差別や女性軽視発言をする人々に不適切なことだと気づかせるきっかけになっていくはず。