『セックス・アンド・ザ・シティ』でサマンサを演じたキム・キャトラルの主演ということもあり、配信前から注目を集めていたNetflixドラマ『グラマラス』。
同作品に主要キャストとして出演している歌手・俳優のミス・ベニー（24歳）は、トランスジェンダー女性であることを公表している。キャスティングが決定した後に性自認について明かした彼女の提案に寄り添うべく、ドラマ内のキャラクターも共に性別移行をしていくことが 明らかに。
性別移行前にオーディションに参加し…
ドラマ『フラーハウス』ではゲイのキャラクターであるケイシーを演じたこともある、ミス・ベニー。6月22日にNetflixで配信が開始された『グラマラス』では、ひょんなことからコスメ業界の大物の下で働くことになったインフルエンサー志望のマルコを演じている。
同役のオーディション参加時には、性別移行前だったというミス・ベニー。 ＜Time＞のインタビューによれば、8歳頃からすでに「女の子に生まれ変わりたい」と感じていたテキサス州出身のミス・ベニーだったけれど、キリスト教家庭で育っていたこともあり、セクシュアリティや性自認についての葛藤はひた隠しにしていたという。
14歳でロサンゼルスへ逃げるように移住するも、当時の業界の状況からカミングアウトはせずにいたミス・ベニー。19歳頃に『グラマラス』のプロデューサーの声をかけられ、オーディションに参加することに。その際に、いつものように本来の自分を隠していたところ、人生で初めて「自分らしく振舞ってほしい」と言われたという。
2019年2月にドラマが決定したときの動画をSNSに投稿している。「私を目立たないところから引き抜いてくれてありがとう」とプロデューサーたちへメッセージを送っている。
「最悪の結末も覚悟していた」
見事に役を射止めるも、様々な原因から同ドラマの制作は予定通りには進まず。そうして約3年ほど前に、ミス・ベニーは性別移行（トランジション）に踏み出すことを決意。当時は公にしていなかったものの、ドラマの制作に進展があったという報告を受けたことで、「オーディション時は男性役での起用だったのに、今の自分は男性ではない」と不安を感じたという。
そこでミス・ベニーは、プロデューサーに自身の状況を説明し、ドラマにも反映できないか相談することに。
「制作側の当初の予定とは違うことは分かっていました。でも、もし私と並行してマルコにも性別移行を反映できたら…と思って、提案してみました。最悪の結末もありえると覚悟のうえでした」
「実際に相談してみると、社会にとって有意義な作品にしたいという根本の想いが共通していたんです。エグゼクティブプロデューサーとも会い、3人でNetflixにこのアイデアを提案することになりました。二人は私の人生を変えてくれただけでなく、私を守り、私が伝えたいことを伝えられるようにサポートしてくれたんです」
また、トランスジェンダーであることがドラマの軸とならないことも重要だと感じているという。
「（マルコの性別移行は）偽りのないストーリーだと感じます。（中略）これは、見ている人を驚かせるための展開ではないんです。若きクィア※が初恋や失恋をし、キャリアの成功と失敗や若い大人として様々なことを経験し、同時に人生のバックグラウンドでアイデンティティに気付くのです」
※クィア：主にヘテロセクシャル（異性愛）や、シスジェンダー（生まれたときに割り当てられた性別と性自認や表現が一致している人）以外の性的指向や性自認を表す包括的な言葉。
マルコの役柄について、「クィアでジェンダー・ノンコンフォーミング※な男性。人生の行き止まりにいると感じていたところ、メイクの世界で伝説的な女性マドリンと出会う。人生に自分が求めていることを探し、自分が誰なのか、クィアの本当の意味を理解するチャンスがやってきた」と、公式YouTubeチャンネルでも説明されている。
※ジェンダー・ノンコンフォーミング：世間で受容されているジェンダーの規範に異議を唱える人、あるいは、覆そうとする人や物すべてを指す包括的な概念
そんなマルコを演じたミス・ベニーへ、エグゼクティブプロデューサーの一人であるキャメロン・ターロウは、自身のInstagramでの投稿を通して次のようにメッセージを送っている。
「スクリーン上もそうでない時も、あなたは常にアイコニックでした。私たちが目撃してきたあなたの卓越した才能を、ようやく世界の人に見てもらえるときがきたことに感謝しています。時に人生には、心に存在を刻まれるような忘れられない人物に出会うことがあります。ミス・ベニーもその一人。誰よりも優しく、あたたかく、思いやりを持ったあなたは本当に美しいです」
