イギリスの大手ドラッグストアチェーン「ブーツ」で、バイブレーターを購入できることをご存じだろうか? その理由に、性的な行為が“ウェルネス(心身ともに健康な状態)”のために必要なものとして、広く受け入れられるようになったことがある。

そうした理解が深まったとみられる一方で、避妊や性感染症予防、性的同意を含む「セクシュアル・ヘルス(Sexual Health)」については理解や変化が追いついていないという現状も。

コンドームは男性だけのもの?

バイブレーターなど、セクシュアル・ヘルス&ウェルネス関連の製品を提供する「スマイルメーカーズ(SmileMakers)」は、バイブレーターを買うようになった女性たちがコンドームを買おうとしない理由について明らかにするため、小売業者と消費者を対象に調査を行った。

その結果明らかになったのは、多くの女性たちがいまもコンドームを自分で購入することを「恥ずかしい」と思っていること。そして、それは一部に「メーカーのマーケティング方法に原因がある」ということ。

two young women holding condom
Megan Madden / Refinery29 for Getty Images//Getty Images

多くのコンドームは、男性向けの製品として販売されている。これについて「スマイルメーカーズ」のブランドディレクター、セシル・ガスノー氏は、より多くの店舗で、女性向けの商品として販売されるものに変えていくべきだと指摘。そうすることが、コンドームを買うことに対する偏見をなくし、「“恥ずかしいものではない”という考えを一般的なものにしていくことにつながります」という。

ロンドンの「ヴァジャイナ・ミュージアム」の創設者、フローレンス・シェクター氏もまた、偏見を指摘。特にシスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している人)かつ、ヘテロセクシャル(異性愛者)の人たちの間では、「女性蔑視といえる偏見がはびこっている」という。

「避妊は“女性の責任”と考えられているためです。特に、避妊に関する選択肢の大半が、子宮を持つ人向けに作られていることが偏見の原因です」

コンドームの重要性は理解されているはずだが…

コンドームは、妊娠を防ぐだけでなく性感染症(STI)の予防においても重要なもの(イギリスでは淋病の感染者が急増しており、軽視できない問題になっている)。だが、その重要性をさらに高めているのは、避妊におけるその有効性だといえる。

避妊に最も効果的なのは男性器用のコンドームで、正しく使用すれば成功率は98%にのぼる。女性器用(「フェミドーム」とも呼ばれる)はやや低くなるものの、それでも95%となっている。

young beautiful coupl in underwear lying on bed
vadimguzhva//Getty Images

このように明らかに重要なものであるにも関わらず、コンドームを買ったり持ったりすることを多くの女性たちがためらってしまう原因は、メーカーによるマーケティングだけに留まらない。

SNSで「女性がコンドームを持っていること」について調査してみると、2023年の現在でも、どういうわけか男性たちの大多数が、それは女性のセクシュアリティについて、何か否定的なものを暗示する「警戒すべきサイン」だとみているようだ。

もうひとつの理由は、先述のガスノー氏の指摘のとおり、「コンドームの宣伝の仕方」だと考えられる。大半のブランドが、マーケィングにおける対象を男性としている。広告のキャッチフレーズに使われる言葉も、「パートナーのために男性が購入する製品」であることを示唆するものになっている。

セックスポジティブのインフルエンサーであるリアン・ヤウ氏も、女性がコンドームを持つ重要性について次のように説明している。

「コンドームを所持するのは常に、ペニスがある人でなければならないという思い込みがあります。女性たちもコンドームを常にストックしておくべきです。それは、セクシュアルへルスや避妊に気を使っていることを示すものであり良いことなのです」

ヤウ氏はさらに、自分がコンドームを用意していないことから、「コンドームなしのセックスに応じなければいけない」というプレッシャーを感じる状況に追い込まれる可能性もある、と警告。

シェクター氏もまた、「女性が購入することに対しては“ふしだら”などといった見方があり、偏見はまだまだ根強い」と指摘した上で、次のように述べている。

「最も重要なのは、こうした偏見に対処することです。避妊を“すべての人”が責任を負うものに変え、無料のコンドームをできる限り多くの場所で入手可能なものとし、STIに関する偏見と闘い、より効果的な避妊方法についての研究を行うことで、実現することができます」
guy holding condom pack in hand, first intimacy, protection and prevention
Motortion//Getty Images

前向きな変化も

ただ幸いなことに、こうした状況にも変化は見えはじめている。フランスを拠点に各国で店舗を展開するコスメ専門チェーン「セフォラ」は、ウェルネス関連の商品としてセックストイを販売しており、コンドームの取り扱いも開始する予定だという。

ガスノー氏は、こうした変化によって、今後コンドームが女性たちにとってより気軽に入手できるものになることを期待している。

そのほかのブランドも、肌の色に近くより自然な感じを受けるものや、生分解性の素材を使用した環境にやさしいものなど、魅力的な選択肢を増やすための製品開発を目指している。

STI検査を専門とするイギリスのヘルステック企業「アイプレイセイフ(iPlaySafe)」の共同創業者ビアンカ・ダーン氏は、コンドームについてこう述べている。

「いかなるジェンダーでも、平等に責任を負うべきものです。健康のための必需品であるという確信をもって、女性はコンドームを持っておくべきです」

避妊や性感染症予防、性的同意を含むセクシュアル・ヘルスはセクシュアル・ウェルネスの核心であり、バイブレーターを買うのと同じように身近なものにする時が来たと言ってもよいのかもしれない。

※タイトルの「タブー視される原因」の表現を「偏見がつきまとう原因」に修正いたしました。また、記事内の「身近なものにする時が来たのだ」の表現を「身近なものにする時が来たと言ってもよいのかもしれない」に修正いたしました。(2023年7月25日)

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From COSMOPOLITAN UK