ハンドウォッシュだけでなく、洗顔にも使える「固形石けん」。コスパの良さや地球への優しさから支持する人が少なくありません。

本記事では「洗顔フォームとの違いは?」「 どのような石けんを選べば良い? 」など、固形石けんにまつわる疑問を一般社団法人 日本化粧品検定協会で代表理事を務める小西さやかさんに伺いました。


【INDEX】


洗顔フォームと固形石けんの違い

「メーカーや製品によって差はありますが、一般的に固形石けんは洗浄成分をメインとした石けん成分からできているもの、チューブ型は洗浄成分に保湿成分がプラスされたものです」と、小西さん。

さらに、固形石けんには2つの種類があるのだとか。

「固形石けんは、製造法の違いによって『枠練り』と『機械練り』の2種類に大きく分けられます」

枠練り

石けんの原料となる成分・石けん素地に香料や色素などを加えて枠に流し込み、長時間かけ冷やして固めたもの。その後、製品の大きさに合わせて切断、自然乾燥して出来上がります。

機械練り

最初に石けん素地を機械でチップ状(またはペレット状)に裁断して乾燥させるのが特徴。十分に乾燥したら香料、色素などとともに練り混ぜ、機械で棒状に押し出したものが切断・型打ちされて製品が完成します。

枠練り石けんは「保湿力が高いため、洗顔後の乾燥やつっぱり感が少なく、しっとりした洗い心地」と、小西さんは説明。

「保湿成分としてグリセリンを多く配合しているため、保存しているうちに水分が失われ変形してしまうことも。そのため保存方法に注意が必要です」
「一方の機械練り石けんは90%以上が洗浄成分なので、肌のザラつきや角栓が気になる人におすすめです」
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sanatgen//Getty Images

固形石けんを使うメリット

固形石けんを洗顔に使用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

肌と環境に優しい

石けんの洗浄剤は生分解性が高く、肌に残っても自然分解されると言います。

「界面活性剤が長時間残る心配がありません。肌にも環境にも優しく使用できます」

肌がツルツルになる

肌のざらつきが気になる人にも固形石けんがおすすめだとか!

「石けんは油脂や脂肪酸にアルカリ性物質をプラスしたもの。元々弱酸性である人の肌は石けんで洗うと一時的に弱アルカリ性に傾きます。そうして角質やざらつきが取り除かれることで、肌はツルツルに」
「特に機械練り石けんは洗浄力が高いため、洗顔フォームでは取れにくい毛穴の角栓汚れもキレイに落とすことができます」

持ちが良い

コスパに優れているところも嬉しいポイント。

「機械練り石けんは型崩れしにくく持ちが良いのでコスパも◎。製造コストが安いので、比較的低価格で販売されることが多いです」
  
Karl Tapales//Getty Images

固形石けんの選び方

様々な種類がある固形石けん。どのように選べば良いのでしょうか? 小西さんは「まずは枠練りと機械練りを使い分けましょう」とアドバイス。

「枠練りは保湿成分が配合されているので、乾燥や小じわが気になる人、敏感肌の人におすすめです。ニキビや肌のザラつき、毛穴汚れが気になる人は機械練りを。枠練りは必ずパッケージに『枠練り石けん』と表記しなければならないので、記載があれば『枠練り』、なければ『機械練り』と見分けることができます。そのうえで、肌質やトラブル別に+αの成分を配合した石けんを探してみてください」

肌タイプ別

乾燥肌

洗顔後もうるおいをキープしてくれるセラミドや、泡を洗い流しても保湿成分が肌に残るリピジュアを配合したものがおすすめ。

脂性肌

皮脂をしっかり落としたい人は洗浄力が高いラウリン酸配合のものを。不要な角質を取り除くフルーツ酸(AHA)も◎。

敏感肌

肌の炎症を抑え肌荒れを改善してくれるグリチルリチン酸ジカリウムシカ(ツボクサエキス)ドクダミエキスなどの成分が配合されたアイテムを選んでみましょう。

混合肌

混合肌の人のなかには、肌に油分が多いけれど水分は少ないという状態の人も。Tゾーンに機械練り、Uゾーンに枠練りなど使い分けて。

悩み別

毛穴汚れ

角栓の7割はタンパク質、3割は脂質と言われています。そのため、毛穴の汚れや目立ちが気になる人はタンパク質分解酵素パパインと脂質分解酵素リパーゼの両方が入っている石けんをチェックして。

ニキビ

殺菌作用があるサリチル酸イオウなど、ニキビ改善効果がある有効成分が入ったものがおすすめ。

くすみ

より明るい印象の肌を目指すなら、余分な角質を落とすスクラブ入り、シミやソバカスを防ぐビタミンC誘導体入りやアルブチンなどのトーンアップに有効な成分が配合された製品を。

  
Yulia Panova

用途別

用途によっては間違った石けんを使うことが肌トラブルの引き金に。ダブル洗顔や「石けん落ちメイク」を落とすのに使う際など、場面により目的に合ったアイテムの選び方を小西さんに聞きました。

ダブル洗顔に使う

「2回目の洗顔なので、できるだけ洗浄力は控えめに。オイルやジェルのクレンジングを使用する場合は枠練り石けんを選びましょう。クレンジングクリームなどを使って、クレンジングが肌に残っていると感じるなら機械練り石けんを」

「石けんで落ちるメイク」を落とす

「『石けんで落ちる=洗顔フォームでも落とせる』と勘違いする人が多いのですが、これは間違い。弱アルカリ性の石けんを使用し肌がアルカリ性に傾くことでメイクが落ちるため、弱酸性の製品で『石けん落ちメイク』を落とすことはできません。必ず弱アルカリ性の石けんを使用しましょう」

体と顔の両方を洗う

「ボディ用の石けんは洗浄力や香りが強いものが多いので、顔に使用するのはおすすめしません。どうしても同じもので洗いたいなら、顔用の枠練り石けんで体を洗いましょう」
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Victoria Bee Photography//Getty Images

固形石けんで洗顔する際の注意点

ここからは固形石けんで洗顔をする際の泡立て方や洗い方、すすぎ方など、正しい方法を小西さんがレクチャー!

しっかり泡立てる

  1. 手のひらをお湯で濡らす
  2. 石けんを手のひらで挟んで転がす
  3. 手のひらにできた泡を洗顔ネットでさらに泡立てる
「洗顔の際、重要なのは泡の量よりも質。泡が細かければ細かいほど毛穴の汚れも落ちますし、肌が乾燥しづらいと言われています。また、特に枠練り石けんは泡立ちにくいものが多いため、洗顔ネットの使用をおすすめします」

「ただし、洗顔ネットの中に石けんを入れて泡立てるのはNG」と、小西さんは強調。

「洗顔ネットに石けんを入れると、表面がネットの網に削られることで泡のなかの界面活性剤の量が増え、肌が乾燥しやすくなります。必ず最初に石けんを手のひらで転がし溶かしてからネットを使って泡立てましょう」

では、旅行先に持っていくのを忘れてしまった場合など、洗顔ネットがないときはどうすれば良いのでしょうか?

「お湯で手のひらを濡らしたら、石けんを2~3回転がしましょう。次に一方の手のひらを上に向け丸めて凹みをつくってください。そして、もう片方の手で5本の指先を集めるように軽く丸め、それを泡立て器のようにして丸めた手のひらの泡に空気を入れながらさらに泡立てます」

泡のクッションで洗う

「手のひらと肌が触れないように『泡で洗う』ことを心がけましょう。石けんは成分のほとんどが洗浄成分なので、泡パックはしないほうが◎。ダブル洗顔後は軽めに、日焼け止めやBB、石けんで落とせるメイクをオフする場合は、何度か泡でクルクルしながら洗いましょう」

ぬるま湯ですすぐ

「お湯は32度~34度を目安に。生え際や小鼻の周り、目頭など凹み部分に泡が残りやすいので注意して。石けんの泡は簡単に落とせるので、5回ぐらいすすげばOKです」

湿気を避けて保管する

「水気のあると菌が繁殖するため、使用後は水に浸からないように注意しましょう」と、小西さん。

「機械練り石けんは水に触れないよう、ソープトレイなどにおいて乾かして。一方枠練り石けんは成分のグリセリンが蒸発しやすいため表面についた泡を取り除いた後にラップで密封し、湿度の低いところで保管しましょう」
「石けんを小さくカットして使用する人がいますが、小さくなると泡立ちが悪くなるためそのままの形状で使うことをおすすめします」

肌にはもちろん、環境にも優しい固形石けん。肌質や用途にあった石けんを正しく使って、素肌に磨きをかけて!

今回お話を伺ったのは…

一般社団法人日本化粧品検定協会 代表理事
小西さやかさん

 
小西さやか
北海道文教大学客員教授、東京農業大学 客員准教授、日本薬科大学 招聘准教授、更年期と加齢のヘルスケア学会 幹事、各種協会顧問を歴任。科学修士(サイエンティスト)としての科学的視点から美容、コスメを評価できるスペシャリスト、コスメコンシェルジュとして活躍中。著書は『「私に本当に合う化粧品」の選び方事典』(主婦の友社)など13冊、累計57万部を超える。

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