ペースの速い都会の生活はエキサイティングだけれど、肌にとっては過酷なもの。大都市で暮らす人の肌は、車の排気ガスや上空を飛ぶ飛行機、工事の粉塵などに包まれ、深刻な打撃を受けています。
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大気汚染が与える肌への影響
大手化粧品会社プロクター・アンド・ギャンブルの調査によると、都市部に住む女性の肌は、都市部以外の地域に住む女性よりも10%早く老化する傾向にあるそう。
フェイシャルエステティックの臨床皮膚科医であるニーナ・バル氏は、こう話す。
「大気汚染は、様々な種類の汚染物質と微粒子が混ざり合った、最悪のものです」
「ロンドンのような大都会に住む多くの人にとって、大気汚染は避けられないものなので、なるべく肌を露出しないようにし、ダメージを受けたら修復し、可能な限り保護することが重要です」
「当クリニックでは、都会に住んでいたり、都会で働いていたりする患者さんで、治療が難しい慢性的な炎症を起こしている症例を多く見かけますが、何よりも予防が治療に勝ることはありません」
現在、5600万人以上もの英国人が英国の都市部に住んでおり、湿疹だけを見ても、たった4年間で40%以上も増加しているという調査結果が出ているそう。そのため、様々な皮膚疾患が急増しているのも不思議ではない。
車の窓ガラスを厚く覆っている黒い膜や、街の歩道の色を見れば、私たちの肌がどのような状況に置かれているのか、おおよその見当はつくはず。しかし、実際にはその汚れとは何なのだろうか。
科学者によると、交通公害には、PM(シミやしわを増やすことで知られている)、二酸化窒素(NO2として知られ、炎症を引き起こし老化を早める)、PAH(赤みや炎症を引き起こす多環芳香族炭化水素)といった微小粒子が含まれているそう。
大気汚染問題は英国に限ったことではないが、首都ロンドンの大気汚染は世界で最も高いレベルに位置する。学術誌『Journal of Investigative Dermatology』に掲載されたある研究によると、ドイツと中国の人々は、比較的小さな汚染の上昇で、頬にできるシミの数が25%増加したという。
しかし、2016年の第1週だけで年間規制値を超えてしまったことでも明らかなように、ロンドンの大気にはかなり高レベルの二酸化窒素が含まれている。
これが私たちの肌にとってよくないニュースであることは、科学者でなくとも察しがつくはず。皮膚科医であり外科医でもあるアンソニー・ロッシ博士もこの考えを認めており、「大気汚染や炭化水素、スモッグは、コラーゲンを破壊し、皮膚の脂質層を酸化させるため、皮膚のバリア機能を著しく低下させます。そのため、水分を保持できなくなり、感染や細菌に対しよりぜい弱になってしまいます」と話す。
「また、粒子状物質と紫外線が肌の老化を著しく促進するという研究結果もあります。地球温暖化によりオゾン層が破壊され、紫外線がより強力になったことが原因です」
つまり、肌の第一防御ラインがぜい弱な状態では、乾燥や湿疹、敏感肌、老化の加速などが起こりやすい状態になっているということ。
バル氏は「このレベルの肌ダメージは慢性化することが多く、治療が難しいのです」「毛穴の大きさは汚染物質より大きいことが多いので、小さな粒子状の物質が皮膚に入り込んでしまいます」と説明する。
多孔質な器官である皮膚は、タバコの煙などの有害物質を吸収してしまうという欠点があるが、適切なスキンケアによって保護することも可能。バル氏は、私たちの肌は有害物質にさらされ続けているため、その影響を元に戻すのは難しいが、トンネルの先には光があると指摘している。
「まずは、高度な医療用のスキンケアを自宅で行うことからスタートし、必要であれば、クリニックで光治療やケミカルピーリングなどの治療を行います。しかし基本的には、自宅で定期的にスキンケアを行うことが重要です」とバル氏は説明する。
セラミドや脂肪酸、ナイアシンアミド、ヒアルロン酸、グリセリン、パンテノールなどの保湿成分は、汚染を撃退するための強力な皮膚バリアを構築してくれるため、私たちの肌にとって強い味方となる。
「医療用のビタミンCや、抗酸化力の強い美容液は、汚染大気中のフリーラジカルによるダメージから肌を守り、元に戻す可能性もあります」というのがバル氏の見解だ。
大気汚染から肌を守る方法
1. 汚れを完全に洗い流す
ロッシ博士は、「大気汚染にさらされた1日の終わりの洗顔は、とても重要です」「汚れや汚染物質を取り除きつつ、肌を乾燥させないための二相性オイルクレンザーは、強力な皮膚バリアをキープするのに最適です」と語る。
2. 日焼け止めを塗る
「UVA(紫外線A波)はコラーゲン繊維にダメージを与えるため、これが大気汚染と結びつくとコラーゲンの生成が急激に減少し、肌の健康が損なわれることになります」とバル氏は警告している。
3. サプリメントを飲む
「ダメージからの回復を助けて弾力性を高め、顔色をよくするために、経口投与が可能なコラーゲンサプリメントを、毎日の習慣に加えてみるのもおすすめです」とバル氏は提案。
4. 肌を清潔に保つ
バル氏はまた、こう続ける。
「特にバリア機能がすでに低下している場合は、細菌から肌を守ることが最も重要です」
「マスクを着用するときは、常に清潔に保ち、定期的に交換することが大切です」
5. 夜のスキンケアをレベルアップする
「私たちは夜間に細胞過程を修復しなければならないため、高性能な成分を選ぶことがとても重要です」とロッシ博士は説明する。
肌に潤いを閉じ込める濃厚な美容液を選ぶなど、自分にあったアイテムを見つけて、しっかりケアを続けよう。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Translation: Masayo Fukaya