「セルフケア」という言葉の語源の一つとされるのが、黒人の活動家で詩人のオードリー・ロードが綴った次の一文。「自分をいたわることは自己満足ではなく、自衛であり、政治的な戦いである」--つまり、セルフケアとは自分が自分であることを大切にし、守ること、と言えます。

女優で歌手のキキ・パーマーが影響を受けたのも、こうしたセルフケアの考え方。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)によるホルモンの異常でニキビに悩まされてきた彼女は、これも黒人女性がこうむってきた医療上の不平等の一環だと言います。

本記事では、彼女のニキビ悩みとの闘いや自分に合ったスキンケア方法、そして彼女が考えるセルフケアの意味について、 <コスモポリタン アメリカ版>からお届けします。


【INDEX】


語り:キキ・パーマー

毎日のスキンケアはシンプルに

ニキビを改善する目的でいうと、どちらかというと食生活に気をつけています。 なので、スキンケアに関しては、毎日のお手入れはすごくシンプルにしています。使用するのは、ビタミンCの入ったフェイスウォッシュと日焼け止めだけなんです。

私は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されています。なので、ニキビはどうしてもできてしまうもので、避けられないものとして対処していく必要があります。

たとえば「特定の製品ですぐにニキビが治ることを期待しない」とか。ニキビの原因は体の内部にある場合もあるから、スキンケアについては控え目にしてきました。食べ物かもしれないし、ホルモンのアンバランスかもしれないので。

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PCOSの診断後に変えた食生活

GI値(食後血糖値の上昇を示す数値)の低い食品を積極的に食べるようになりました。私の場合は、バナナなどのアルカリ性の食べ物でも、血糖値を上昇させてニキビに影響したり、PCOSの症状を悪化させたりすることもあったからです。

ダイエット(食生活)を管理すると聞くと、その響きから食事制限を思い浮かべる人もいるかもしれません。でも、そうではなくて、望ましくない食生活を改善したり、バランスを良くすることが大切だと思っています。

そして覚えておきたいのは、すべての人に合った食生活なんて存在しないということ。誰もが、自分に合った食生活を見つけ出す必要があるんです。

私はPCOSと診断されたことをキッカケに試行錯誤を繰り返し、 自分の体に合っているものとそうでないものが分かるようになってきました。そのおかげで、以前より食生活が自由になったとさえ感じます。

人種差別と医療における不平等性について

黒人コミュニティの人々は、医療コミュニティに耳を傾けてもらっていないことが多い気がします。それこそ私が明るみに出したいこと。

黒人コミュニティに属する多くの人々は、たくさんの専門家に診てもらう経済的余裕なんてない。私の場合は、両親が多くの犠牲をはらってくれたおかげで、5人の医者に診てもらい、やっとPCOSの症状を発見することができました。

なぜ今も、医療差別が起きているのかわからない。一番の問題がどこにあるのかは分からないけど、誰もが声を上げられる社会であるべきことは分かります。

健康に気を遣うこと=セルフケア

私にとって、パンデミックを経てのライフスタイルの変化は、セルフケアの一環だと思っています。だから、料理の仕方を学んだり、楽しく過ごしたり、ジムに行くなど、ストレスを溜めないためにしていることにエネルギーを費やすことは気になりません。

問題は、黒人にはそれができなかった時代があったということ

私は『Alice』という映画に出演したのですが、同作の中で俳優のコモンが演じるキャラクターが育った60〜70年代は、ブラック・パワー運動の時代で、彼はたくさんの(公民権運動の)リーダーたちが亡くなるのを見ました。そこに、私が演じるアリスというキャラクターが出てくるのですが、彼女は奴隷でいる生き方しか知らないんです。

だから彼女が自由になったとき、“自由”という概念は、他のキャラクターにとってのそれよりずっと重かった。コモンが演じるキャラクターにはすでに、アフリカ系アメリカ人が味わう、自由にともなうあらゆる困難についての知識があったから。でも、キャラクターを演じる中で気づいたのは、そういう闘いや信念を守ることは、自分が投げ込まれた状況に耐えるよりもずっと意味があるということ。

だから私は何でもやるつもりです。自分のためにできる全てのことをします。アリスはジムに行けなかったけど、私はジムに行く。アリスができなかったからこそ、私は健康を大切にします。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN US