ストレス軽減や安眠、てんかんや関節リウマチなどの治療の一つとして、世界中で注目されているCBDオイル。CBDオイルとは、大麻に含まれるカンナビノイドの1つであるカンナビジオールと、ヘンプシードオイルやココナッツオイルなどの植物油を合わせたもの。

この注目のオイルの、科学的に証明されているメリットやおすすめの使用法、副作用についてなどを、CBDを販売するの薬剤師サルタン・ダジャニさんと、プロラグビー選手でCBDを発売する会社の共同設立者であるグレイソン・ハートさんに、<ネットドクター>が聞いてきました。

※日本では、THCが含まれていない、茎などから抽出された製品のみ法律で認められています

※大麻草の成熟した茎又は種子以外の部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造された CBD 製品は大麻に該当します(参考:厚生労働省


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CBDは大麻と同じなの?

CBDは大麻に含まれるカンナビノイドという104種の化合物の1つで、天然由来の成分。

最もよく知られるカンナビノイドであるテトラヒドロカンナビノール (THC)と違い、精神活性作用はないため、よく大麻でイメージされる“ハイな状態”になることはないそう。むしろ、様々な健康上のメリットが報告されているのだとか。

CBDオイルにはどんな働きがあるの?

CBDオイルが影響を与えるのは、体内のエンドカンナビノイド・システム。ダジャニさんの解説によると、これは睡眠や食欲、痛み、免疫システムを含む生体機能を維持するため、様々なカンナビノイドと相互作用する受容体のネットワークのことで、CBDオイルは、この中でも主にCB1とCB2という2つの受容体に関わるのだとか。

「CB1は神経系や脳に集中しており、特に記憶や認知、感情といった精神機能や、運動協調性に関わります。CB2は、中枢神経や免疫システム全体に見られます」とダジャニさん。

マリファナの主な成分であるテトラヒドロカンナビノール (THC)は、人を“ハイ”にさせる化合物ですが、CBDはこれとはやや異なる化学構造を持つため、CB1とCB2に対する作用も異なり、人体への効果にも違いが出るそう。

CBD もTHCもCB2受容体に作用するけれど、CB1に作用するのはTHCだけ。つまり、この2つが結びつくと、脳に信号が送られて“ハイな状態”になるというわけ。

「研究によって、CBDはCB1と結びつかないことがわかったので、ストレスや不安、痛みのためにCBDオイルを使用している人がハイになることはありません」

CBDオイルのメリットと使用法

ダジャニさんによると、CBDオイルはアルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、クローン病、関節リウマチ、糖尿病の合併症などの治療に使用できないか、研究されている最中とのこと。

現在のところ、科学的な裏づけがあるとされる効果は以下のとおり。

1.慢性的な痛みを緩和する

CBDオイルには、脳における痛みの知覚を軽減する鎮静効果があるそう。

「動物実験によって、CBDには抗炎症作用もあり、線維筋痛症などの慢性的な筋肉の痛みにも効果があることがわかっています」とダジャニさん。

「2012年の『Journal of Experimental Medicine』に掲載された報告では、CBDオイルは慢性的な痛みの治療に効果を発揮すると結論づけられています」

2.がんによる症状を緩和する

高用量の医療用CBD製剤は、がん治療にも効果があるという研究結果が複数あり、吐き気を抑え、食欲を増進し、睡眠の質を上げることに成功したという報告が出ているのだとか。

3.不安を和らげる

臨床試験により、不安の軽減に効果があることが判明したCBDオイルは、恐怖や不安に苦しむ人にとっての自然療法になりうるそう。

「不安の軽減に関わるのは、CB1やCB2受容体ではなく、5HT1-A受容体とCBDの相互作用のようです。それは、ベンゾジアゼピン受容体に作用するジアゼパムなどの抗不安薬とは違います」

社会不安障害を持つ人々へのダブルブラインドテスト(医師も患者も処置内容を知らない試験方法)では、CBDオイルを処方された人々が模擬スピーチを行った結果、「不安、認知機能障害、スピーチすることへの不快感、警戒レベルが、著しく軽減していました」とダジャニさん。

4.天然の抗鬱剤になる

CBDの抗鬱作用は動物実験で広く証明されており、気分や社会的行動を調整する神経伝達物質のセロトニンに作用すると見られているのだとか。

また、子どもにおける心的外傷後ストレス障害(PTSD)を安全に緩和する効果も報告されており、その理由として「CBDが完全に無添加だからです。処方薬への依存がもたらしうる副作用がないんです」とハートさんは解説します。

5.神経保護作用がある

エンドカンナビノイド・システムに作用するCBDオイルは、神経疾患(特にてんかんや様々な硬化症)にも効果を発揮するそう。

「とりわけ、CB1やCB2受容体と結びついて中枢神経に働きかけ、鎮静作用をもたらすとされています」

6.ニキビの治療にも

CBDオイルは免疫システムに働きかけ、炎症を軽減することから、ニキビへの効果も期待できるそう。「ニキビ、湿疹、かゆみ、汗疹、乾癬などの肌の炎症に効くものとしてカンナビノイドは研究者の関心を集めています」とダジャニさん。

「研究はまだ予備的段階ですが、前臨床研究では、抗炎症作用、かゆみ止め作用、アンチエイジング作用が証明されています。これは、エンドカンナビノイド・システムとの相互作用を含む、CBDの多様なメカニズムによるものです」

7.心臓にも効果がある

ダジャニさんいわく、CBDはストレスに関連する白血球の生死や移動、血小板凝集に影響を与えることにより、心臓血管系ストレス反応を軽減するとのこと。

「高度にランダム化されたクロスオーバー試験で、9人の健康な男性ボランティアにCBDを急性投与したところ、CBDはストレスによる心拍数と血圧の上昇を抑えることがわかりました」

8.運動が楽になる

CBDオイルは激しい運動によって増大するグルタミン酸を減らす、とハートさん。

「CB1 とCB2受容体に作用することで、特定の神経伝達物質の分泌を抑制するのです。これが神経系に影響し、痛みや炎症を軽減します。CBDは短期的な痛みから、長期にわたるズキズキする痛みにまで効果があります」

CBDオイルの使用法

最も入手しやすいのは、チンキ剤タイプ。舌の裏に数滴垂らし、吸収するまでしばらく待ってから飲み込むこと。水やスムージーに足してもOK。その他、スプレータイプやカプセルタイプ、グミ、クリーム、電子タバコによる吸入などもあるそう。

服用する場合は「必ず少量から」と、ハートさんは推奨。すぐに効果が出るので、少量で効き目があるかどうかわかるはず。

「初心者には10〜20mg辺りが適当でしょう。それで効果を確かめてから、量を増やすか減らすか決めましょう」

ダジャニさんによれば「服用回数や量は個人の判断によりますが、1日最大200mgまでにしましょう」とのこと。もっとも、新しい薬を試す際は、医師に相談するのが賢明と言えるでしょう。

CBDオイルは安全?

CBDオイルユーザーのほとんどは副作用を経験しておらず、有害な副作用や中毒性はないとされているそう。「世界保健機関(WHO)の報告によれば、天然由来のCBDは安全で、人体における忍容性も高く、公衆衛生上の問題もありません」とダジャニさん。

一方で、より大量のCBDが服用されている臨床研究では、口の渇きや軽いめまい、眠気が報告されているそう。ダジャニさんは以下のように説明します。

「もともと低血圧の人にとっては、血圧が下がるのも問題になりうるでしょう。とはいえ、これまでに(耐性がついて)服用量が増えたり、離脱症状が起きたというような依存性は報告されていません」

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
NETDOCTOR