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Shoko Takayasu

コスモポリタン日本版がおくる、【LGBTQ】連載の記念すべき第一弾は、先日テレビでレズビアンであることを告白した滝沢ななえさん。後編では、結婚観やこれまで生きてきた環境など、滝沢さんが底抜けに明るい理由に迫ります。

――前編のインタビューで、滝沢さんは性自認が女性と仰っていましたが、子供を産んでみたい、子供が欲しいと思いますか。

「私、生まれてから一度も産みたいと思ったことはないです。うち、5人兄弟で(姉2人、妹1人、弟1人)、母子家庭なんですね。なかなか厳しい家庭環境で育ったので子沢山な状況に憧れはないし、幼少期に子供と充分触れ合ったからもういいわって感じで。子供っていうか家族ですけど(笑)。今、姪っ子も甥っ子もいて可愛いと思いますが、自分が子供が欲しい、とはなりませんね。だからというわけじゃないけど結婚願望もないので、同姓の結婚制度についても深く考えたことはないです。同性愛者の法的権利には疎いですね。今は好きな人と一緒にいられればいいから。病気になったり老後がもっと身近になってきたら焦るのかもしれません」

――ご家族は今の状況をどう思っているんですか。そもそもレズビアンということは知っていた?

「母だけが知っていました。以前付き合っていた彼女と同棲する話が出たときに、そのタイミングで話しました。母には『なんとなく気づいてたよ』と言われましたけど、大事にはならず。でもいい気はしてなかったと思います。一過性だろう、今だけだろう、と。気の迷いだと思っていたみたい。なので、今回のTV放送を受けて家族の中で唯一、ネガ寄りな反応をしたのは母です。『アンタなんかやらかしたらしいわね』と言われました。まあその反応は、普通っちゃ普通だと思うんで気にしてないです。一方、姉妹たちは『なんだ、もっと早く言ってくれればよかったのに』とか『言えてよかったね。おめでとう~』という軽さ。正直私は、とっくにバレてると思ってたんですけど、気付いてなかったの…かな。いずれにせよポジティブな反応でしたね。妹は私と同じ中学に進学したこともあって、バレーつながりで共通の知り合いが沢山いるんですよ。だから私がレズビアンをオープンにしたら、彼女が何か言われるかなって気になってたんですけど、妹からは『みんなカッコイイって言ってたよ!』と報告されまして。ほんと、想像以上にポジな反応でうれしかったですね。弟は…基本、音信不通なのでよくわかりません(苦笑)」

――滝沢さんと話しているとビシビシ伝わってくるんですが、根がすごく明るいしポジティブですよね。セクシャルマイノリティ(以下セクマイ)の話って深刻に扱われがちだし、世間も「大変ですね」というフィルターをかけて見るじゃないですか。でもこんな前向きで、構えない人っているんだな~と取材をしていて、リアルに感じられました。

「はは(笑)。それよく言われます。ストレスなさそうだよね、とか。実際ストレスないですし感じたこともないですよ。ストレスって多少はあったほうがいいって言いますけど…。5人兄弟、母子家庭、母は仕事でほぼ家にいない、って客観的に聞いたら、けっこうヤバイ家ですよね? グレたり引きこもったりしても、ある種、許されるっていうか。告白すると、私も小学生までは相当な問題児だったんですよ。いわゆる学級崩壊を起こすタイプの子。授業中話聞かないしどっか行っちゃうし、勉強は全くしない。でも中学に入ってバレーボールを本気でやるようになってから、変わっていった気がします。今思えばですけど。強豪校(八王子実践)だったのでそりゃあ厳しい部活でしたし、先生、先輩は絶対だし。ものすごく理不尽なタテ社会でした(笑)。でもそこでストレス耐性がつきましたね。精神的にも肉体的にも相当鍛えられましたから」

――今だったらニュースになるレベルの"指導"が当時普通でしたしね。とはいえ、そういう環境にハマれる性格でよかったですね。あまりに厳しいと、逆につぶされる子もいるでしょう。

「だと思います。でも私は超楽しかったんですよ。練習はきつくても試合に勝てばやっぱり気持ち良くて。だからやめられない。それに部活仲間にも恵まれて本当に楽しかった。バレー部時代の子たちとは今でも仲が良いですし、何でも話せる一生の友達を得ました。だからこの私のストレス耐性の強さとか、何を言われてもスルーできるメンタルは、バレーのおかげだと思ってます。あと私、先ほど話したとおり恵まれない家庭環境だったので(笑)子供の頃からお金持ちになりたくて。なので、自分の力でお金を稼ぐこと、自立することが常に頭にあるから、ちょっとやそっとのことじゃ動じないですね。レズビアンだから専業主婦になって結婚して養ってもらうという未来もないし…」

――いやいやこの時勢、セクマイであろうとなかろうと女性の自立は必須ですよ! そう考えると、レズビアンだろうと何だろうと、悩むポイントって異性愛者の女性と変わらないですよね。

「そうですよ~。女性は普通に生きていても30歳過ぎて独身だったり、既婚でも子供がいないと世間からの外圧がすごいですからね。逆に私は結婚・出産には興味がないので、外圧をかけられている女性より気楽かも(笑)。女性が好きというだけで共通している悩みはたくさんあります」

――ですね。セクシュアルマイノリティに対して、何だかいい意味で拍子抜けしました。べつに特別な存在じゃないんだな、と。

「色んな人がいていいと思うんですよね。セクマイでもそれをオープンにしたくない人はしなければいいし。ただ実際、そういう人たちはいるので。彼ら彼女らがオープンにしたときは、そのまま受け入れてくれる社会になってほしいと思います。私のように公言しても何も変わらない、っていうのはある意味いいことだと思うんですよ。だから同じセクマイで、ちょっと躊躇しているゾーンの人たちのロールモデルになれればいいな、と。公表しても何か特別なことはなくて、異性愛者と同じように生きている。でもやっぱり少数派には違いないから、マイノリティの気持ちはわかる。何となく"中間"にいるイメージなんです、私。だからこそ、自分の意見を今後積極的に発信していきたいです。これからはメディアにもどんどん出て行きますよ、日本のエレンを目指してますからね!」

滝沢 ななえ

1987年9月22日生まれ。東京都三鷹市出身。バレーボールの強豪校、八王子実践中学・高校ではリベロとして活躍。卒業後はパイオニアレッドウィングス、上尾メディックスに所属。2013年上尾メディックスを退団後、バレボールコーチとして活動。現在はSPICE UP FITNESSでパーソナルトレーナーとして活躍中。

撮影/Shoko Takayasu ヘア&メイク/LISA  スタイリスト/町野泉美 取材・文/コスモポリタン編集部

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