出生時に割り当てられた性が「女性」であるものの、「男性」として生きることを望むトランスジェンダーの「FTM(Female to Male)」。

今回は、そんなFTMコミュニティのオピニオンリーダーであるZ~ミレニアル世代の3人が語る「理想の学校や会社像」を中心に、日常生活で周りの視線が気になること、固定概念が強い制服、就職活動、冠婚葬祭の服装、履歴書の性別欄の書き方や、面接でのカミングアウトの必要性について伺いました。


【INDEX】


参加者プロフィール

■Masaki

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Masaki
FTM美容師として、LGBTQ+フレンドリーなサロンを目指すMasakiさん。

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■Ui

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Ui
作品や言葉を通して、国籍や年齢、性別を超えて希望を届ける「HOPE WORLD」創業者代表のUiさん。

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■Haru

 
Haru
サロンモデルの活動やカフェを経営するHaruさん。

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日常生活で周りの視線が気になることはありますか?

Ui「性別を声で判断されることがあります。たとえば、初めて行く美容院では声によって“女性”扱いされてしまい、メンズカットをオーダーしにくかったり、視線が気になったりすることも。そもそも、“メンズカット”や“レディースカット”と言い分ける必要があるのか、モヤモヤしますね。あとは、水着を着て入れる温泉がもっと増えたらいいのになとも思います」

Masaki「銭湯のほとんどが男女別なので、自分の体が気になってしまいますよね。ほかにも、多目的トイレのような誰でも入れる場所がもう少し増えると嬉しいです」

Haru「Uiさんと同じように、ホルモン注射や乳房切除術を始めるまでは、美容院でメンズカットを予約するとき、声や外見で女性だと気付かれてしまうのではないかとそわそわした経験があります。

戸籍を変更していないので、身分証明書を出すと何度も本人確認をされることも。特に友人と一緒にいるときは、そのやりとりを見られるのがすごく居心地が悪かったのを覚えています」

Masaki「わかります。僕もパッと見て女性と認識されることはもうないので、薬局に行ったときに保険証を出すと、何度も本人確認をされて、仕方なくカミングアウトをせざるを得ないことがあります。しょうがないことなのは十分わかっているのですが、小さなやり取りが何度も続くと、少し面倒くさいと感じる部分はあります」

まだまだ固定概念が強い制服、就職活動、冠婚葬祭の服装はどうしていましたか?

Ui「学生時代は校則に従ってスカートを履いていましたが、社会人になってからはスーツを選ぶようになりました。

とはいえ、過去にはバイトの面接で、男性用の制服の着用を断られた経験もあります。自分はホルモン注射や乳房切除術をまだしていないので、『見た目や声が違っていれば、希望は通ったのかも…』と思う部分はありますが、できればもっと柔軟に検討してくれたら嬉しかったですね」

Masaki「僕は就活する時点でホルモン注射をしていたり乳房切除術を終えていたりしたので、スーツを選んだのを覚えています。ジェンダーバイアスがまだまだ強い日本で育ったからこそ、僕もスーツへの憧れが強くあったのかもしれません。

ただ、個人的にはTPOに応じてさえいれば、男性用でも女性用でも自分が着たいもので問題ないと思っています」

Haru「男性用の制服を着たくても勇気が出なかった学生時代から最初の就職活動までは、ずっと女性用のものを着てきました。当時はフィットネスのインストラクターをしていたのですが、研修のときに女性はブラトップにならないといけない決まりがあって、すごく抵抗があったのを覚えています。

その後、会社を辞めることになったのですが、治療も始めていたので、転職活動はスーツ姿で挑み、面接官にも『男性社員として働きたい』と伝えました」

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履歴書の性別欄の書き方や、面接でのカミングアウトの必要性について教えて下さい。

Ui「履歴書の性別欄に関しては、どうしても書く必要があるときだけ『女性』と記入していました。ただ、個人的にはどちらかを記入する必要はない気がしていて、美容室などで個人情報を登録する際は空欄にしています。

面接に関しても、最初から男女で分別されているような状態のときはカミングアウトをするようにしていますが、そうでないときは基本的にその場では言わず、親しくなってから伝えるパターンが多いです」

Haru「男性社員として働きたいのはもちろん、面接官を驚かせてしまうのではないかという懸念もあり、履歴書では『男性』にチェックして、面接で事情を直接説明するようにしています」

Masaki「履歴書の指定がない場合は、できるだけ性別欄のないものを使うようにしていました。ここ数年で増えてきたので、意外と簡単に手に入りますよ。ただ、どうしても性別欄を記入しないといけない場合は、Haruさんと同様に、『男性』にチェックをして、面接で事情を説明しています。

過去に一度、面接で事情を説明しなかったことがあり、戸籍が男性と記された保険証が送られてきてしまったんです。結局、お互いに手続きが二度手間になってしまったので、スムーズなやりとりをするためにも、カミングアウトはするようにしています」

「LGBTQ+フレンドリーな学校や企業」とは、具体的にどんな場所であってほしいですか?

Ui「自分は服装が自由であること、男女比に大きく差がないことを軸に探しました。たとえ指定の制服があったとしても、自分の意見や希望を聞いてもらえるような、柔軟な環境であってほしいと思います」

Masaki「Uiさんと同じで、学校や会社、どちらも服装が選べる環境であってほしいと思います。以前勤めていた会社では男女別の制服があったのですが、事情を伝えて男性用を着ることができました。

でも、服を自由に選びたいと思っていた人は他にもいたかもしれないですよね。特に理由を説明しなくても、自由に選択できる環境であれば、すべての人にとってもっと生きやすいのではないでしょうか」

Haru「二人と同様に、決められたものに従うのではなく、自分で選べる環境作りが大切だと思います。そのためにも、自分の行動や発言で周囲の考えを変えられたら嬉しいです」