経済再開とともに今年6月のプライド月間は昨年以上に盛り上がり、年々ジェンダーニュートラルな社会が構築されていることを感じるニューヨーク。人種のるつぼであり、LGBTQ+コミュニティへのサポートも先進的なニューヨークのトイレは「オールジェンダー化」が進んでいるとの情報がありますが、実際はどうなのでしょう?

日本では「誰でもトイレ」として議論になっている、「オールジェンダートイレ」について現地からライターがレポートします。

ホワイトハウスでも話題になったオールジェンダートイレ

2015年、バラク・オバマ元大統領が任期中に初めてホワイト・ハウスのアイゼンハワー行政府ビルに「ジェンダーニュートラルバスルーム」を設置。誰でも自分の性自認に適しているトイレを使用できるというもので、大きな話題を呼びました。

アメリカではその一年後、ノースカロライナ州で「出生証明に記載された性別に合わせたトイレの使用を義務付ける」という州法が可決され、物議を醸しました(この州法は差別的だという多くの批判を受け、2017年3月に撤回)。

こうしたノースカロライナの事例などを受け、2016年にニューヨーク市では「公共の個室トイレをオールジェンダートイレにする法案」にビル・デブラシオ市長が署名し、2020年にはアンドリュー・クオモ知事が署名し、ニューヨーク州でも法案が可決されました。

moma's ps1 party
Andrew Lichtenstein//Getty Images
▲2017年、クイーンズにある美術館「MoMA PS1」のトイレもオールジェンダーに

普段の生活で「All Gender Restroom」はどのくらい浸透してる?

一方で、実際にニューヨークで生活をしている私の肌感覚としては、残念ながらそこまで浸透していないのではという印象を受けます。

ニューヨークには古くからの建物も多く、男女でトイレの入り口が分かれているのがまだまだ一般的。個室のトイレがオールジェンダー向けだったとしても、入口に「All Gender Restroom」と書いてないことがほとんどです。

人種のるつぼであり、lgbtq+コミュニティへのサポートも先進的なニューヨークのトイレは「オールジェンダー化」が進んでいるとの情報がありますが、実際はどうなのでしょう?日本では「誰でもトイレ」として議論になっている、「オールジェンダートイレ」について現地からライターがレポートします。
Reiko Suga
▲ミッドタウンにあるコーヒーショップのトイレは「Restroom」とだけの表記

気づかぬうちにオールジェンダートイレは浸透していた!?

しかし「All Gender Restroom」や「Gender Neutral Bathroom」と書かれたトイレはそこまで見かけない一方で、そうしたサインやピクトグラムがないだけで、実はオールジェンダートイレだった! というトイレが増えてきていることにも気づかされました。

ニューヨーク州は現在公共施設を中心に、オールジェンダートイレへの転換を進めています。公共施設の中にはレストランやバーも含まれているのですが、お店のトイレの多くは「個室が1~2カ所あり、ジェンダー問わず誰でも使用していいタイプ」。そのため、オールジェンダートイレということを気にせずに利用することが多いのです。

例えば6月にオープンした「Google Store」のトイレ。個室がひとつあるのですが、ピクトグラムのみのため、オールジェンダートイレだとわざわざ感じず、「ひとつだからこれを使おう」という利用者がほとんどだと思います。

人種のるつぼであり、lgbtq+コミュニティへのサポートも先進的なニューヨークのトイレは「オールジェンダー化」が進んでいるとの情報がありますが、実際はどうなのでしょう?日本では「誰でもトイレ」として議論になっている、「オールジェンダートイレ」について現地からライターがレポートします。
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▲Google Storeのトイレ

ほかにも、8月から営業再開予定のブルックリンにあるワイスホテルのルーフトップバー「Lemon’s 」もオールジェンダートイレを導入。ジェンダー問わずにトイレへの入り口はひとつで、中に入ると個室がたくさん並んでいるタイプだったので最初は驚きました。

このタイプのオールジェンダートイレはトイレを出た後、みんなが同じ場所で手を洗うので、メイク直しや鏡を見て身だしなみを整えにくかったり、知っている人と隣りあわせたりすると気まずいのではという懸念や意見も…。

しかしこちらのトイレもわざわざ入口に「All Gender Restroom」の記述はなく、「トイレはこちらです」と案内されたらたまたま“誰でもトイレ”だったので、実は当たり前になってきているのかもしれません。

飲食店ではこうしたオールジェンダートイレが増えてきていますが、マンハッタンにある和食レストランに行くとほとんどが個室でも男女で分かれていることに気づかされます。

人種のるつぼであり、lgbtq+コミュニティへのサポートも先進的なニューヨークのトイレは「オールジェンダー化」が進んでいるとの情報がありますが、実際はどうなのでしょう?日本では「誰でもトイレ」として議論になっている、「オールジェンダートイレ」について現地からライターがレポートします。
p12.nysed.gov
▲自治体で推奨されているサイン

新たに建築される施設など、現在は転換期

近年、市や州の法案の可決により、新たに建築される施設をはじめ、学校や美術館、図書館などの公共施設はオールジェンダートイレへの転換が進んでいます。

ニューヨーク州立大学ジェネセオ校やニューヨーク大学でも多くのキャンパスでオールジェンダートイレを導入。観光地としても知られているホイットニー美術館でも1階、3階、8階に個室タイプのオールジェンダートイレを設けています

人種のるつぼであり、lgbtq+コミュニティへのサポートも先進的なニューヨークのトイレは「オールジェンダー化」が進んでいるとの情報がありますが、実際はどうなのでしょう?日本では「誰でもトイレ」として議論になっている、「オールジェンダートイレ」について現地からライターがレポートします。
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▲新たにオープンした飲食店は表記とピクトグラムも

ニューヨーク市・州ともに法案ができてそこまで時間が経っていないのもあり、まだまだ移行期間とも言える今。

そんな中「All Gender Restroom」という記載やサインがなくとも、すでに「みんなが同じトイレを使う」という状況が自然と増えつつあるニューヨークはジェンダーニュートラルな都市であるということは間違いありません。

様々な議論がある一方で、多様なスタイルが広がっていくオールジェンダートイレの今後の変化にも注目です。