同性カップルで長く同棲していて、二人のライフスタイルが見えてくると、自分たちの暮らしにあった家を購入したいと思う人も多いはず。最近では、同性カップルで住宅ローンを組める銀行も増えています。また、自分の将来を考えて、個人でマンションを購入する人も少なくありません。
そこで本記事では、住宅購入にあたって知っておきたい、LGBTQ+ならではのポイントをまとめてご紹介。スタッフ全員が当事者というLGBTs不動産「IRIS」の代表取締役CEO、須藤啓光さんによる解説をお届けします。
ライフプランについて話し合う
家を買おうと考えると、賃貸と違って、選択肢は無限にあります。生き方も働き方も多様化している現代、まずは自分たちの今後のライフスタイルやライフイベントを、現在から老後、そして最期まで中長期的に考えることが大切。
パートナーがいる場合は話し合いを。自分たちのやりたいことや目標を書き出してみたうえで、必要な物件がどんなものかを割り出しましょう。
- 結婚式を挙げるのか
- 子どもを持つか
- ペットがいるか
- 性別適合手術を受けるか
- どこでどんな仕事をするか
- 休日はどんな過ごし方をするのか
- 老後に施設を利用するかどうか
- その家にずっと住み続けるのか
- 退職前・退職後のおおよその収入 など…
実際に、パートナーと共に家の購入を検討しているという須藤さん。そこで、自分たちはもちろん、愛犬の老後などにも考えを巡らせて最適な物件を探しているんだそう。
「うちには犬がいるので、犬も自分たちも年を取ったときのことを考えると、バリアフリーとかカスタマイズできるところがいいよね、ということで、マンションではなく戸建てを検討中です。また、結婚式をあげたくて、結婚資金もかかるので、結婚式と家を買うタイミングをずらしたほうがいいよね、という話もしていますね」
購入する物件にはどんな選択肢がある?
物件購入には無限に選択肢がある中で、検討すべき主な項目はこちら。
- 住むエリアは?
- 戸建て or マンション?
- 新築 or 中古?
- (新築なら)建売住宅 or 注文住宅?
- (中古なら)リフォームする or しない?
検討するうえで考えておきたいのが、ずっと住み続けて終の住処にするのか、売却や賃貸に出す予定があるのかという点だそう。
「終の住処にする場合は、あと何年ぐらい生きるのかを想定して、それに見合った物件を選ぶ必要があります。売ったり賃貸に出したりすることを考えている場合は、年数が経てば経つほど資産価値が下がってくるマンションよりも戸建てを選ぶ、一般的な家族や夫婦などが住みやすい間取りにするといった点を考慮しておくといいですね」
同性カップルは住宅ローンを組める?
同性カップルのうち1人がローンを組む場合、住宅が単独名義になってしまうため、ローンを組んだ側が亡くなるともう片方は住めなくなってしまう可能性があるほか、別れることになったときに共有財産として権利主張が難しくなる、といった問題がありました。
ところが近年、2017年のみずほ銀行に始まり、住宅ローンの配偶者の定義に同性パートナーを加える銀行が増えてきています。
二人でローンを組む場合、方法は大きく分けて以下の3つ。
ペアローン
2人が別々にローンを組み、お互いに連帯保証人になる方法。現在では主流になっている。
収入合算(連帯債務)
1本のローンに2人とも平等に返済の義務を負う方法。対応する民間ローンはまだまだ少ない。
収入合算(連帯保証)
片方がローンを組み、もう片方は連帯保証人になって、債務者が返せなくなったときだけ請求を受ける方法。
住宅ローンはどう選ぶべき?
現在、同性カップルで住宅ローンを組める銀行の選択肢は10以上に及びます。選ぶにあたっては、以下の項目をチェックしてみて!
- メガバンクかどうか
- 窓口のある銀行 or ネット銀行
- 事前審査(仮審査)の有無
- 固定金利 or 変動金利
「一般的に、メガバンクは審査が辛口で、借りられる金額も少なく、提出する書類も大変です。スピード重視なら窓口のある銀行が早く、時間はかかるけれど金利低めで審査が通しやすいのはネット銀行。また、固定金利は資金計画が立てやすく、変動金利はトータルコストが低いというメリットがあります。だいたい条件を整理すると2〜3つに絞り込まれて、それらの事前審査を通してみて、条件を比較することが多いです」
住宅ローンは複雑なため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するとスムーズに進むはず。ハウスメーカーや不動産仲介会社が決まっている場合は、提携ローンが使えるなら金利が低くなるのでおすすめ! 利用する銀行が決まっている場合は、銀行にも相談窓口があります。
同性カップルの住宅ローンに公正証書は必要?
公正証書とは、公証役場で公文書として公証人が作成した契約証書のこと。ペアローンを借りるなら、ほとんどの場合は「パートナーシップ合意契約公正証書」を作成する必要があります。
専門家に依頼して作成する場合、公正証書の手数料なども含めて20万円ほどかかります。
また、公正証書作成には、長く見積もって2カ月ほどかかることもあるので、早めに作成しておくのがおすすめ。カップルで一緒に暮らし始めたタイミングなど、家の購入を検討する前から、先に組んでおくのがベストです。
LGBTQ+が1人で家を買う場合の住宅ローンは?
LGBに関しては、1人の収入で住宅ローンの審査に通れば、ローンを組むことができます。一方で、トランスジェンダーの場合は、ホルモン治療や性別適合手術を受けていると、住宅ローンを借りることが非常に難しいという現実が…。
住宅ローンを組むときは、ほとんどの場合は団体信用生命保険(住宅ローンの債務者が返済期間中に死亡または高度障害状態になったときなどに、その保険金で住宅ローンの残高が完済される)、もしくは代わりの生命保険に加入する必要があります。
しかし、ホルモン治療や性別適合手術を受けているトランスジェンダーの場合、健康リスクが見えないという理由で、生命保険の加入を断られることが多いためです。
キャッシュで買う、ホルモン治療や性別適合手術を始める前に買う、親や、結婚している場合はパートナーの名義で買うといった工夫が必要になるかもしれません。
家の相続問題はどうする?
家を購入した後、早めに準備を進めておきたいのが相続の問題。同性パートナーは法定相続人ではないため、遺言書を作成するなどして、片方が亡くなったときにもう片方が家を相続できるようにしておく必要があります。
また、後々の相続トラブルを避けるためにも、家族にパートナーとの関係性を話すかどうかは、考えておいたほうがいいでしょう。
家は、人生の中でも最も大きな買い物の一つ。LGBTQ+にとっての選択肢も増えているので、長い目で見てイメージし、後悔がないよう調べて、希望に沿った物件を購入したいですね。
今回、お話を伺ったのは…
株式会社IRIS 代表取締役CEO・須藤啓光さん