LGBTQ+に対する議論や理解が広がりつつある一方で、性的マイノリティの人々が真に暮らしやすい社会にはまだまだ遠い道のりでもある現状。そんな社会で、時に当事者たちの心の支えとなるのが、家族や友人、恋人の存在。

本記事では、性別移行を家族と一緒に乗り越えたトランスジェンダー女性のミヤさんと、その祖母であるサンドラさんの体験談をお届けします。

幼い頃から違いに気づいていた家族

トランスジェンダー女性であるミヤさんは、現在21歳。 幼い頃から自分の“性”について疑問に感じていたという彼女は、そのために学校でイジメを経験したり、理解されない混乱や怒りから家出をすることもあったといいます。最も大変だった時期には、家庭崩壊の危機に陥ったことも。

74歳になるミヤさんの祖母サンドラさんは、ミヤさんの幼い頃をこう振り返ります。

「3歳頃から、ミヤが少し違うことを勘づいていました。クリスマスには男の子が喜ぶような電車のオモチャを買おうとしたけれど、ミヤは人形を欲しがったのを覚えています。私たちの家に遊びに来た時には、ハイヒールを履いて遊んでいました」
「そしてその頃の私たち家族は、トランスジェンダーという概念をよく理解できていなかったんです。彼女が5~6歳になり、学校に行きはじめると変わるだろうと考えていましたが、そうではありませんでした」

自身の性に向き合い、性別移行へ

11歳頃からカウンセリングに通い始め、自身の性自認について向き合いはじめたというミヤさん。

「カウンセラーから『自分の体に閉じ込められている感覚はありますか? 違う自分になりたいと感じますか?』と聞かれました。ずっと感じていたモヤモヤを指摘されたようで、『はい、その通りです』と答えたことを覚えています」

その後ミヤさんは、14歳でホルモン療法を始めることに。身体が変わっていく過程で、学校でのいじめはより過激になっていったものの、「自分が選んだ道を進むため」と耐えていたと言います。

a young trans woman on the importance of support

「性別移行は家族で臨むもの」

性別移行への過程をサポートするうえで、ミヤさんを含める家族一人ひとりがどう感じているのかを、正直に話し合うことが重要だったと語るサンドラさん。

「ミヤは幼い頃、自分が何者なのかに対して混乱していたから、毎日自分と、そして周りと闘っているようでした。私たち家族は最初、ミヤが何と闘っているのか、なぜ苦しそうなのか理解することができませんでした。だから、すこしでも理解するために話し合い続けることが必要だったんです」

そうして少しずつ理解を深めていたミヤさんの家族は、彼女の決断を支えるべく、性別移行や性適合手術がどのようなステップで行われるのかを知るために、カウンセリングや通院にも同行したのだそう。

「何度かミヤと一緒に、トランスジェンダー当事者とその家族のグループセッションに行きました。参加していた家族それぞれに悩みがあることを知り、性別移行は家族で臨むことだと感じたんです」
「その頃には、ミヤが女の子でも男の子でも関係ないと感じるようになったんです。性別に関わらず私たちはミヤを愛していて、少しでも力になりたいだけ。自分らしく生きることのできない人生ほど悲しいものはありません」

性適合手術に付き添った祖母のサンドラさんは「それでも手術の直前には恐怖や不安を感じた」といいます。でもその恐怖よりも「性適合手術はミヤが望む決断だから、後悔することはない」という確信の方が大きかったのだとか。

ミヤさんは性別移行の歩みを振り返り、こう語っています。

「私が自分らしく生きる道を導いてくれたのは家族でした。彼らの存在がなければ、今の私は存在していないでしょう」
young trans woman on the importance of support

自分の性に戸惑っている子どもたちに伝えたいこと

「10年ほど前はトランスジェンダーについてメディアで語られることはそう多くはなかったけれど、最近では話すことに対するタブー感が薄まり、以前と比べると大きな進歩があったと思います」と話すのは、祖母のサンドラさん。

一方のミヤさんは、トランスジェンダーに関する議論が進み、存在感が大きくなり始めたことに対して嬉しいと思う反面、ネガティブな声もまだまだ多いことを指摘。

トランスジェンダーであることに対して否定的な意見を持ち、寄り添うことを躊躇する人も多い社会で、性別移行を経験した当事者として、子どもたちのインスピレーションとなり、トランスジェンダーコミュニティを盛り上げていきたいと思っているんだそう。

「自分の性に対して混乱している子どもたちには、“あなた自身の在り方を疑問に思うのではなく、人々の偏見に対して疑問視することが大切”だと声をかけたいです」
「あなたは、自分が思っているよりもはるかに強いことを忘れないで。他人の意見によって“自分らしさ”を失ってしまうより、怖くても自分を信じることによって、結果的に楽になるはずです」

※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARI
Good Housekeeping