飼い主にとって、家族の一員である愛犬の存在。一緒に過ごすなかで「機嫌が良いときは尻尾を振る」というような行動はわかりやすい一方で、愛犬の様子を見ていて「この行動にはどんな意味があるんだろう?」と首をかしげる場面もあるはず。
そこで「犬がよくする行動」について、その意味を専門家に取材。愛犬とより良いコミュニケーションをとるためにも知っておくと便利なはず!
【INDEX】
犬がよくする行動の意味
犬が飼い主の足元に座り込むとき
犬が飼い主の足元や膝の上でぺたりと座り込むのは、飼い主を守りたいと思っているサイン。NPO法人・カリフォルニア・ワイルドライフ・センターのエグゼクティブディレクターであるジェニファー・ブレント氏は次のように説明します。
「それは、その人を独占したいという気持ちの現れです。また、足にお尻だけをのせる行為はマーキングの一種と言えます」
「この行動をするのは、ただ飼い主にくっついていたいからではない」と、ブレント氏。「この人は私のもの。私がにおいをつけたから近づかないで、と示している」そう。
犬がこの行動をするとき、主な理由は次の3つであるとか。
- 飼い主の生活における自分の居場所を確認するため
- 「この人は自分のもの」と他の犬に警告するため
- 飼い主を守るため
他にも、「他人に吠える」「他の犬に唸る」「散歩中にリードを引っ張る」などの行動は、飼い主を守るために行っている場合もあると言います。
「犬は飼い主の“仲間”として、たとえばどこかに行くときには飼い主より先にその場所に危険がないか確認する習性があると言われています」
犬がストレスを感じているように見えるとき
愛犬がストレスを感じているように見えるとき、それはあなたと同じ気分になっているからかも。
「飼い主が仕事や人間関係によるストレスを抱えているとき、犬はその気持ちを感じ取る」と語るのは獣医師のマーティ・ベッカー氏。
「あなたがストレスを感じているときは犬もストレスを感じ、あなたが幸せなときは犬も幸せな気持ちになるのです」
犬が部屋のものを荒らすとき①
遊ぶ時間が十分でないときには、犬が問題行動を起こすことも。
たとえば、物に噛みつく、床におしっこをする、テーブルの周りを走り回るなどの行動は「動き足りない」と飼い主に伝えているサインだと、ブレント氏は説明します。これらは室内で生活する犬に多い問題行動なんだそう。
こういった行動は、牧畜犬や狩猟犬のルーツを持つ活発な犬種に顕著だそう。
「ダルメシアンは狩猟犬として訓練された犬種です。1日8マイル(約13キロ)を走るのに慣れている動物を家の中に留めるのはよくありません。犬が物を壊すときは、飼い主に『退屈だよ、どうにかして』と伝えていると考えられます」
サイズや環境、犬種にもよるものの、犬には1日に45〜60分間ほどの運動やアクティビティが必要だと言います。
一方で、ベッカー氏によれば、頭を使った遊びで犬を楽しませるのも有効だそう。エサを探すゲームをさせたり、パズルを解かないとオヤツが食べられない仕掛けをしたり工夫してみましょう。
犬が部屋のものを荒らすとき②
飼い主が出かけようとするときに犬が吠えるのは珍しいことではなく、「自分を連れて行くのを忘れている」とアピールする行動だと考えられています。
一方で、ベッカー氏によれば、より深刻な反応を見せるケースもあると言います。
「分離不安症などを抱える犬は、飼い主がもう戻ってこないと思うと、パニックになります。すると、飼い主がいた場所を攻撃したりドアフレームを噛んだり、破壊的な攻撃を見せます」
「帰宅したときに、犬が下痢をしていたりパンティング(浅く早い呼吸)をしている場合には、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増えているサイン。すぐに対処する必要があります」
愛犬の過度な反応や身体症状に気がついたら、まずは獣医師や専門家に相談を。トレーニングプログラムを受けたり、犬用の安定剤などを処方してもらうなど治療法を検討してもらいましょう。
症状が軽い場合には、インターバルトレーニングを取り入れるのもおすすめです。
インターバルトレーニングの方法
- 上着を着たら、鍵を持ってドアの外に出て30秒間待つ
- もう一度部屋のなかに戻る。次は1分間、その次は5分間と少しずつ時間を延ばしながら、同様に繰り返す
また、出かける際におやつやおもちゃを与えて犬の気をそらすのも効果的。
犬を飼う上で知っておきたいこと
人間の不調を警告してくれることも
まだ科学的根拠が少ないものの、犬には飼い主の体調の変化を察知できる可能性があると言われています。実際に、てんかん発作など人間の体の重篤な症状を感知できる犬がいることも報告されているそう。
ベッカー氏は次のように説明。
「トコジラミ、カビ、ピーナッツ、薬物、爆発物を発見できる犬がいる一方で、化学物質を感知できる犬も一定数いるとわかっています」
「そういった能力をもつ犬は、低血糖の糖尿病患者の吐く息に含まれるケトン体のにおいを嗅ぎとったり、てんかん患者が発作を起こしそうな予兆を察して警告したりすることができると言われています」
また、なかには人間の感情に共感することができる犬もいて、セラピー犬として活躍することも多いんだとか。彼らは愛情を必要としている人に寄り添ってくれるのはもちろん、健康上の問題を感知し行動で示してくれもします。
「ただ横になっていたい人もいれば、ベッドから出る理由が必要な人もいます。不思議なのは、セラピー犬たちが(人に)近づべきタイミングと遠ざかるべきタイミングを理解していることです」
犬の体調に異変があるときのサイン
犬の健康状態の変化にいち早く気づくには、彼らの行動に注意を払うことが大切です。
ベッカー氏によると、犬の様子がおかしく感じるときは本当に具合が悪いケースが多いとのこと。
「不必要な痛みや悪化を防ぐために、なるべく早い段階で異変に気がつくことが最善。自分の直感に注意を払いましょう」
いつものように遊びたがらない、攻撃的になる、起き上がれない、エサを食べないなどの兆候がある場合は、病気を患っている可能性があります。
「特に、食事の際の様子はよく観察してください。十分に食べない、食べすぎる、飲む水の量が普段よりも多い、便が増える、体重が減るといったことは、犬の体に異変が起こっているサインです」
犬には生活リズムがある
食事やトイレ、睡眠など、犬の生活パターンの規則正しさを保つことは大切なことだと、ブレント氏は語ります。
「犬にとっては、次に何をするか、何が起こるか予測できることが重要です。そうでないと、起こったことにどう反応すればいいか分からなくなってしまうからです」
一般的な生活習慣を守れれば理想的ですが、すべてのことを毎日同じ時間に行う必要はありません。ベッカー氏によると、日によって毎日することの時間を変えるのも、長い目で見れば人間が飼い犬に対して主導権をもつために良いことだそう。
犬は人の声色に反応する
ときには犬を叱ることも、しつけのためには大切です。その際にどんな態度をとるかが、犬に言うことを聞かせるためのカギだとブレント氏は言います。
「犬は人間の声色に反応します。犬が悪いことをしたときは、後から叱ったり、優しい声で呼びかけるのではなく、その場ですぐに『これはダメ』とはっきり注意するようにしましょう」
重要なのは、悪いことをしたときに「その場で叱る」「同じ言い方で叱る」ということ。
問題行動は原因を突き止めて
愛犬が家族の一員なのは間違いないけれど、だからといって人間の行動原理と照らし合わせて考えるのは良くないと言います。
ペットケアコラムニストで『Dogs for Dummies(原題)』の著者であるジーナ・スパダフォリ氏は次のように話します。
「私が一番問題だと思うのは、犬も人間のような『行動の理由』をもっていると、飼い主が勘違いすることです」
犬が家の中でおしっこをしたりリモコンを噛んだりしても、彼らには何かに復讐しようとする意図はないと言います。
「そういった犬の行動は、感情や理性によるものではありません。しつけや病気、また環境の変化などによって引き起こされるストレス反応であるはずです」
愛犬が問題のある行動をすることに悩んだら、根本的な原因を見つけることから始めましょう。 また問題行動が自分の手に負えないという場合には、ドッグトレーナーや獣医師などに相談することも大切です。
※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARISA ISHIMOTO
WOMAN’S DAY