クリエイティビティ(創造力)は生まれ持った性質だと考える人も多いはず。では、実際のところはどうなのでしょうか?

今回は<グッドハウスキーピング>が、専門家に取材。子どものクリエイティビティを磨く方法や、子育てのポイントとは?

クリエイティビティとは

「現実には、クリエイティビティは時間とともに育まれるものです」と語るのは、カリフォルニア大学アーバイン校教育学部のアンドレス・ブスタマンテ准教授。実際のところ、専門家たちは、クリエイティビティは教えられる、あるいは、育てられるものであるということに同意しています

でも、世の中には、一部の人々は生まれつき他の人々よりもクリエイティブだ、という誤解が。トロントを拠点にギフテッド(英才児)を専門とする心理学者で、ニューヨーク市立大学ハンター校の英才児研究・教育センターの創設者でもある、ドナ・マシューズ博士はこう語ります。

「クリエイティビティは、自分が何をするか、どうするかということ。それに気づけば、誰もが年齢や性格にかかわらず、クリエイティブになれるのです」

クリエイティビティが子どもにとって大切な理由

マンハッタンを拠点に、クリエイティビティを通して患者のメンタルヘルスの向上に役立てている臨床心理学者のベン・マイケリス博士によると、「クリエイティビティとは、問題を解決したり、コミュニケーションをとったり、考えたりするための発想や他の選択肢、可能性を作り出し、認識する能力」だそう。

研究者たちが子どものクリエイティビティを測るのに使う最も一般的な方法は、拡散的思考と呼ばれるもの。たとえば、いくつかの異なる素材を与えられ、それを使って瓶の中にあるボールを取り出す方法をできるだけ多く考えるといった方法。

子どもたちは、ある問題や課題を解決するのに、どれだけ多くの可能な解決法を導き出せるかを試されます。

schoolchildren arranging large multicolor adhesive notes
Malte Mueller//Getty Images

子どものメンタルヘルスに関する懸念が強まる今、子どもたちのクリエイティビティを育てることは、これまでに増して重要になっていると専門家たちは言います。

「クリエイティブな考え方をする人ほど、落ち込んだり、病気になったりしにくいと研究では示されてきました」(マイケリス博士)
「クリエイティブな自己表現は、子どもたちの対処能力を支える大きな力になるという証拠が相次いで示されています」(マシューズ博士)

この理由の一つとして挙げられるのは、問題解決能力が回復力を培うこと。2017年にナショナル・オーガナイゼーション・フォー・アーツ・イン・ヘルス(NOAH)が行った芸術が健康に果たす役割を調査する大規模な研究では、芸術は心身の健康に重要な役割を果たすことを広く立証しています。

また、クリエイティビティや問題解決能力は、世界市場の中で企業が求めるスキルの上位を占めるそう。ブスタマンテ准教授は、現代社会において重要な能力だと言います。

「世界中のあらゆる事実や知識がインターンネット検索ですぐに調べられる21世紀において、最も価値のあるスキルは、柔軟で、適応力があり、問題が生じるたびにそのつど解決できることなのです」

子どものクリエイティビティのために家族ができること

クリエイティビティは時間とともに育まれるため、“非クリエイティブ”から“クリエイティブ”に切り替えるスイッチがあるわけではありません。それでも、少しずつクリエイティビティを育てるために家族ができることは、以下のとおり。

multiethnic girls painting red heart on wall
Malte Mueller//Getty Images

のんびりして、テクノロジーを使わない時間を持つ

    「子どもが自由な遊びをしたり、何もしなかったり、外遊びや空想、ダラダラしたりする時間を必ず持てるようにしましょう」とマシューズ博士。習い事をやめることでその時間が持てるのであればやめるのも◎。

    「クリエイティビティは、子どもの脳に時間と機会があって初めて発現するものです。気をそらすものや何らかの関与なしに、自分が知っているものと遊び、知識を新しい発想に変えることなのです」

    遊ぶための時間と空間を与える

      ブスタマンテ准教授によると、子どものクリエイティビティを育み、想像力を働かせるためには、遊びを通してするのが一番とのこと。クリエイティビティは問題に対する新しい解決を探し、自己表現することなので、その経験が大切なのだそう。

      「ごっこ遊び、創作遊び、屋外での遊び、ボードゲーム、スポーツなどにはそれぞれ固有の価値があり、異なるスキルが磨けます」
      「子どもたちが遊ぶとき、特に他の人々と遊ぶときはあらゆるタイプの課題に直面し、自分の興味や才能を表現しながら、想像力を使って問題を解決する、現実の代わりとなるような経験をしているのです」

      また、子どもたちと遊ぶのに加え、親たちはどうしたら彼らのよい遊び相手になれるかを学ぶことも必要。遊びをイエスかノーで答えるられるような選択回答形式の質問に集約してしまったり、指示し過ぎたりするのではなく、自由に答えられる質問をすることが重要

      たとえば、「これは消防署?」と聞くのではなく、「わあ、なんてきれいな建物! これって何の建物?」と聞くこと。こうすることで、子どもたちの想像力が動き出すのだとか。

      子どもの興味に耳を傾け、情熱を応援する

        質問を投げかけることで、子どもの感じていることを深め、好奇心や関心を能力に発展させる手助けをすることが大切だと、マシューズ博士はコメント。

        たとえば、はじめからアートの教室に通わせるのではなく、十分な紙、クレヨン、年齢相応の画材を用意する…など。この手助けがクリエイティブな可能性の構成要素である、選択肢や発想の扉を開いてあげることにつながるそう。

        根気よく、ねばり強く、努力するよう励ます

          「子どもが最後まで好奇心を維持し、失敗を克服できるようサポートしましょう」とマシューズ博士。

          「問題に直面した途端にやめてしまったり、手っ取り早く、表面的な成果で妥協しようとしたりするなら、真のクリエイティビティの実現は経験できません。実践を通して性質になったとき、興味は能力になり、強さとなります。これが知性、クリエイティビティ、そして類いまれな才能の源なのです」

          クリエイティブな自己表現の機会をつくる

            マシューズ博士は、「文章でも、絵画でも、演劇でも、音楽でも、操り人形でも、ダンスでも、最もひかれる手段なら何でもいいので、子どもがオープンに、そして評価なしに、自分を表現するようサポートしましょう」とアドバイス。

            作品ができ上がったら、子どもたちが口にする言葉に耳を傾けることも大切。クリエイティブに感情を表現することを覚えた子どもは、まずクリエイティビティの喜びと力を経験するそう。その後はさらに多くの自己表現の機会を求め、学んだことを適用しようとする可能性がずっと高まると言います。

            子どもの社会的なネットワーク作りをサポートする

            演劇のクラスやダンスチームなどに参加している場合、グループとして問題を解決する機会がたくさんあるもの。子どもたちは、一つの障害に対する異なるアプローチのしかたを見ることができ、自分自身の心の抵抗に対処するのに役立つのだとか。

            happy family playing in sunny, idyllic summer meadow
            Malte Mueller//Getty Images

            クリエイティビティを高めるための遊び

            マイケリス博士によると、以下の遊びによって、子どもたちは世界の見方が広がるそう。

            よく知っている物を逆さまにしてみる

              正しい方向で物を見ているときは、言語野のある左脳がそれを素早く分類し、関心を他にそらしてしまいます。さかさまになっていると、右脳のネットワークが作動し始め、形、色、不可解な像の関係を翻訳しようとするそう。

              まずは額に入れた家族写真をさかさまにし、子どもがそれを認識するのにどれくらいの時間がかかるのか試してみましょう。

              似た物を10個考える

              このゲームは、どこにでもある物を一つ子どもに手渡し、これが何だと考えられるか、10個の異なる“物”を言うというもの。

              たとえば、ハエたたきは、テニスラケットかもしれないし、団扇かもしれないし、バトンやマイクかもしれない…というような流れ。日常の中で脳に代替物を考えさせることは、脳を強くするそう。

              テンポの速い、論理型のゲームをする

                マイケリス博士は、カードゲームの「セット」やボードゲームの「ラッシュアワー」など、新しい神経の回路を作り出すことができる論理型のゲームをおすすめ。

                脳にとって最も望ましい課題は、数独やオンラインクイズ、あるいは記憶を想起させるゲームなどのように、困難であるだけでなく、多様で斬新であることだそう。

                girl running with kite in grassy field
                Malte Mueller//Getty Images

                家族が注意したい行動

                家族は子どものクリエイティビティを育てられると同時に、クリエイティビティをつぶしてしまう可能性も。できれば、クリエイティビティを殺してしまうような以下のようなことは避けましょう。

                子どものスケジュールを詰め込み過ぎる

                  「子どもたちはちがうことを試しますし、間違えます。すべてを脳に詰め込むことはできないのです」とマシューズ博士。

                  新しいことを作り出すには、偶然が必要。退屈さえ克服すべき障害となり、子どもが問題を解決するための筋肉を鍛えるのだとか。

                  かける言葉に気を付ける

                    「あなたはクリエイティブ」「あなたはアーティスト」といった言葉をかけるのはNG。そのかわりにマシューズ博士がおすすめするのは、的を絞った、具体的なほめ言葉。

                    たとえば、「この絵の色の混ぜ方がいいね」「あなたがピアノを弾いているのを聞くと、よく練習したのがわかる」といったポイントをおさえた言葉を選んで。

                    子どもに自分の興味を押し付けない

                      子どもに質問をして答えを聞き、彼らの好奇心に従ってサポートしてあげましょう。マシューズ博士はこう話します。

                      「子どものクリエイティブな力は強化されます。これは、詩人のマヤ・アンジェロウが『クリエイティビティを使い果たすことはできない。あなたが使えば使うほど、それは自分のものになる』と言っていたことと同じです」
                      「やさしさや感謝と同じように、クリエイティビティはどの年齢でも育てることができるのです」

                      ※この翻訳は、抄訳です。
                      Translation:mayuko akimoto
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