イギリスでは「不安とうつ病」が休職理由の上位4位に入っており、働く人の6人に1人が不安やメンタルヘルスに問題を抱えているそう。

本記事では、職場で感じる不安に焦点を当て、仕事や生活への影響や対処法を<ネットドクター>から紹介。「自分はまだ大丈夫」、「不安と向き合うのが怖い」と感じている人も、読みながら自分の状況を整理することに活用してみて。

職場での不安とは

仕事中に感じる不安や、仕事のことを考えたときに生じる不安感のこと。同僚との衝突、威圧的な上司、過剰な仕事量、ミスをして大変なことになるのではないかという不安など、過度に心配したり、悪い結果が起こるのではないかと恐れたりするような状況に反応して生じることがあります。

職場での不安が起こりやすいのは、何を期待されているのかあいまいな立場に置かれること、与えられた業務を時間内に果たせる自信がないとき、関わり方の難しい人と一緒に仕事をしなくてはいけないケース、会社などから十分なサポートを得られない状況下で責任だけが重いといった場合が考えられます。

不安は、誰もが感じことのある正常な感情です。不安には、危険、あるいはその可能性を警告し、脅威が存在するときに認識するのに役立ちます。

一方で、もし継続的または過度の不安が続いて仕事に影響してしまう、あるいは精神的・肉体的な健康に影響を与え、プライベートな生活を充実させ楽しむことができなくなるほどなら、何か対策をするべきかもしれません。

職場での不安を感じているサイン

仕事中、あるいは仕事のことを考えるときに、頻繁に不安な症状が出る場合は、職場での不安を感じているのかもしれません。一般的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 仕事をしたくないと強く感じる
  • しなければならない特定のタスクのことを考えないようにする、あるいはその反対に、そればかり考えてしまって頭から離れない
  • 質の良い睡眠がとれない
  • すぐに腹が立つ、あるいはイライラしてしまう
  • 友人や家族を避けるようになる
  • 疲労を感じ、気分が沈み、やる気が出ない
  • 集中できない
  • 過度に仕事をチェックする
  • 吐き気や胃の不調を感じる
  • 筋肉痛や筋肉の緊張がひんぱんにある
  • 落ち着かず、ピリピリしてしまう
  • パニック発作や強い恐怖感を起こす

職場での不安が長引くと、少しずつ自信が失われていきます。そのうち仕事での自分の強みに気づかず、短所にばかり目がいくようになり、困難な状況になったときに対処する能力が低いと思い込んでしまったりするそう。

不安のせいでつい先延ばしにする、すぐ気が散る、間違った決断をおそれるあまりに判断ができないということになると、仕事の効率にも影響が出てしまいます。

さらに特定のタスクについて心配ばかりするようになり、必要以上に大変だと感じたり、最悪の事態ばかり想像してしまうことに気づくかもしれません。ひどい場合には、仕事とプライベートとの切り替えができなくなり、仕事の結果や締め切り、タスクや考えられるいざこざなどを、四六時中心配してしまうことも。

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Malte Mueller//Getty Images

職場での不安の対処法

ここからは、職場での不安を経験しているあなたに知ってほしい対処法をお届け。

1.自分の不安について誰かに話す

タイトな締め切りや多すぎる仕事、休みの取れない職場環境など、もし自分の不安感を悪化させる原因がわかっているなら、それらをリストアップして上司に相談してみましょう。

上司に限らず、友人や家族、セラピストやかかりつけの医師にでも、自分の不安のこと、感じていることを話すだけで、かなり心が楽になるものです。

肩の荷物をおろして、自分の悩みを別の視点から見ることができるようになれるはず。安心して話せる人が身近にいなければ、電話やSNSで相談にのってくれるサービスもあります。

働く人の「こころの耳相談」

2.不安に対処する戦略を学ぶ

自分を不安にする要因に気づくと、難しい不安の感情と向き合うことも楽になってきます。どんなことがきっかけで不安が起きるのか、具体的な例をメモしてみましょう。不安を感じているときに、同時にどんな感情が湧いてくるか書き出すのも役に立ちます。

研究によると、人が不幸になったり不安になったりするのは物や状況によってではなく、それらについての考え方であることがわかっています。自分や他人に対して現実的で公平な考えを持ち、自分に非現実的な期待をかけたり、自分の力ではどうにもならないことに責任を負ったりしないようにすることが、不安の軽減につながるでしょう。

3.境界線をきちんと引く

もし不安を感じているなら、仕事と生活のバランスを保ち、私生活をおろそかにしないことがとても重要です。

不安があるためにタスクに時間がかかりすぎ、その結果、仕事の時間が増えるということもあります。これが長期的にはさらに不安な気持ちやストレスを悪化させる場合があり、だからこそ境界線をきちっと引くことが大切なんだとか。

たとえば毎日始業・終業時間を守る、昼休みをきちんと取るなどは、不安に対処するために良いだけでなく、長い目で見て仕事の効率を上げることになるそうです。

4.自分の権利を知ろう

上司や会社が事情を理解してくれない場合は、会社の規則や法律を調べてみましょう。もし規則違反だと思ったら、まずは人事部に相談してみるといいかもしれません。法律はあなたの味方です。

たとえばイギリスでは、メンタルヘルスの問題を抱えている人を守るため、必要に応じて雇用主が労働環境の調整をするなどのサポートをしなければならないと法律で決まっています。日本でも労働基準法や労働安全衛生法で、安心して快適に働ける一定の基準が定められており、全国に労働相談センターが設置されているので、悩んでいる人はぜひ相談を。

5.職場の支援を利用する

会社の健康やメンタルヘルスのプログラムに目を通して、その方針や利用可能なサポートの選択肢を把握しておきましょう。支援システムがあれば、積極的な利用を考えてみて。

6.自分の恐怖に向き合う

人は、恐れていることを避けようとしがち。それでしばらくは不安から逃げられるかもしれませんが、長期的にはあまり役に立たず、そのうち働くことが辛くなってくるかもしれません。

仕事で先延ばしにしてきたことがあれば、思い切ってやってみると、大きな安心感が得られるだけでなく、最悪のシナリオが起こるかどうかを確かめることができます。仮にそうなったとしても、行動を起こしたことで解放感が得られ、自分に対する自信や対処能力について自信もつくでしょう。

7.マインドフルネスを行う

自分の不安感をコントロールできなかったり、職場にいないのに仕事のことばかり考えてしまうと感じるときに試してみてほしい方法。

人は“今この瞬間”に集中すると、この瞬間は安全であることに気づき、気持ちが落ち着き、地に足がついたように感じることができるのだそう。精神は筋肉のようなもので、「どこにフォーカスするか」を選ぶのには少し訓練が必要。

たとえば歯磨きのような日常の作業に集中したり、本格的な瞑想をすることが、そんな能力を高めるのに役立ち、仕事場以外では「スイッチを切る」ことができるようになっていくのだとか。

8.寝る前のルーティンを作ろう

過度の不安を感じると、なかなか寝付けなかったり、夜中に頻繁に目が覚めたりすることがあります。十分な休息をとっていれば、不安な気持ちを含め、人生の困難に対処するためのリソースが増えるはず。

さらに、神経系を落ち着かせて回復させることで、不安感を軽減することができます。たとえば、ゆったりくつろげるような寝る前のルーティンを作るのが役立ちます。

ぬるめのお風呂につかる、シャワーを浴びる、紙や日記に心配なことを書き出す、心地よい寝室を整える、そしてスマホなどの画面を見るのを避けるなど、すべて睡眠の質を上げることにつながります。眠れないときは読書や音楽を聴くなど、心が落ち着つかせてリラックスできることを試して。

9.体を動かす

ワークアウトなどで体を動かすことでも、不安が軽減されやすくなります。不安を減らす脳内化学物質が生成されるため気分が明るくなり、自分自身についても、難しい問題に取り組む能力についても、前向きに考えられるようになるでしょう。

10.食事に気をつける

不安なときには、ついお菓子やスナック、コンフォート・フード(幸福感や癒しを与える食べ物)やお酒に走りたくなるもの。短い間ならちょっと気分がまぎれるかもしれませんが、長期的に見たら不安を悪化させてしまうのだそう。

規則正しく、血糖値のバランスがとれるような健康的な食事を心がけて。カフェインや砂糖、アルコールの過剰摂取をしないことも、不安な気持ちを減らしていくのに役立つそう。

11.リラックスできる方法を知る

リラックスできる時間をつくることも、不安による精神的・肉体的な症状をやわらげます。まずは、ビジュアライゼーション(安心な環境にいる自分を思い浮かべたり、自信をもって今後の状況に対処している自分を想像する)や、呼吸のエクササイズ(4カウントでゆっくり息を吸い、6カウントで息を吐くなど)などを試してみて。

仕事や通勤途中、夜にベッドに入ってからでもできるはず。このようなエクササイズを、特に不安を感じていないときでも続けるうちに、本当に必要な場合にすぐ役立つようになるのだとか。

12.専門家の助けを求める

人は誰しも不安や恐怖を経験することがあります。でも、不安がひどくなってしまったり、長く続いていて生活の別の面にも悪影響が出始めたなら、セラピーを探してみるといいでしょう。自分の不安を理解してそれを克服するのを、プロが助けてくれます。

この翻訳は、抄訳です。
Translation: Sasaki Noriko(Office Miyazaki Inc.)
NETDOCTOR