課題や壁が日々立ちはだかり、それを管理するよう求められる私たち。では、自分の疲れ具合は、どうやって知ることができるのでしょう?

人生のToDoリストに目をやれば、「休暇が必要」という考え以外の考えが脳内にあること自体が奇跡と言えます。しかし、コロナ禍で私生活や仕事、自分のための時間の境界線が曖昧になっていることや、都会の喧騒から逃れようとしていることを考えると、休暇というものは、虹色のユニコーンがいる魔法の世界で作られた、非現実的な願い事のように感じるかもしれません。

仕事を休むときには、「自分は本当に休暇を必要としているのか」「ひと晩ぐっすり眠れば大丈夫なのではないか」といった、ある種のマゾヒスティックな自問自答があります。

tired businesswoman with face mask sitting indoors in office, feeling headache
Halfpoint Images//Getty Images

リモートワークは、たとえ一日中仕事のことで頭がいっぱいになったとしても、サボり好きにとっては夢のように映るかもしれません。繁忙期に有給休暇を申請することに罪悪感を感じ、職場復帰の前には不安に襲われ、有休を取る価値があったのだろうかと疑念を抱いてしまう人も。

デンバーの心理学者で、燃え尽き症候群を専門とするデビー・ソーレンセン博士は、こう語ります。

「長めの週末や、たった20分間の休憩のためでさえ、仕事の手をいったん止めることが難しいこともあります」
「プレッシャーのせいで中断することすらできないような気になったとき、そんなときこそ、休暇を取るべきなのです」

一方で、モルディブの水上コテージに1週間滞在したからといって、燃え尽き症候群のメーターがゼロになるわけではないとのこと。

セラピーを提供するサイト「Together Cognitive Behavioral Therapy」の創始者である心理学者のアメリア・アルダオ博士は、「燃え尽き症候群から抜け出すためには、メンタルヘルスに対する多大な努力が必要です」とコメント。しかし、休みをとることが、そのためのいい出発点となるそう。

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とはいえ、ToDoリストに追われる生活のなかで、「ひと息つけるのはいつ?」という疑問を持っている人も多いはず。ここでは、不安やストレス、燃え尽き症候群を専門とする心理学者に、今すぐ休みが必要なことを示す、10のサインについて解説してもらいました。


【INDEX】


休みが必要なサイン10選

1. 疲れ切っている

とにかく疲れてヘトヘトだと感じているなら、今すぐ休みが必要。ソーレンセン博士は、「もう何もできないと感じ、ひと晩寝ても改善しないほど疲れ切っているなら、休暇を取るべきです」とアドバイス。

2. イライラする

燃え尽き症候群は、生意気な態度を敵意むき出しの苛立ちに変えてしまうことが。イライラしたり、我慢ができなくなったりするのは、自分にとっても周りの人にとってもよくないこと。

敵対意識や衝突は、友人や家族、パートナーや同僚との波長を狂わせ、引きこもりの原因にもなるとアルダオ博士は指摘。

3. 考えがまとまらない

常に集中力に欠け、頭が浮遊しているような感覚は、今すぐ休暇が必要なことを示すサインだとソーレンセン博士。さらに、仕事や私生活で疲れ切っていると、たとえばバースデーカードを送ることやハンドソープを買うことなど、些細なことでも乗り越えられないように感じてしまうそう。

仕事に集中するのが難しいときに休暇の計画を立てるのは、大変なこと。アルダオ博士は、「旅行の計画はある種、外部で行う仕事とも言えます。疲れ切っていて、何をするのにも大きな障害を感じていたら、休暇の計画を立てることは後回しにしてしまうでしょう」とコメント。

mature woman looking out of the window at home
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その場合は、小さなことから始めましょう。数日間、朝か夜の1時間を使って、休暇の計画を立ててみて。もしそれも難しいようだったら、ステイケーションや近隣の日帰り旅行、もしくは家でゆっくりしながら自分の好きなことをしたり、何もしないでボーッと過ごしたりするのも効果的。

4. 輝きを失っている

情熱を失ったり、好きなことが楽しめなくなったりすることが、うつ病や燃え尽き症候群の兆候であることは確か。その状態に陥ると、生産性が著しく低下し、好きな仕事でも新人の頃のような失敗をするように。

ソーレンセン博士によれば、こうした傾向は、休暇を取ってゆっくりするべきサインなのだそう。でないと、仕事や愛する人との距離がさらに離れる危険性が(つまり、自分時間は仕事にとってもプライベートにとっても不可欠ということ)。

5. 睡眠が乱れている

ソーレンセン博士とアルダオ博士は、自分の睡眠習慣に目を向けるよう提案。

仕事の後に長時間昼寝をしたり、急に眠れなくなったりするように、午後のルーティンが正常に機能しないときは、体が変化を求めている明確なサイン。疲れに寄りかかってしまうのではなく、エネルギーを得るために日々のルーティンを見直してみよう。

6. 不健康な習慣に陥っている

アルダオ博士は、「このほかにも、私たちが自分自身にしている行動のなかで、燃え尽き症候群のサイクルを助長したり、悪化させたりするものがあります」と解説。

日常生活のなかで、携帯電話にかけるお金や時間が増えているなど、新たな傾向に気付いたら、何かがおかしいというサイン。

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アルダオ博士によると、パンデミック中のストレスが原因で、アルコールの摂取量が増加したり、食事を抜いたりするなど、不健康な行動が習慣化している人が増えているという。今からでも遅くないので、そうした悪しき生活習慣をぜひ見直してみて。

7. 自分自身と駆け引きしている

ただ休暇を取るのではなく、「次の祝日まで頑張ってから長期休暇を取ろう」と考えたことのある人はいるだろうか。言い方はよくないが、この考えは実は“ブラックホール”。

アルダオ博士は、「私たちは心の中にこうした誤った考えを設定してしまい、それにより自分自身を追い詰めてしまうのです」と説明。来月は3連休があるからといって、今必要な休みを先延ばしにするのは簡単だが、長い目で見るとストレスがどんどん溜まってしまうので、逆効果になってしまうというわけ。

8. 復帰へのストレスが大きすぎる

有休後やバカンス後の最初の日を想像すると、正直なところ、やる気がなくなるという人は多いはず。現実に戻った瞬間に、そもそも有給休暇を使ったこと自体が怖くなってしまうのも無理はありません。

復帰後の受信トレイは未読メールでパンク寸前だし、自分がいない間に同僚が仕事をカバーしてくれいたのではと申し訳ない気分になったり、今度はどうやって追いつこうかとストレスを感じてしまったり。ソーレンセン博士は、それをプロセスの一部として受け入れるべきだと話します。

「仕事に復帰する際には、調整期間があることを心得ておいてください。上記のように感じてしまっても構いません。そして、2、3日かかったとしても、すぐに元の状態に戻れるはずです」

9. とにかく忙しすぎる

「『忙しすぎて休む暇もないし、とにかく頑張り通すしかない』と自分に言い聞かせることがありますが、それが大きな負担になっているのです」とソーレンセン博士は警告。

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休んだら世界が止まってしまうような気がしたら、心の中で真っ赤な警報が点滅している証拠。煮詰まる寸前の状態なので、要注意。

10. 負のループに陥っている

アルダオ博士は「休暇の取得を妨げる大きな要因のひとつは、ストレスと不安のサイクルです」とコメント。燃え尽き症候群とは、「やる気がでない」「疲れた」「打ちのめされた」という感情が大きなストレスを生み、さらに疲れてしまうという負のループにハマってしまうこと。

このループに陥っていることに気付いたら、すぐにでも「意識的に抜け出す努力をしなければなりません」と博士。また、リモートだからといって燃え尽き症候群にならないわけではありません。

ではここからは、燃え尽きやメンタルのブレイクダウンを未然に防ぐためのステップをご紹介。

燃え尽きを防ぐ方法3選

計画を立てる

アルダオ博士とソーレンセン博士は、限界点に達するのを待ってから一時停止するのではなく、定期的に休暇を取るようにした方がよりサステナブル(持続可能)だという。休暇といっても、必ずしも“死ぬまでにやっておきたいことリスト”に載っているような大規模な旅行をする必要はありません。

アルダオ博士は、「パジャマを着てソファで一日中仕事をしていた人が、突然1カ月間の壮大な旅の計画を立てるのは容易ではありません」「魔法のような解決策は存在しないので、燃え尽き症候群から抜け出すには、少しずつ行動を起こすことが大切なのです」とコメント。

一歩一歩、少しずつ前に進むのが吉。たとえば、隔週の金曜日に半休を取る、週末の3連休などを使ってステイケーションを予約する、親戚のいる街へドライブ旅行を計画する、といったプランはいかが?

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自分のパターンを知る

ソーレンセン博士は、「休みが必要だと気付く前に休みを取らなければならないので、最初のうちは難しく感じるかもしれません。しかし、自分のペースで行動することが大切です」とアドバイス。

不安になったりイライラしたりと、ストレスを感じる兆候があれば、体の声に耳を傾けてみて。回り道をしてでも、自分のための時間を確保しよう。もし1日のうちで気が緩む時間帯があれば、近所を少し散歩したり音楽に身を委ねたりすることを、毎日の習慣にするのも◎。

定期的に休暇をとる

つねに多忙で刺激が多すぎる状態にある人にとっては特に、休みを取ることや、ほとんど何もしないでいることは、最初は不自然に感じるかもしれません。しかしアルダオ博士は、大きなブレイクダウンや燃え尽き症候群を避けるためには、定期的に休暇を取ることが重要だと強調。

「こうした行動があなたの人生を変えるわけではありませんが、人間だれしも、休みを取る必要があります。休暇を取ってリラックスし、再び仕事に戻る方法を見つけなければ、心の安定は得られないでしょう」

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Masayo Fukaya


From: Women's Health JP