外資系企業での勤務、海外での就職など、グローバルな環境で働く機会が増えている昨今。文化も言語も違う国で働くことは刺激的で楽しい反面、各国の仕事上のルールや文化背景が異なるため、理解しあうことができない面もあるはず…。 

そこで今回、海外で自らの力で道を開き、国際的な環境でチームプレイヤーとして活躍する日本人女性に「海外でキャリアを築いていくコツ」を伺いました。キャリアだけでなく、人生においても新たな視野が広がるアドバイスは必見です!

パリの最高級老舗ホテルで文化価値を発信

大岡陽子さん

「ホテル ル・ムーリス」コミュニケーション部マネージャー

幼少期をフランスで過ごした後に帰国。その後、パリの大学院でコミュニケーションを学び、仏ラグジュアリーブランドでインターンシップを経験。その後11年間に渡り「ホテル ル・ムーリス」に勤務。仕事ではフランス語と英語を主に使用し、35カ国出身の、450名の同僚と働く。
海外でキャリアを積む先輩に聞く! 外国人同僚と、心地よく働くために知っておきたいお仕事ルール
Yoko Ooka


コンコルド広場の近くにある、パリ最高級のホテル「ル・ムーリス」。1835年の創業以来、世界の王族やアーティスト、知識人が華麗な歴史を彩ってきたホテル。そんな「ル・ムーリス」の文化価値を、世界中に発信するのが大岡さん。

ジャーナリストに向けたPR活動、イベントの開催、ファッションブランドや美術館とのコラボレーション企画などの文化発信活動から、歴史的資料の管理や、社員に対してのコミュニケーションなど多岐に渡る業務をこなしています。

毎日のお仕事スケジュール例

海外でキャリアを積む先輩に聞く! 外国人同僚と、心地よく働くために知っておきたいお仕事ルール
Yoko Ooka
(左)研修生たちと(右上)ホテル ル・ムーリスのロビー(右下)レストラン ル・ムーリス アラン デュカス


9:00 コミュニケーション部の同僚とミーティング。

9:30 各部署のマネジャーと朝礼。その日の予定など、1日の情報を各部署と共有。

10:00 ジャーナリストへのホテル見学の対応、サプライヤーとの打ち合わせなど。その後、他のミーティング対応や、メールの返信をする。

15:00 新メニュー開発に伴う試食イベントの開催などに関し、飲料部と打ち合わせ。その後、ジャーナリストとのミーティングや、メール、電話などに対応。

18:00 週に一度、ラグジュアリー業界の他の会社のコミュニケーション部の人たちと会い、情報交換。

20:00 帰宅

国際色豊かな同僚と働く秘訣

――様々なバックグラウンドを持つ人々と働く中で、苦労したエピソードを教えてください。

入社当時、初めて就いた仕事は「総支配人秘書」でした。当時の私の仕事内容の一つは、代理人として総支配人の指示や命令を部長などに伝達すること。

時には厳しさを込めたニュアンスで伝えないといけないのですが、大学院を卒業して間もない私にはとても難しく、総支配人からは「まだまだダメだ」と言われていました。一方で、強い言い方をすることに慣れてしまい、日本人的な婉曲な言い方ができなくなってしまうのでは、と恐く感じている自分もいたんです。

そんなときに総支配人から「キャリアを積んで成長していきたいなら、嫌われることを避けては実現できない」と言われて。たしかに当時の私には「良い顔をしていたい」「よく見られたい」という気持ちがあったのですが、そこで「自分のミッションや責任を、きちんとこなすことが大事だ」と気づきました。

今では、日本人的・フランス人的な部分のオン・オフを切り替え、メッセージを伝えることができるようになりました。

暗黙のお仕事ルール in フランス

大岡さんが実際にフランスで働いて感じた、現地でのお仕事の常識を教えてもらいました。

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Yoko Ooka

自分の意見を持ち、自己表現をすること

現在の職場では、自分の意見を持っている人が重宝されていると日々感じます。人生哲学やポリシーを持っているだけで、「この子のことをもっと知りたい」、「この子は、こんな時どう考えるのだろう」と思ってもらえます。

知らない人にも積極的に挨拶を

職場ではお客様でも同僚でも、誰かにすれ違うたびに挨拶をします。実際に、「ボンジュール(こんにちは)」と「メルシー(ありがとう)」は、一日の中で一番多く発している言葉です。日本では知らない人に挨拶をすることは少ないですが、このような社交性はフランスでは重要です。

名刺はすぐには渡さない

名刺をすぐに渡さないことも大事。まずは、「今日は天気がいいね」など、気軽な会話から始め、ビジネスの話になったときに、名刺交換をします。

このようなちょっとした習慣でも、特にラグジュアリー業界では「エレガントかどうか」「仕事ができるか」ということを見られていると感じます。

多文化の環境で働いたからこそ成長できた

フランスで働くことで、大岡さんご自身の成長や変化に繋がったことを教えてください。

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Yoko Ooka

ポジティブマインドを学んだ

フランス語には「試さない人は何も得られない」という言葉があります。出来なかったら恥ずかしいのではなく、とりあえず挑戦してみる。プランAだけでなく、プランBやプランCもあるんですよね。

ただ、それには自分が掲げる理想の状態の雰囲気やリスクもイメージする「想像力」も必要です。このように情熱を大切にし、「とりあえずやってみよう!」という心意気を持つ人たちと働くことは、すごく楽しいです。

クリエイティビティが育った

「何か面白いことを考えたら、実行していい」というスタンスの上司を持ったことで、クリエイティビティが育ったと感じています。自分ができる最善のことをしたのなら、たとえ失敗したとしても上司が怒ることはありません。

そこから学びがあって、もちろん後悔もするのですが、ときには後悔が多いほうがいいなと思うんですよね。「次は、もっと良くしたい」というモチベーションに繋がるので。このような環境のおかげで、心に余裕をもってチャレンジを楽しむことができます。

外国人の同僚と上手に働くためのアドバイス

海外で仕事をするうえでは、同僚たちの国の文化を理解することが早道だと思います。習慣も大切ですが、何より精神性を知っておくとスムーズに理解が深まります。

また、同僚と良いチームワークを築くコツは「共有」すること。仕事の情報もですが、人気の展覧会・美味しいレストランについてまで、私は惜しみなく同僚と情報を共有しています。とにかく情報を共有し、良い仕事の時間を過ごそうとすることで、何十倍も楽しくなるかと思います!