ハンドを中心としたパーツモデルとして、現在NYを拠点にグローバルに活躍中の永瀬まりさん。ジュエリー、コスメ、ファッションなど、名だたるハイブランドの広告に多数出演し、美しすぎる手とその圧倒的な表現力が世界的にも高く評価されているまりさんに、海外を目指した理由やNYでの生活、プロが実践するハンドケア法を教えてもらいました!

instagramView full post on Instagram

ハンドモデルになったきっかけは?

10歳の時、母の勧めでキッズモデルの事務所に入ったのがきっかけです。それからモデル、タレント、女優の事務所を転々としまして、演技を学んだり、歌やダンスを習ったり、レッスンもいろいろ受けたんですけど、なかなか芽が出なくて。高校3年生の頃ですかね。その道を目指している人はすごく多いので、目立った成果を出すというのは宝くじに当たるくらい難しいのではないかと気づきました。

そこで、もうちょっとマイナーな、目指している人が少ないジャンルで、トップというか、目立つポジションを目指したほうがいいんじゃないかと思いました。その方が効率よく名前も売れるし、その世界のカリスマという形でインタビューや取材のお話もくるのではと、いろいろ試した中のひとつがハンドモデルだったんです。それまでは手当たり次第やってみて、ジュニアアイドルにも挑戦しました。売れなかったですけど(笑)。

“手“を専門としたモデルを目指した理由とは?

次は何をやろうかなと模索していた頃、たまたまテレビのCMで手のアップのシーンを見て、ハンドモデルという職業もあるなと思ったんです。その手と自分の手を比べたら、あれ? 私のほうが指は長いなと。それまで手のモデルになるなんて考えたこともなかったですが、CMを見て突然、できるんじゃないかなと思ったんです。

でも思い返せば小学校の時、テスト用紙を左手でおさえて、右手で一生懸命書いてとき、担任の先生がそーっと定規を持って近づいてきて、私の指の長さを測ったことがあるんですよ。生徒をいっぱい見てきた先生としては、こんな手の子供は見たことがないと思ったのかもしれないですけど、それ以来、手が大きいことがトラウマになってしまって、授業で手をあげる時も手を丸めて挙げたり、当時は傷つきましたね。子供ながらに手の形が人とは違うと思っていたし、思春期になってからも男の子より手が大きいのは分かっていたので、手のことはずっと気にはしていたと思います。

海外進出を考えたのはなぜですか?

約8年日本で活動して、一番の転機になったのが20歳の時。ニベア花王さんの「アトリックス」というハンドクリームの仕事です。そこで顔と名前を出していただいたことが大きなきっかけとなって、思い描いていたようなテレビ出演や取材、CMもたぶん150本くらい出させていただきました。

そうするともっと日本にないブランドや海外アーティストの方たちとお仕事をしてみたいという夢が膨らんできまして、25歳の頃に本格的に海外進出を考え始めました。そこから情報を集めたり、コネクションを増やすことに専念。ビザの準備がすごく大変だったので、結局2年かかって、27歳の時にやっとNYに越してきたわけです。

NYではどうやって仕事を軌道に乗せたんですか?

行こうと決めてからは、事務所にも営業してもらい、<Instagram>も海外向けに始めていました。NYで活躍しているハンドモデルを片っ端からフォローして、その人が仕事でタグ付けしていたフォトグラファーなども友達になって、今度NYに行くからテストシュートにぜひ呼んでほしいとか、できる限り連絡をしておいたんですね。

全部ゼロからのスタートになる覚悟はできていましたが、そういう準備を2年していたからか、いざ来てみると意外とみんな私のことを知ってくれていました。日本での活躍を見て憧れていたと言ってくれるハンドモデルの子がいたり、写真を撮りたいと連絡をくれるアーティストの方もいたり、到着してからはあっという間に仕事が舞い込んできたので、心の準備が追いつかないほどでした。こんな風につながっていけるのは、今の時代ならではですよね。10年前ならこうはいかなかったと思います。

NYでの生活で大変なことはありますか?

仕事はすごく順調でしたが、生活面はものすごく大変で。1年目に6回、引っ越しをしたんですよ。NYはとにかく高いので若い人たちはルームシェアをすることが多いんですね。最初は何も事情が分からないし、英語がまだほとんど話せなかったから、現地の人と住んだほうがいいのではと考えて、私もそうすることにしたのですが、いろいろな国の人と暮らすたびにトラブルが起きる…。

夜中までパーティなんていうのはザラですし、バスルームが壊れるとか故障系のトラブルだったり、ねずみがいっぱい出たり、予想外の事件が起きて大変でしたね。今年で3年目になりますが、全部で8回引っ越しました。あとでデポジットが返ってこないとか、途中で追い出されるとか、いろんなことを経験して、家のことで失敗するのが怖くなってしまって。3年様子をみて、ようやく落ち着いた感じですかね。やっと1年以上、一定の場所に暮らしています(笑)。

英語はどうやって習得しましたか?

ネイティブの先生とマンツーマンのレッスンを日本で受けていたので、基礎的なことは分かっていましたが、生活して、しゃべってみないと実際に使うのはなかなか難しいじゃないですか。だから毎回冷や汗をかきながら、実践で覚えましたね。NYでは学校もレッスンも一切行ってないです。最初の頃は日本人の悪い癖で、何か自分が悪いんじゃないかと、すぐ「I’m sorry(ごめんなさい)」と言ってしまっていたら、ある撮影がうまくいかなかった時に、私の英語力のせいにされたことがありました。

そんなはずはないし、仕事としてほかの子より劣ってもいなかったのに、どうしてこういう態度をとられるんだろうと。それでまわりのハンドモデルの子たちをよく観察してみたら、彼女たちはできることはもちろん、できないこともできると言うし、すごく堂々としていて、分からないことも分かっているように振る舞うんですね。

そういう人に対して、誰も冷たくは接しないことに気づいて、私も彼女たちの態度をマネするようにしました。英語が全然分からなくても、とにかくOKと言ってやってみる。もし指示と違っていれば、そうじゃないよと直してくれるから、そうだったのね、と分かっているふりをして堂々とやるという風に心がけていましたね。揉まれているうちに身についたと思います。

撮影現場の様子や雰囲気は日本とは違いますか?

ずっと憧れていたリチャード・バーブリッジさんというフォトグラファー界の巨匠や、イネス・アンド・ヴィノードさんという有名なデュオカメラマンなどにも撮っていただきましたが、NYで売れている方は皆さんすごく気さくで、性格がいい人ばかり。

ここに来るまでは厳しい世界のイメージが強くて、偉くなればなるほど怖いのではと思っていましたが、全然気取っていないし、若い人やアシスタントの意見も採用してくれる。NYではトップに登っていくまでの競争率の激しさやそこに居続ける難しさはすごくあると思うんですけど、ある程度のポジションにいる方はそういう経験をして、人格的にも素敵な人が多いので、仕事はすごくやりやすいなと個人的には感じますね。

NYで暮らしてみて、日本との違いを感じるのはどんなことですか?

アメリカ人はタフで、テンションがすごく高いじゃないですか。その中で仕事をしていくのは、この体力だともたないなと引っ越してきた時に思いまして。こちらの人たちは健康的で、みんなジムに行って鍛えているんですね。私は趣味のダンス以外、日本で運動は一切やっていなかったので、もっと体力をつけないと、彼らと対等には渡り合えないなと思って、今はジムに通っています。

日本では手以外のボディパーツモデルもやっていたので、足は細ければ細いほうがいいみたいな感覚もありましたが、こちらはモデルさんがある程度、肉付きもあり、筋肉質。日本の美意識とは少し違うので、それに合わせているうちに、体質も変わって、健康的になったような気がしますね。戦闘態勢、まずは体からみたいな感じです(笑)。

これから海外を目指す人へのアドバイスはありますか?

私は英語が苦手で海外旅行もしたことがなく、仕事だけに捧げてきた20代だったので、芸能やファッション業界のこと以外、何も知らなかったんですね。でもだからこそ無鉄砲にがむしゃらに、自分は絶対にこの世界で通用すると思うことができたのかなと。もちろんパリやNYの写真をたくさん見てきて、持てた自信ではありましたが、その後の生活はどうしよう、言葉は? 住む場所は? みたいなことは何も考えず、とにかくできるだけ準備をして、飛び出したんです。

そのために何度も引っ越しをしたり、苦労もしましたが、まわりを見ていると、準備を100%にしてからいこうと思っていると結局行けないというパターンもすごく多くて。海外に行きたいと思った時に、準備を完璧に整えるのはちょっと無理だと思うんですよ。だからある程度で飛び出して、あとは現地でどうにかなるという勢いがすごく大事。私も日本で思い描いていた成功と、こちら来てから思うゴールはまた違いますし、どういうトラブルが起こるか、予想できないことがいっぱいありました。

実際に来て、やってみなきゃ分からない。まず出てみて、そこで得るものがあるのではと思います。あとは何ができるかということだと思いますね。NYに住みたいと思っている人は世界中にすごくたくさんいて、ビザをとりたくてもとれない、働き口もなかなかない。そういう中で、言葉が話せることは住んでいればみんなできるので、それほど重要視されないのかなと。すでにここで暮らす人たちにはできない何かを持っていることが、一番強いのかなと思います。

今後の目標を聞かせてください

子供の頃から負けん気が強かったのか、何かで日本で一番になって、世界でも活躍するんだと思い描きながら、ずっと勝ち負けでやってきて。大人になってNYに来て、ある程度、満足したんですね。もう少し平和になったといいますか、日本でギスギスしていたわけではないですが(笑)、和気藹々とみたいなことを求めていたわけではなかったので、最近はこちらの同業者の子たちと仲良くやっていくのも、すごく楽しいなと思えるようになりました。

まだ私の手だと若すぎる、年齢層の高いハイエンドのブランドがいくつかありますし、年齢的にそろそろ系統が変わる部分もあると思いますので、いい感じにシフトしていけたらいいですね。いいご縁にたくさん恵まれて、いい経験をたくさんさせていただいて、機会があれば日本でも仕事をさせていただきながら、ベースはNYでしばらく頑張るつもりです。

では最後に、プロのハンドケア法をぜひ教えてください!

まずは乾燥を防いでいただきたいですね。ボディケアにも言えることですが、皮脂を取りすぎないように気をつけてください。私はなるべく合成洗剤は避けていて、コップ一個でもゴム手袋をつけて、洗剤を直に触らないにしています。日本でいつもシャボン玉石けんを爆買いして帰るんですよ。

シャボン玉石けんは、NYでも流行らせたいくらい大好きで、私は全身あれで洗っています。もちろん固形石鹸なら何でもいいというわけでもないですが、ナチュラルで優しいものを使って、油分を落としすぎないことが一番大事。そして手を洗ったら、ハンドクリームをつけるのを忘れないように。私はアトリックスを子供の頃から愛用していて、今はラインナップが増えて、夜用、日中用などがあるので、いろいろ使い分けています。

あと、紫外線はもちろん、仕事上、思いも寄らずぶつける、こすれる、誰かに何かされることが怖いので、一歩でも外に出るときは絶対に手袋をつけていますね。こちらではUVケアのために手袋をするという発想がないので、「マイケル・ジャクソンなの?」と聞かれたことも! 「彼は片方しかしていないでしょ」と言い返しましたが、それくらい夏の手袋は奇妙みたい(笑)。でも手を守るにはやっぱり手袋が一番です!


NYに挑戦し、リアルタイムで活躍中のまりさんが経験から学んだこと、海外を目指している人は参考にしてみてくださいね!

  • ・SNSを活用して、現地とつながっておく
  • ・準備はある程度で、あとは何とかなるという勢いも重要
  • ・自分にしかできない何かを持つ

あと、アメリカでのキャリアを考えているなら、まずは体力作りかもしれませんね!