6月のカバーガールは、エッジの効いたルックスで注目を集めるモデルの畠山千明さん。大学で保育を学んだあと、古着屋さんのスタッフとして働いていたところ、あるスタイリストさんの目に留まったのがきっかけで、モデルになったという異色の経歴の持ち主。モデルとしてのキャリアと美容師の旦那様と2歳の娘さんとの生活を両立しながら、自分らしさを貫くパワフルなイットモデル、畠山千明さんの素顔に迫ります!

――まずはトレードマークの髪形について、バズカットにした理由を教えてください。

初めてきたオーディションの話が、坊主が条件だと言われました。もともとエマ・ワトソンくらいのショートヘアだったんですけど、いくら短くても坊主となるとまた全然違うじゃないですか。それまでモデルをやったことも一切なくて、モデルがどういうものかも全然わからない、しかも母親でもありますし、周りににとやかく言われるのはイヤだなと思って回避しようと思ったんですけど、「坊主にしないのであれば、大丈夫です」と。その「大丈夫です」は坊主にしなくていいではなくて、「起用しません」の意味だったんですよ。それがものすごく悔しくて、その場で旦那さんに電話をかけました。そしたら「そこまで言われたら、もう坊主にしちゃえば。やってみて何か違うと思えば、髪なんて1日1ミリ伸びてくるんだからいいじゃない」とアドバイスをもらい、坊主にすることに。その企画が終わったら髪は伸ばすつもりで、娘が大きくなったら思い出として雑誌を見せたらいいかな、くらいに思っていたんですけど、坊主にしたら案件が多くなってしまったんですよ。でも子育てもしていますし、モデルの何がいいのかも、お金のこととかも、全然わからなかくて、このままだとうやむやのまま終わりそうだなと感じました。それで、せっかく坊主にもしましたし、ここまできたなら最後までやってみようかなと思って、事務所に入ったんです。

――外国人モデルが多い事務所に所属されていますが、そこを選んだ理由は?

めちゃくちゃ近所だったんですよ(笑)。徒歩5分くらいのところにモデル事務所があるっていうのは聞いていて、本当に何もわからなかったので、とりあえず近くに行ってみようって、病院みたいな感覚だったんです(笑)。まず話を聞いてみようと思って電話したら、「日本人はやっていません」って断られたんですけど、よくよく自分自身のことを考えて、私にくる仕事の話は、日本人か日本人じゃないかでいうと、日本人じゃないほうにカテゴライズされているだろうなと思って、「日本人なんですけど、容姿は日本人っぽくないので、とりあえず今から事務所に行きます!」って飛び込みで事務所に向かいました。無理だったら無理で、そのときはあきらめようと思って、「子どもがいて、娘が第一で仕事をしたい。モデルのキャリアというより、このままなあなあで終わるよりはちゃんと事務所に入って、実績というものを少しでも残していけたらと思っているくらいで、バリバリは働けません。オーディションも行けません」とありのままの今の状況を正直に伝えました。事務所も「うちは日本人の案件がないので、ちょうどいいですね」ってことになり(笑)、私も「ちょうどいいですね! がんばります」と返事したのですが、「とはいえ、事務所のみんなにも相談して決めるので、3日後くらいに連絡します」って言われたんですよ。それで家に帰って、改めていい事務所だったなと思って、もうここ以外考えられなくなっていました。3日後と言われていたのに、翌日のお昼にパンを持って「昨日はありがとうございました、どうなりましたか?」って聞きに行きました。事務所も「とりあえずうちでみることになりましたので、よろしくお願いします」と言ってくれ、それからもう1年。ご近所付き合いのようなノリでZUCCAに決まり、そこから仕事を始めて今に至ります。

――雑誌の記事で拝見しましたが旦那様とラブラブですよね。出会いを教えてください!

友達がインスタグラムに投稿した写真の隅っこに今の旦那さんが小さく写っていたんですけど、一目見て「あ、この人かっこいい」って思いました。でも、会ったこともなければ、もちろん話したこともない、連絡先も知らない。いろいろな友人に「遥さん(現・旦那様)と知り合いなのか」と聞きまくって、「知り合いです」という人をかき集めて、「私は彼が好きになってしまったので、あなたを使者として送ります。遥さんの美容室に行って、私の話を吹き込んで、反応を連絡して」と毎日1人ずつ派遣したんです。私、肉食系女子でグイグイいくんですよ(笑)。自分の道は自分で切り開くタイプなので、人からは一歩間違えたらストーカーだと言われていたんですけど、私的には悪いとは全然思ってなくて。でも当時の旦那さんからしてみれば、「それ、誰ですか?」みたいな。それでも使者を送るうちに、会ったこともないのに私が気になるようになったみたいで、お誕生日会に呼んでもらえました。そこから頻繁に会うようになって、お話しするようになったんです。私の中で「好き=付き合う」は100%だったので、どうにかして付き合いたいと思って、初めて上京したんですよ。古着屋さんで働いていたときは茨城から通っていたんですけど、東京で彼と一緒に住みたい、2人の家がほしいと思った瞬間に上京を決めて、不動産屋に行きました。その時点でまだ付き合ってもいなかったのに(笑)。そしたら運良く付き合うようになりまして、「よろしくお願いします、つきましては明日から家があるので、その家に一緒に住みましょう」って言ったら、あっちは「え???」って感じで(笑)。付き合って2日目から同棲したんですよ。

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Cédric Diradourian

――すごいですね! どんないきさつで結婚することになったんですか?

同棲したらもう彼と結婚することしか考えられなくて、「結婚して籍を入れるくらい、私の名字が変わるだけで、あなたは何も変わらないですよ、だから今から市役所に行きましょう」って、毎日のように「結婚したい、結婚したい」って言っていたんです。それから、付き合って10カ月くらいたった頃に始めて実家に連れて行きました。「この方が私の結婚したい人です」って紹介したんですけど、その2カ月後に妊娠したので、次に行ったときには「めでたく旦那になります」と言えました。結婚して、もう4年目になりますね。めちゃくちゃ仲良しです♡

――モデルの仕事と子育てをどう両立するか、悩んだりしましたか?

私自身、仕事か子育てか、という思考はまったくないです。天秤にかけることは絶対にありえない。天秤にかけたとしても家族や娘のほうが格段に上になります。子どもを産んでからモデルになったというのも、タイミング的によかったですね。いろんな人に話しているんですけど、本当に子どもってめちゃくちゃかわいいんですよ。大人の汚れた心を浄化してくれる存在。結婚するかしないか、子どもを産むか産まないか迷っているみたいな話をよく聞くんですけど、産んだあと仕事をするのは人それぞれだと思いますけど、結婚も出産も本当にすばらしいと思います。私は会う人会う人に「痛いし、きついけど、ほんとにいい経験だから」とおすすめしています。職種ありきで、一概には言えないですけど、今って子どもを産んでも仕事はできる環境じゃないですか。愛する人と結ばれて、ワンランク上の関係を結ぶってことはすばらしいと思うし、いろんな人に結婚したいと思うならしたほうがいいですよと勧めています。

――仕事と家庭を両立するための秘訣ってありますか?

子育てするにあたって母に言われたのが「仕方なく子どもと離れなきゃいけないときもあると思うけど、それが子どもにとっても大切な“仕方ない”ことなのか、ただの自分勝手で“仕方ない”ことになっているのか、考えて生活しなさい」ということ。娘にもプラスになることだったら、それは保育園に預けてでもやるべきだし、そのために離れる時間ができることは仕方がない。でもやっぱり大切な時間じゃないですか。仕事を始めるにあたっても、最初のうちはキャリアがないから、キャリアを積むためには仕方がないこともあるけど、自分自身のスタイルをちゃんと確立して、物事をわかった上で仕事をしたほうがいいということも言われましたね。平日の保育園の送り迎えの時間と土日は娘の時間なので、なるべく仕事はいれないとか、きちんと決めています。

――旦那さんが一番尊敬する人は千明さんだと雑誌で拝読しましたが、結婚生活をうまく続けるコツを教えてください。

相手のことを尊重して、毎日思いやりを持って接しているから長続きするんですかね。お互い人間的にまったく違うんですよ。彼からすると、このグイグイいく性格がものすごくうらやましいし、尊敬するみたい。私からすると旦那さんは縁の下の力持ち。忍耐強く、底なしに優しくて、人に対して思いやりがあるんです。怒らないし、物腰が柔らかいし、努力家ですし、私にはない考えを持っているので、私もすごく旦那さんを尊敬しています。一番尊敬する人は母ですけど、その次に旦那さんですね。あとは、毎日たくさん話をすることですかね。仕事のことや娘のこと、いろんなことを話します。私たち夫婦って、沈黙の間がないくらい会話するんです。夫婦特有の冷める期間みたいなのもなくて、まったくケンカしないですね。子育てをする上で絶対に大切にしようと夫婦で決めたのが、素直になることと「ごめんなさい」と「ありがとう」をきちんと言えること。となると夫婦間でもそうするべきで、悪かったと思ったら素直に謝るのがうちのポリシー。ケンカってお互いの心をほじくりあうだけなので、無駄なケンカはなくそうって話し合いました。私、旦那さんと結婚するまではすごい女王様気質で、使者を使わせるとか言っている時点でわかると思うんですけど(笑)、ちょっとわがままな女だったんです。旦那さんと出会って、こんなに優しい人がいるんだって初めて知りました。優しい人に向かってワーって言っても、言い返されないから、こっちばかり言い過ぎてスミマセンみたいな感じになるんですよ(笑)。だから私もだんだん人間的な感情を取り戻してきて、こうなりました!

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Cédric Diradourian

――結婚や出産で自分が変わったなと思うことはありますか?

人生の優先順位が娘や家族になりました。自分自身より上です。私、こう見えてもともと尽くすタイプというか、人が笑っているのを見るのが好きなんですよ。自分のために生きているときって、どこか防衛線を張って、自分が傷つかないように、何かに刺激されないようにピリピリしていたんです。でも今は人に対して優しい気持ちになれる。そうすると周りに優しい人ばかりが集まるようになって、助けてくれるので、助けてほしいときは助けてほしいって言うようにしています。子どもを生んですぐは、何でも自分でやらなくちゃって思っていたんですよ。まだ母親になりたてだったので、独身時代の強がりな自分をうまくコントロールできてなかったんです。勝手に東京に出てきて、勝手に子育てしているんだから、母にも迷惑をかけたくないし、周りにとやかく言われるのもイヤだと思って、ひとりで娘を育てる気持ちでいたんです。今思うと謎なプレッシャーをひとりで感じて、頑張りすぎていたんだなと。1人で頑張っていることがしんどくて、辛くて、だんだん余裕がなくなって、いろんなことに対しておおらかな気持ちでいられなくなったときに、余裕がある人に手伝ってもらえればいいんだって気がついたんですよ。旦那さんに頼ったり、事務所の方にサポートしてもらったり、それが事務所に入るきっかけにもなったんですけどね。100%は自分ではできないじゃないですか。人間いつ死ぬかもわからないのに、ひとりでガチガチに頑張りすぎて死ぬんだったら、もっとほわほわした気持ちで死にたいなと思うようになりました。せっかく娘や旦那さんとのいい関係ができたんだから、自分自身でカラを破っていかないといけないんだなと思って。今は頼れる存在には頼っていいんだなと思える自分がいます。

――結婚していちばんよかったなと思うことは?

1人じゃなくなったことですかね。何かあったときにやっぱり身近に人がいてくれる、自分の味方がいてくれるってすごく心強いなと思います。私もやっぱり女性ですし、まだ26歳ですし、へこたれるときも泣きたいときもあるんですよ。そうなったときに話を聞いてくれるパートナーがいてくれるってことは、しかもいつ別れるようなわからないパートナーではなくて、法律で結ばれているパートナーじゃないですか。その保証されたパートナーに100%頼れるっていうのが私的には大きいですね。肉食系女子も疲れるときはあって、というより肉食系ゆえに疲れることがあるんですよ。そういうときに大丈夫だよって言ってくれる存在がいるって、心強いです。支えになります。それに尽きます!

――インスタグラムでは母としての顔も披露されていますが、どんなモデルを目指していますか?

仕事に限らず、一緒にいる人を幸せにできるような存在を目指していますけど、仕事でいえば、現場で愛されるモデルになりたいですね。まだ始めて1年ですし、正直、専門的な詳しいことを言われてもよくわからないですよ(笑)。海外に行く気もないですし、私はいただいたお仕事を受けるのみ! 「私、ママなんですよ」みたいなことも絶対にやりたくなくて、でも隠すこともないじゃないですか。カメラの前ではかっこつけてツンとしたりしていますけど、第一に考えているのは家族なので、モデルをやっているときのほうが非日常。普段はもう本当に悲惨ですよ! 毎日、保育園に遅刻しそうで、汗水たらしながらチャリンコに乗っています。だからインスタでも、公園で遊んでいるのを隠すことはしません。旦那さんも私も、たまたま表に出る仕事なだけで、いたって普通だと思っています。インスタでも母としての自分を見せたいとかではまったくなくて、むしろ自然な自分でありたいだけなんです。自分をよく見せようという気持ちはモデルとして撮影しているときはもちろんありますけど、それ以外ではまったくないですね。

――では最後に読者へのメッセージをお願いします!

行動することを恐れないでほしい。仕事もそうですし、子育て、結婚、自分自身の行動に自信を持ってほしいです。もし失敗して、周りにとやかく言われたとしても、また一から頑張ればいいし、一歩踏み出すことを恐れず、踏み出してみたら、そこから見える景色もあると思います。私もモデルとして踏み出してみたら、見えた景色もあるので。結婚も、してみたらこうだったんだとわかることがあると思いますし、結婚してみて、もし幸せじゃなかったら、今の時代、離婚すればいいんですよ。法律的に解消すればいいだけの話で、再婚だってできるわけですから。一歩踏み出して、やってみることですね。失敗を恐れずに、やってみることが重要だと私は思います!

娘さんの子育てをしながら、旦那様ともとってもラブラブで、モデル歴1年とは思えない快進撃を見せている千明さん。恋愛も仕事もこうと決めたら驚くほどの行動力で、自分の道を自分で切り開いているだけでなく、自分の手で運を掴み取っているところが、まさにFun Fearless Female。そんな千明さんを見習って、仕事も人生もグイグイいきたいですね!

撮影/Cédric Diradourian ヘア&メイク/粕谷ゆーすけ(ADDICT_CASE) スタイリスト/町野泉美 モデル /畠山千明(ZUCCA) 取材・文/江口暁子

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