思わずマネしたくなるワードチョイスや、ファッションセンスで常に注目を集めるkemioさん。「自分の幸せは自分で決める」、「自分だけのフィルターで魂から盛っていきたい」--そんな新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。

自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな視点からの“自己表現”についてインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。

 
MELON

――今日の衣装の感想はどうでしたか?

カバー撮影で着用させてもらったMIU MIUのルックは、実は僕がスタイリストさんにお願いして借りてきてもらったもの。袖を通すだけで気分が上がって、撮影中は本当に楽しかった!

あんなに丈の短いパンツを履くこともなかなかないので、新鮮でした。気分が乗っちゃって、色々ポージングも頑張ってみました…(笑)。

――今回の本のなかでも、「3年前と考えが変わった」とありましたが、自己表現の面で変わったことはありますか?

自分を表現することを細かく器用に考えるタイプではないので、根本は変わっていないんじゃないかな。でもやっぱり、コロナ禍を経て、社会の問題とか未来への不安とか考えたり、立ち止まることは増えました。

「いつ死ぬのかな」とかパンデミックを経験して初めて考えたし…これは暗すぎましたね(笑)。今までは未来のこととか考えずに今を生きているってタイプの僕でさえも、考えました(笑)。

あとは20代前半から20代後半に突入して、コロナ禍で自由に身動きが取れない期間があったことで家族と過ごす時間にリミットがあると感じるように。これまであんまり年齢とかは意識せずに生きてきたし、アメリカ社会で過ごしていると年齢を聞く・聞かれるシーンもほとんどないんです。地元の友達は結婚したり、子どもを持ったりする人も出てきて、「私たちもそういう年齢になったんだ」と意識するようになりましたね。意外とダルいフェーズに入ってきたというか、ダルくはないけど、私も大人になったんだなって(汗)。

――「自分を自由に表現できた」と思った瞬間やきっかけはありましたか?

やりたいことが明確になったときとか、努力してなにかを達成したときは自分を解放できているなって強く感じます。もともと私の夢はテレビに出てスーパーアイドルになることだったので、Vineでいろんな人から注目されるようになった当時は夢の扉が開いたような感覚で。

テレビに出るようになると、「Twitterだとおもしろいのにテレビだとおもしろくない」とエゴサするたびに自信をなくしたことも。Vineをやめたらフォロワーもどんどん減っていって、「kemio終わった」って言われたりして。誰も知らないところに行きたいと思って2016年にアメリカに引っ越して、そこから全てが変わりましたね。

なんて表現するのが正しいんだろう…。今は制限のない自由とか、なにを言われても動じない自由を手に入れられた気がする。自分に自信があるし、今までやってきたことに誇りをもっているから。

みんなからいい人に見られたいという時期もあったけど、今は全然。と言ってもそういう生き方を否定するつもりはないし、それも素敵な考え方だと思います。ただ、私は私のためだけのボスビッチでいたいっていう意識がすごく強いんです。誰かに指示されたくないし、見た目を含めてこうした方がいいとか言ってくる人に対しても「私の人生の監督は私なんだから、エキストラからの指示は受けない!」っていうマインドで生きています。

新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな面での“自己表現”をテーマにインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。
MELON

――kemioさんの自己表現の原点は何でしょうか?

具体的な原点は記憶の容量がバグっていて、覚えていないけれど…(笑)。昔から目立つこととか、自分を通して誰かが笑顔になってくれるのが大好きな子で。悪く言うと、小さい頃は周りの顔色を伺っている子だった、と周囲の大人から言われることも多いですね。

友達が「なにか楽しいことないかな」っていうのが個人的にはすごく嫌いで…。「楽しいとか楽しくないとかって自分が1番理解しているはずなのに、なんで周りにお願いするんだろう」って思っていたかも。だからこそ、やりたいと思ったことはやるし、口に出すようにしていたかな。自分軸で生きているっていうのは、昔も今も変わっていないと思う。

祖父母に厳しく育てられたのもあって、「好き」に制限をかけられることに対しての反動で「自分のためにやりたいの!」という気持ちが大きく育った気もする。小さい時、ディズニーとかプリキュア、カートゥーンネットワークとか大好きなのに、「男らしくない」って言われたり、制限されたりすることに正直「えっ?」と思っていた。

でも、僕って基本話を聞いていないタイプだから、「でも、それってあなたの意見ですよね? 僕の人生だから」ってGoing my wayに生きてきたら、今って感じです(笑)。

――自分を大切にするようになって、どんな変化がありましたか?

アメリカで生活し始めたときに、友達が「今日私めちゃくちゃ働いた」とか「I’m proud of myself(自分のことを誇りに思う)」って日常的に言うのがすごく衝撃的で。

日本で生活していると言わないじゃないですか。ごく一部の方はいらっしゃると思うけど、みんな基本は謙虚にいくんじゃないかな。僕も口癖で「全然」ってよく言ってしまうし…。

アメリカでは自分を褒めることをオープンにやっているので、そこからアメリカに徐々にかぶれつつ、自分を褒めるようになりました。他人から褒められることを求めているわけでもないけど、達成感が見えなくなっちゃうこともあるから。自信につなげることを意識して、自分で褒めてあげないと。

あとはアメリカで過ごすようになって、「こんなに自分中心で生きていいんだ」と思えるようになりました。気持ち的に上らない約束も日本にいた頃は「行かなきゃ、これでキャンセルしたら相手にも悪いな」と思っていたけど、アメリカの友達は「ごめん、気分乗らないから」って平気でキャンセルするんです。

最初は「えっ? ひどくない…?」と思っていたけど、みんなが自分の気持ちを大切にしているからこそ理解がるし、相手に対してなんとも思わないというか。

数年前、メディテーション(瞑想)をやっているパーソナルトレーナーさんが「みんなになにかあったときに力になりたいし、そばにいたいから、自分を整えることから1日を始めないと」と言っていたときには、これまで自分中心でなにかを考えたことなかったなって脱帽した。いや、自己中だから正直自分中心で考えたことありますけど。嘘つきました、ごめんなさい(笑)。

3年前は物事に対して言い切ることも多かったし、発言したことを一生背負っていかなくちゃみたいな気持ちが強くて。でも変動する世の中を経験して、時にはあっち行ったりこっち行ったり、揺れ動いてもいいんだなって思えたので、人生って矛盾ばっかりでいいというマインドに変化しましたね。

新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな面での“自己表現”をテーマにインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。
MELON

――ニューヨークで“居場所”を見つけてからは、自分をどんなふうに表現するようになりましたか?

ニューヨークに移る前はロサンゼルスに3年間住んでいて、友達はいたけどどこか寂しさを感じていたり、飽きてしまったりしたんです。1年中気候が同じなので、ファッションにおいても毎日が同じように見えてきてしまって。元々電車移動とか「次のお店に歩いて行っちゃおう」とかそういうノリが好きだったから、車移動にも飽きちゃった。

ニューヨークは東京みたいに人と人の距離が近いから、積極的になれた気がする。側から見たら自分の思いを英語でベラベラしゃべっている方だと思うかもしれないんですけど、実は心のどこかで「間違えるのが怖い」という思いもあったんです。

でも、ニューヨークの人ってみんな基本的に時間がないのでみんな急いでるんですよね。だから、自己主張しなければなにも始まらない。「誰か声かけてくれるかな?」って待っているのが通じない世界なので、自分でわからないことは「わからない」、やってほしいことは「やってほしい」って言わないといけない。そういう意思表示の大切さを学びましたね。

あとは、いい意味で他人に興味がなくて前を向いている人が多いなっていう印象がある。それに自分も大して人のことを見てないから、周りの目をあまり気にし過ぎないようにしてる。みんな自分を主役に思いがちですよね、まさに「#勘違い」ですね(笑)。でもそうやっていいように勘違いしてポジティブに生きられるのであれば、ある意味幸せなのかも。

新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな面での“自己表現”をテーマにインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。
MELON

――今感じる「ニューヨークにいる意味」ってどんなことだと思いますか?

パンデミック直前にニューヨークに引っ越して、すぐにロックダウン生活に。去年の夏くらいからお出かけしたり、行きつけのお店ができたりしたので、まだまだ新入部員 inニューヨークです。なので、まだ当分は住むと思いまーす(笑)。

で、ニューヨークにいる意味ですよね。ニューヨークは人種や文化、食事、ファッション、すべてがごちゃ混ぜで「なんでもアリ!」っていう感じの街なので、「私はこうです!」って宣言すれば、そうなれる街だと思うんですよね。

誰かに「あの子ってこうだよね?」って決められていくのではなく、自分で自分を布教していくというか。人の顔色を伺いながら生きていたところもあるので、「私はこうだけど、あなたは?」って感じで話が進んでいくニューヨークは個人的に生きやすいです。よりバッドビッチになった気がします。“BAD BITCH from TOKYO in NY”みたいな(笑)。

僕日本にいた時、“日本の悪口大将”みたいな感じで「ほんとダサーい」とか「アメリカみたいにゆるくいかない?」みたいなことばっかり言っていたんです。でも実際にアメリカで生活してみて、“外からの日本”を見たときにいいところと悪いところの両方見えたり、日本人としてのアイデンティティを大切にしたいって思えた。だから日本人というバックグランドを誇りに思いながら、ニューヨークでまだまだ生きていく予定です。

――“タブー視”されやすいタトゥーや体毛などについて発信するときに、意識していることはありますか?

誰かを直接的に傷つけないということと、「これはあるひとりの意見だから、全てを吸収しないように気をつけた方がいいよね」という言い方をするようにしています。価値観のシェアはしますけど、押し付けは絶対にしない。それは決めています。自分が小さいときに人から押し付けられることが、1番イヤな行為の一つだったから。発信者として一番気をつけなきゃなと思っています。

あとは「考えてください」っていう表現をよくするかな。答えを全て出すのではなくて、考え方はそれぞれ違って良いなと思っているので。

インフルエンサーという立場上、「僕は私はこうだと思います」って意思表示をしないと一生DMが来るんですよね。結果的に「もうしつこーい!」ってなって、自分自身が爆発しちゃうからこそ、その延長線上で発信しているみたいなところもありますね(笑)。意外と立場を表明すると、そういうDMが来なくなることもあるのである意味自衛になっている気がする。

新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな面での“自己表現”をテーマにインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。
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――社会にある固定観念にとらわれないために、大切にしている価値観を教えてください。

私の周りだけかもしれないけど、今の世代はいろんなセクシャリティや生き方にウェルカムな人が多い気がします。それって、みんなが自分のことに集中しているからだと思う。そこがボヤけてるときって他人に口出ししたくなるので、自分に寄り添い大切にすることが結果的に多様性を認める環境に繋がるんじゃないかな。

バイアスって主語が大きいときに生まれると思うんですよね。たとえば、「女性は」とか。ひとりひとりと向き合って、その個人を受け入れているからこそ、バイアスがないのかな。人間として人と付き合っているというか、これを言うとクサイけど(笑)。「この人は〇〇だから」「あの人は〇〇だから」ってあまり考えたことないのかも。

人って自分が知らないものに触れると、毛嫌いしたり偏った目線で見てしまいがち。受け入れてほしいという気持ちはあるけれど、「受け入れてくれないなら環境を変えればいいだけの話だし別にどうでもいい」というマインドでいるようにしています。

でも、受け入れてもらえないときは悲しいですけどね。(泣)って感じ。なので、いろんなトピックを知って知識を増やす心掛けはすごく大事。その知識は人と意見を交わす時に自分の考えを示す武器にもなるし、相手への優しさにもなる。「知らないからいいや」って流すんじゃなくて、知ることを習慣づけなきゃって。

アメリカに住んで衝撃を受けたのが、同い歳くらいの友達が政治やジェンダーについて生活の中で普通にディスカッションしていること。日本だと友達同士でそういう話をするのって、むしろタブーだったりしますよね。これはどこの国がどうって比べるのではないけれど、単純に自分が思っていることを言葉にして相手に伝えるっていう力がすごいなって思ったし、自分自身それがすごく欠けているなって気づいたんです。

日本社会で生きてきた僕にとって、物事を○か×かで考える思考法が染みついていて。でも、社会問題って○か×じゃないし、人間みんなバラバラの意見を持っているから、ぶつかるのは当たり前のこと。みんな言い争いを恐れていないし、そういうことがあるから変化って起こるわけで。

そこで「自分と違う」って関係を切る人もいるけど、「こういう考えもあるんだ」くらいで良いんだってアメリカにきて思えたんですよね。むしろいろいろな意見があって、それをディスカッションしていくことで物事がいい方向に進むということもあるんじゃないかなと思います。

――kemioさんの“なりたい自分”を教えてください。

床に物が散らばっていなくて定期的に掃除もちゃんとできて、食事もしっかりとって、1日8時間くらい寝られる、そういう健康的な自分になりたいです(笑)。

一冊目の本に「なりたいって言えば、秒」って書かせてもらったんですけど、これは実体験から感じていて。自分でこんなこと言うのはサムいんですけど、特別コネやお金があったわけではないし、愛に恵まれた家庭だったことは感謝なんですけど、自分のやりたいことを発信しておくのは大切かなって。当時はスーパーアイドルになりたいって言っていたのかな(汗)。今の自分が100%スーパーアイドルかと言うと怪しいけど、少しは近付けている気がします。

新時代の価値観を発信し続け、幅広い世代から支持されているkemioさんがコスモポリタンの7月カバーモデルとして初登場。自ら選んだショートパンツのルックとともに、さまざまな面での“自己表現”をテーマにインタビュー。3年前から変化したというしなやかなマインドの在り方や、発信者として大切にしている価値観について迫りました。
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ウチらメンタル衛生きちんと守ってかないと普通に土還りそう』が発売中!

15万部突破のベストセラー『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」から3年、完全新作エッセイが満を持して誕生。いろいろありすぎるこの世の中で呼吸するには、他人との距離感とか、自分との距離感とか、いらないものを手放してくとか、自分で自分をTakingケアしてかなきゃいけないっぽい。kemioが辿り着いた、新たな「セルフケア」哲学がギュッと詰まった書籍。


Photo/MELON(TRON) Styling/Tetsuya Nishimura Makeup & Hair/Itatsu Model /kemio Text/Yuki Otsuka

トップス ¥144,100[予定価格]、パンツ 参考商品(ともにMIU MIU/ミュウミュウ クライアントサービス)シューズ¥48,400(DIESEL/ディーゼル ジャパン)

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ミュウミュウ クライアントサービス Tel. 0120-45-1993
ディーゼル ジャパン Tel. 0120-55-1978