グローバルで、ヘルシーで、人生を楽しんでいる、今をときめくフィアレスな女性を毎月ご紹介するカバーガール連載。5月はダイバーシティを体現する、ブラジル生まれ、ロンドン育ちのモデル、ラウラさんが登場! 大学卒業後に日本でモデルになり、現在メキシコシティと東京を拠点に活動中の彼女は、昨年レズビアンであることをYouTubeにて公表。カミングアウトやマイノリティとして生きることなどについて、オープンに語ってくれました。

――日本でモデル活動をスタートされましたが、日本に住むことになったいきさつを教えてください。

イギリスで大学生だった頃、長期休暇の度に日本に遊びに来ていたの。日本の文化がとにかく好き。『ドラえもん』などのアニメや、京都とか着物とか、日本の昔と今のカルチャーを比べるテレビ番組がイギリスで放送されていて、よく観ていたわ。16歳のときに日本人の友達ができて、彼女が「日本にいつかおいでよ、すごくクールよ」って言っていて、ずっと憧れていたの。19歳のときにはロンドンに遊びに来ている日本人と友達になって、彼も「日本においでよ、案内するよって」言ってくれて。それで20歳のとき、初めて訪れたのが東京じゃなくて京都。それからはいつも京都に、あとは大阪も訪れたわ。22歳のとき、東京のナイトライフや若者のファッションなどのドキュメンタリーを作る大学のプロジェクトのために4~5週間日本に滞在したの。それが初めて東京に住んだときって言えるかな。プロジェクトを終えて、イギリスに戻って学校を卒業。その後すぐに東京のモデル事務所とコンタクトをとって、東京に戻って来て初めて契約をしたの。

――モデルになろうと思ったきっかけは?

実は私はものすごくシャイな人間で、人としゃべるのが苦手だった。ファッション撮影の学校を卒業したんだけど、ずっとカメラの後ろ側に隠れていたわ。日本に遊びに来るようになって、みんながモデルになればって言ってくれたんだけど、「無理無理! すごくシャイだもん」って(笑)。でもシャイな自分が嫌いで、そんな自分を乗り越えたくてモデルを始めたの。シャイな性格のせいで新しい人と出会う機会や、新しいことに挑戦するチャンスをなくしていると気がついたのよ。鏡の前で「私はシャイじゃない、自信があるのよ」って自分に語りかけていた。それから人に嫌われることを恐れなくなったわね。今でも撮影のときは緊張しちゃうこともあるけれど、家を出る時にシャイな自分を捨てて、“モデルのラウラ”になりきって撮影現場に向かうの。新しい服を着て、メイクとヘアを変えてもらったら、あとはもうがんばるしかない。今は前より自信を持てるようになったし、社交的になったと思う。モデルの仕事を本当に楽しんでいるの。いろいろな服を着ることやクリエイターたちと一緒に仕事をすること、ビジュアルづくりに関われるのはとても楽しいわ。

――その後、日本を離れてメキシコに行こうと思った理由を教えてください。

正直に言うと、日本に3年半住んでみて、自分のしたいことに迷いが出てきたから。最初に設定していたゴールを達成して、どこか同じルーティンな日々を暮していたの。それでたった2人しか知り合いのいないメキシコに行くことにしたわ。メキシコがLGBTQ+に関してとてもオープンな国であることをインターネットで知ったのよ。移住してから6カ月ほど経ったけど、友人はもちろん、キャリアを築く上でも良いご縁に恵まれた。大きな夢を追いかけている情熱的な人たちとの出会いが、私に新たなモチベーションと次なる目標を与えてくれたの。今は、東京とメキシコシティの2つを拠点に活動しているわ。

――自身のセクシャリティをどう位置づけますか?

自分のセクシャリティを一言で表現しようとは思わないけど、LGBTQ+という限定された言葉の中から選ぶならLのレズビアン。

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Cédric Diradourian

――いつ頃、どのようにして自分の真のセクシャリティに気づきましたか?

そうね、2年間にわたってお付き合いしていた男性がいたわ。言葉で説明するのはすごく難しいけれど、どこか女性に惹かれていたことは昔から気づいていたの。でも完全なレズビアンだと認めるのに躊躇する理由がたくさんあって、当時は自分のことをバイセクシャルだと表現していた。その理由の1つが家族。私はロンドンで生まれ育ったんだけど、とても信心深い家庭だったし、特に母は敬虔なカトリック教徒だったから、家族を失望させるんじゃないかと恐かったの。それに、私が10代の頃はまだLGBTQ+に関する“目に見えた情報”が少なかった。今でこそインターネットで調べられるし、テレビや雑誌でもLGBTQ+の人々に焦点を当てるニュースも多いけどね。それに幼い頃から家族や自分の子どもが欲しいとずっと思っていたから、結婚しないと家庭は築けないと思い込んでいたし。だから、男性との交際もしてきたの。もちろん元彼のことも好きだったけど、女性に惹かれる時の感情とは全然違っていた。実は当時、とても親しくしていた年上の女性に、彼女の結婚生活がいかに満たされていないかを打ち明けられたことがあって。その時にふと自分が重なって、「今のままだと私も将来同じような悩みを持ちそう」って思ったの。ずっと周りの人たちがどう考えるかばかり気にして生きてくつもり?って。もっと自分の人生に自信を持たないと、より大きな幸せは得られないって気づいたの。

――YouTubeでカミングアウトすることに決めたときの心境を聞かせてください。

2年前、日本に住んでいた頃に友達や家族に打ち明けて、動画を作って投稿したのが去年の夏。あるがままの自分を受け入れ、初めて同性の恋人と真剣な交際が出来た頃にやっと、YouTubeで公表するだけの勇気を持てるようになったわ。私がカミングアウトすることで、かつて私がそうだったように自分自身を認めるのが恐いと思っている人たちの手助けになるかもと思って。実際に、ものすごく多くの人たちから感想が寄せられたわ。でも、そこまでいくのに11年かかったの。気がかりは両親のことだけだった。

――カミングアウトする過程で、何を学びましたか?

友だちはみんなとても理解があって、支えてくれた。不安な気持ちもあったけれど、むしろとても喜ばしい結果になったの。20歳の妹にも伝えたけど、彼女のリアクションは最高だった!  「いろいろ言ってくる人のことなんてほっとけば? いいじゃん、自分の人生を生きなよ」って言ってくれたの。ガールフレンドのことも妹に紹介したんだけど、すっかり仲良しよ。でもやっぱり、両親に伝えるのが一番苦労したわ。とても繊細な話題だしね。父は想像以上に協力的で、「おまえは私の愛する娘だよ。おまえの幸せが私の幸せだし、何よりもおまえが幸せでいることが大事だよ」と言ってくれたの。涙が出たわ。今の私が悩んでいた頃の自分に教えたいのは、「あなたも家族を持てるのよ」ってこと。いわゆる“伝統的”なカタチではないかもしれないけど、価値は変わらない。「決して怖がらないで」って言いたいわね。自分が想像していた以上にみんなが支えてくれたから!

――カミングアウトは勇気が必要ですよね。どうしてそんなに勇敢になれたと思いますか?

リスクを取りつつ、自分の夢や信念を追っている時は楽しいし、勇敢になれるの。まさにこれまでの5年間がそうだったわ。活動の拠点を移して、身長が高くないながらにモデルというキャリアに全力で向き合い、世界中の人々と出会ってきた。先が見えない状況に置かれるとアドレナリンが出るタイプなの。それに、目標を達成するためなら全力を尽くせるわ。拒絶されたり、疎外感を感じたりすることは、もっと頑張って自分の可能性を知ってもらうための入り口だと思っている。ゲームみたいで楽しいし、常により高みを目指そうと努力しているの。

――マイノリティに優しい都市や住みやすい国はどこだと思いますか?

いろいろなところに行ったけど、これまでちゃんと住んだことがあるのは、東京、ロンドン、LA、メキシコシティ。LGBTQ+に限らず、すべてのマイノリティが生きやすいのはLAとロンドンかな。でも、メキシコシティもLGBTQ+の人が手を繋いだりキスしたり、ハグしていても誰も気にしない。道を歩いていても、LGBTQ+カップルをたくさん見るの。家族連れの人も多くて、当たり前の光景になっているわ。メキシコシティのゲイ・プライド・パレードはラテンアメリカでは大規模なパレードのひとつだし、多分今年も夏にあるから、参加するのがすごく楽しみ! メキシコって経済発展などは日本より遅れているけれど、本当にオープンな国で、多様性への理解度はかなり先をいっていているの。トランスジェンダーのホルモン注射も国が負担してくれるのよ。とても素晴らしいことに、レストランとかどんなお店にも「ここでは性的嗜好や民族、人種や宗教などによって差別することはありません」というサインが貼ってあるの。メキシコって危険なイメージがあるかもしれないけど、行ってみるとイメージが変わると思う。ぜひ行ってみて!

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Cédric Diradourian

――日本で暮らしているときにレズビアン、外国人ということで困ったことは?

日本では私はダブルマイノリティね。しかもここ3年くらいはヴィーガンだから、3重で大変だった。まず外国人ということでジロジロ見られたり、酔っぱらいが「ハロー、ハロー」って話しかけてきたり、シャイな私にとっては辛い時もあったわね。だからいつもマスクをつけて電車に乗ったりしていた。保証人を探して、家を借りるのも大変だったわ。LGBTQ+ということで怖い思いをしたことが2回あって、前の彼女と公園にいた時、手をつないでいただけで男性がジロジロ見てきて後をつけられたの。アパートの中まで入ってきて、座り込まれたこともあったわ。ものすごく怖かった。ヴィーガンに関しては、今でこそオーガニックとかベジタリアンとかが浸透してきたけど、2~3年前はまだヴィーガンという価値観が広まってなかったから、動物性食品をとらないって言うと「アレルギー? 宗教?」って質問攻めにされて…ただ私の選択だということを理解してもらえなかったの。

――逆に、日本の良いところはありますか?

いいところはいっぱいあるわ! メキシコにいると日本が恋しくなるの。まず日本は、やっぱり安全性が抜群。住みやすいし、便利だし、コンビニにはなんでもあるし、とても快適な国だと思う。日本人のルールに従って生きる考え方も嫌いじゃない。お互いをリスペクトしているし、すべてが整頓されている。文化も大好きよ。日本を出たくないっていう日本人がいる理由がわかるわ。だって、なんでもあるんだもん。北海道はスキーもできるし、沖縄には素敵なビーチがあって、美しい四季があって、モダンな東京、古い都市、田舎もあって、人も食べ物も全部ナイス。みんなに日本においでよって言っているの。

――多様性という意味において、日本はどう変わるべきだと思いますか?

日本でも、ファッションやクリエイティブな業界では、自分らしさにオープンな人が多いよね。ただ、日本はあらゆる面でとても先進的なのに、まだまだマイノリティな人々に優しい国ではないと思う。同性婚や養子の受け入れなど、課題も多いからね。日本の社会も、もう少しオープンになってくれるといいなと願っているわ。日本に限らず、カミングアウトがなくなる世の中になってほしい。慣習は大事だけど、みんなが同じ意見を持たなくてもいいことや、すべての人が違う人間であることを知ってほしい。それと、誰かが“その人らしくいる”ことで、あなたに何かのリスクがあるわけじゃないって知ってほしい。他人にどう思われるかってことをもう少し考えないようにするとかね。議論をするときは聞くところから始めてほしい。自分が生きられるのは、自分の人生だけ。誰を愛し、どう生き、どんな外見や装いを好み、どんな仕事をするか…他人にジャッジされる筋合いはないはず。みんな試行錯誤しながら生き抜いているわけだし。誰しも個性があって、2人として同じ人は存在しないことを理解し、敬意が持てれば、世界はもっと愛にあふれた生きやすい場所になると思うわ。

――今後の展望、果たしたいゴールは何ですか?

この質問で、改めて自分が何をしたいか考える時間が持てたわ、ありがとう! 3年前、仕事で台湾に5週間滞在していたときに、退屈しのぎにビートを作り始めたの。ただの趣味としてね。それがすごく楽しくなって、今、音楽を作っているの。歌うことが好きで、歌詞も自分で書いていて、ポルトガル語と英語の2つの言語で曲を作る予定。昨年からはウクレレもやっているわ。本当はギターをやりたかったけど、私には大きくて、難しいから(笑)。私の妹も歌うし、曲も作るんだけど、来月からメキシコに来るのよ。私のガールフレンドはマネージメント会社のアシスタントをしていて、ついに自分のレーベルを作ることになったから、彼女が妹と私のマネージメントをしてくれるの。私たちの関係とビジネスがごっちゃになるのはどうかとも思ったけど、一緒に仕事できることにすごくワクワクしているわ。ファーストアルバムは時間をかけて完璧なものにしたいと思ってる。あとは女性のエンパワメントに繋がるアクセサリーブランドを作りたい。2年前にもチョーカーを販売したんだけど、モデルの友達の応援もあって、すぐにソールドアウトになったの。つけている自分に自信が持てるようなアクセサリーよ。バッグとか、ゆくゆくは服のデザインもしたい。そして最終的には、メキシコで結婚して、子どもを持ちたいな♡

ありのままの自分自身を認めて、悩んでいる誰かの励みになればという思いでカミングアウトした勇敢なラウラさん。「自分らしくあること」に自信を持ち、人生を楽しみながら、新たな目標に向かって努力を重ねている彼女は、まさにコスモが目指すFun Fearless Female。そんなラウラさんからのメッセージは「Be Yourself」。「すごくシンプルだけど、いちばん大事なこと。それが真実よ」と話す、ラウラさんの大きな瞳はますますキラキラしていました!

撮影/Cédric Diradourian ヘア&メイク/RISA スタイリスト/町野泉美 モデル /ラウラ 取材・文/江口暁子

ジャケット/65,000円、シャツ/30,000円、ショーツ/27,000円 (全てアニエスベー) ピアス/26,000円、リング16,000円(共にテン デコアート/ヴィア バス ストップ ミュージアム)  ベルト/10,000円、ブーツ/32,000円(共にジーヴィージーヴィー/k3オフィス) ※全て税抜価格