ブロードウェイ界のアカデミー賞と呼ばれるトニー賞の授賞式が6月11日(現地時間)にニューヨークで開催された。脚本家のストライキによって、ホストやプレゼンターが台本なしで挑んだことや、リア・ミシェルが現在主演を務める『Funny Girl』から一曲を披露したことなどが話題に。

また、トニー賞で初めてノンバイナリーを公表している俳優2人が、「俳優部門」で受賞したことも注目を集めた。

ミュージカル部門の助演男優賞でアレックス・ニューウェル(30歳)が、そしてミュージカル部門の主演男優賞でジェイ・ハリソン・ジー(33歳)がそれぞれ受賞し、歴史を作った。

アレックス・ニューウェル

the 76th annual tony awards backstage
Jenny Anderson//Getty Images

人気ドラマ『glee/グリー』でユニークを演じたことで知られるアレックス・ニューウェル。現在は『Shucked(シャックド)』で演じているルルが大好評。

代名詞はhe、she、theyであるアレックスが今回「actor(俳優と訳されるが、演技をするもの、すなわち演技者という意味ともとれる)」へのノミネートを希望したことについては<Variety>にこのように話していた。

「演技をするものという英語の言葉通り、演技者である"actor"を選びました。演技者という言葉はジェンダーレスですから」

さらに、セクシャリティを母親にカミングアウトした時には、「あなたがどのような人生の決断をしても、どのような人間であっても、私はあなたを愛してるよ」と応援の言葉をかけられたと語っているアレックス。

受賞スピーチではそんな母親へメッセージを送っている。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「私はずっと、この時を待っていました。この場所にいる人みんなに感謝します。そしてママ、愛してる。私を信じてくれてありがとう。無償の愛を与えてくれてありがとう。真の強さというものを教えてくれてありがとう。そして全ての『シャックド』のキャストとクルーに感謝します。皆さんが私の支えなのです、愛しています。また、ブロードウェイには、私の存在を見てくれてありがとうと伝えたいです。私は、マサチューセッツ出身のクィアでノンバイナリーで体が大きな黒人としてここに立っているのではありません。そして、『自分には何もできない』と思っている人たちには、真剣にこう伝えます。『本気で取り組めば、あなたは何でもできる』と」

ジェイ・ハリソン・ジー

the 76th annual tony awards press room
Jemal Countess//Getty Images

東京ディズニーランドの元パフォーマーで、『キンキー・ブーツ』のローラ役などで知られるジェイ・ハリソン・ジー。

現在は『お熱いのがお好き (Some Like It Hot)』でジェリーとダフネを演じ、heやtheyの代名詞を使うジェイは、「肩書きや限界、それに境界線を自分自身のために取り除くことは大切だけれど、その先に同じように周囲をインスパイアできたらいいと思っている」と語ってる。

そんなジェイは受賞スピーチでも、他人のためになることをしたいと話した。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「神から与えられたギフト(才能)は、私のためにあるのではなく、他人を助けるため、そして世界に影響を与えるためにあるのだと、母に教えられてきました。私に、生き方、愛し方、与え方を教えてくれてありがとう。そして、トランスジェンダーやノンバイナリー、ノンコンフォーミングで、ありのままではいけない、存在を認められないと言われてきた人たち。この受賞はあなたたちへ捧げます。(中略)私に主演をさせてくれてありがとう、ありのままの私で仕事をさせてくれてありがとう、(ノンバイナリーの)を代表させてくれてありがとう」

過去には、後にノンバイナリーを公表したサラ・ラミレスとカレン・オリーヴォがトニー賞最優秀助演女優賞を、そして昨年の時点でノンバイナリーを公表していたトビー・マーロウが最優秀作曲賞を共同作曲者のルーシー・モスと受賞している。