ワールド・ツアーの開始を発表したばかりの音楽界のアイコン、マドンナがプレゼンターとしてステージに登場した第65回グラミー賞の受賞式の後、SNSにはマドンナの「顔」についての投稿が相次いでいる。

ある人は、「彼女の顔は完全におかしくなってしまった」とコメントし、またある人は「マドンナは常に憧れで尊敬する存在だったけれど、彼女の顔を見てとても悲しくなった。この世界、社会では(マドンナのような)強く、超かっこいい女性でも、レレバント(関連性を感じる対象)であり注目を集めるためには、あのようにする必要があると思ってしまう」とコメント。

一方、別の人は、「社会が“美の基準”とするものに合わせるべき」との圧力が問題なのだとして、「マドンナが30歳の時だって、彼女の顔や体、さらには手まで、その見た目にひとこと言わないと気が済まなった」「私たちは自分の体に対する“自治権”を持つことができるはず!」とマドンナを擁護している。

また、ライフコーチで自己啓発をテーマとした複数の著書があるミシェル・エルマン氏は、マドンナと同年齢の別の女性の写真を並べて投稿した人を批判。ボディシェイミングについて、「非難するのは一個人ではなく、体制(社会)であるべき」だと自身の投稿で主張している。

マドンナ
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エルマン氏は、私たちはこの問題について、「より深く、より批評的に考える必要がある」と述べている。社会が与える不安が、美容整形手術などによって自身の外見を変えるきっかけになる人が多いという。また、社会は私たちに、「年をとった女性は相手にされず惨め」「利益を得るためには、若くいなければならない」と教え込んでいると的確に指摘している。

「(社会は)常に、あなたの外見が問題なのだと言っています」「一人ひとりの個人は、ありのままのあなたでいては不十分だという社会システムの産物でしかないのです」

残念ながら、こうした批判にさらされてきた女性は(有名人に限らず)、マドンナだけではない。そして、これはどの年齢の人も直面する問題となっている。イギリスのリアリティ番組に出演していた女性(当時21歳)は、美容整形手術を受けたかどうかで注目を浴びた。

また、サラ・ジェシカ・パーカーは2022年、『アルーア』誌のインタビューで、年齢を重ねることに関するダブル・スタンダードを指摘。パパラッチされたグレイヘアの自身の姿が話題になったことについて語っている。というのも、一緒に写っていたTV司会者のアンディ・コーエンもサラ・ジェシカと同じようにグレイヘアになっていたが、大きく取り上げられることはなかったのだ。それどころかアンディは、(白髪の魅力的な高齢男性を指す)“シルバーフォックス”と言われていた。

celebrity sightings in new york city july 18, 2021
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実はこの出来事の前に、『セックス・アンド・ザ・シティ』とその続編でサラ・ジェシカと共演している俳優のクリスティン・デイヴィスも同じことを訴えていた。彼女は、「ずっとずっと若いころの自分と比較されることは、精神的にとても疲れること」だと述べている。

まさにエルマン氏が言うように、変える必要があるのは女性たちの外見ではなく、社会そのもの。彼女は、「誰かに対するボディシェイミングは、私たち自身が抱える不安の現れであることが多い」と指摘している。

イギリス版『コスモポリタン』に対してエルマン氏は、次のように述べている。

「(社会の圧力に)屈して自身の外見を変えることにした女性を下に見ることの方が、いまでは道徳的な優越感を得られることになっています。ですが、私たちが依然として女性たちをランク付けしたり、ほかの女性たちと比較したりすることを続けるなら、この問題を助長させることになります」

「私たちはあらゆる会話から、ボディシェイミングを排除する必要があります。ほかの誰かが自分の体について決めることは、私たちには何の関係のないことだと理解すべきです」

今回、自身の外見に多くのコメントが寄せられていることについて、マドンナ自身もインスタグラムで自らの考えを述べている。

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「私たちはエイジズムと女性蔑視が根付く世界に生きています。45歳を過ぎた女性を祝福することを拒否し、彼女が強い意志を持ち、勤勉で、冒険心を持つことを罰する必要があると感じてしまうのです」

「しかし、これは試練だと思っています。私が先駆者となることで、後に続く女性たちが、これから苦労の少ない生き方ができるのですから」

celebrity sightings in new york city august 10, 2022
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マドンナのように誰もが知る人であっても、私たちには、その外見についてとやかく言う権利はない。ただ、私たちは今回のこの件をきっかけに、何を変える必要があるのかについて広く議論し、同時に私たち自身の内面と対話し、持っている偏見について考え直すことができる。

セレブ、あるいは知り合いの誰かについて何か言う時、「いかに良い年の取り方をしているか」などについて話す時、私たちはまったく罪悪感を抱かずに発言しているだろうか?私たちはそうした発言を、“立ち入り禁止区域”に追いやるべき時ではないだろうか――?たとえそれが、「痩せて外見が良くなった」というような褒めるつもりの言葉であっても。

良くも悪くも、人を外見で判断することを重視しなくなれば、何歳でも、美容整形手術を受けたことがあってもなくても、きっと私たちの誰もが、より大きな力を持てるようになるはずだ。

From COSMOPOLITAN UK