LGBTおよびトランスジェンダーの性自認について、少しずつ社会が動いている昨今。とはいえ、今年に入ってトランプ米大統領がトランスジェンダー保護政策を撤回するなど、セクシャルマイノリティを取り巻く環境はいまだ平等とは言えないのが現実。

そんな中、トランスジェンダーであり人気モデルとして活躍するカルメン・カレラ31歳)が「次世代の子どもたちを勇気づけたい」と自らの過去を告白。彼女は人生をどう歩み、どう受け入れてきたのか? コスモポリタン アメリカ版からお届けします。

女性用トイレに入ると奇異な目で見られ、歓迎されていない雰囲気でいっぱいでした。

「すべてのトランスジェンダーの人が遭遇する"トイレ使用問題"――もちろん私にも経験があります。数年前までは男女どちらのトイレを使うべきかいつも悩み、毎回赤ちゃんのオムツ交換用の、ファミリー用トイレを使っていました。でもその後トランス(性別移行)がある程度進んだので女性用トイレを使うことに決めたのですが、中に入ると奇異な目で見られ、歓迎されていない雰囲気でいっぱいでした。だから空港ではトイレを使わず、機内に入るまでガマンしてしまうことも多かったんです。

現在トランスジェンダーの子どもたちが置かれている状況に"平等"はありません。このままでは子どもたちへのいじめを助長し、自殺する子も増えるでしょう。そんな今だからこそ、声をあげるべきだし、社会や政府は私たちの声に耳を傾けるべきだと思うのです」

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「私は大人しくて恥ずかしがりやな少年でしたが、しぐさや態度が"女の子っぽすぎる"という理由で、カトリック系の学校を退学させられた経験があります。男子生徒にいじめられても、かばってくれる人はいませんでした。その後公立の学校に移ったのですが、私のような子が学校生活を送るには、常に"生き延びるための術"を体得することが必要でした。"かばってくれる人と仲良しになる""目立たないようにする"などの戦略が必要だったのです。

息をひそめるように過ごした学生時代、プロム(卒業パーティ)にもパジャマパーティーにも行ったことはありません。私にはいわゆる青春時代もなかったんです。あの頃の自分に、今の私が持つ強さがあったなら…と思うことがよくあります。そのことが、私が声を上げている理由です。今のままの社会であれば、セクシャルマイノリティの子どもたちから未来を奪ってしまいます」

長い時間を掛けて、私は生き抜くための"キャラ"を作り上げてきたんだと思います。

「高校を卒業後、しばらくの間自分探しのための時間が必要でした。"男性に魅かれる"という自分の性的指向は分かっていたけど、"女性になる"という選択肢があるとは当時考えてもいなかったんです。その後男性と同性婚もしました。それが私に許された唯一のオプションだと思ったからです。でも心の中ではずっと『ある朝目覚めたら、女の子に生まれ変わっていたらいいのに…』と神に祈っていました。男性に生まれたことにいつも苛立ちを感じていましたが、初めてトランスジェンダーの人物に出会ったことで運命が変わりました。彼女はナイトクラブに出演していたパフォーマーでした。私も彼女のようになりたい、と思ったんです。

そして25歳のとき、ある決意をしました。"このまま(一致しない性別のまま)生きていくのか"、それとも"勇気を出して性別移行し、女性として生きていくか"を自問し、女性になることに決めたんです。

私は長い時間を掛けて、生き抜くための"キャラ"を作り上げてきたんだと思います。私にとって"生き抜く"とは、周りの人を喜ばせることで、私から離れないでいてもらうこと。でも実際には『私を受け入れてくれるの? それとも去っていくの?』と周囲に聞きつづけていたようなものでした。

正直、友人や家族を失うんじゃないかと不安でしたが、性別移行を決意したことで、家族や友人は離れるどころか、絆が深まりました。だから今が1番幸せだし、私自身、強くなったんです。例えばある会社に『君をモデルとして使いたいけど、トランスジェンダーだから無理だね』と言われたら、以前なら怒りがこみあげたはず。でも今なら『了解。他へ行くわ』とあっさり言える。だって私は強くなったから」

「性別を正式に"女性"に変更する手続きには1年半かかりました。何度も裁判所に出向き、膨大な書類を用意し、心理学者との面接、外科医や内分泌学者からの証明も必要…という大変なプロセス。でもこれは自分のアイデンティティとプライドをかけた作業だったんです。私は幸運にもこのプロセスを完了することができたけど、すべてのトランスジェンダーが登録上の性別を変えられるわけじゃないんです。本当に特別なことだと分かっています」

「トランスジェンダーの人たちには、今なお"普通の人生を送る資格がない"と思ってる人たちが多いんです。でもこれは間違っているし、フェアじゃない。世界中の人たちにこの現状を知り、考えてほしいんです。"もしあなたがトイレを使用するのを拒否されたら?""どこに行っても奇異な目で見られてしまうとしたら?""ありのままの自分を否定されつづけたら?"って。

多くの人たちにとって、トランスジェンダーの存在は興味のないことかもしれません。でも誰かを愛したり、人生を楽しんだりする、ごく当たり前のことができずに苦しんでいる人たちがいることを知ってほしいんです。そしてトランスジェンダーの子どもたちを守り、サポートする社会が実現してほしい――そう心から願っています」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN US