避妊方法の一つとしてだけでなく、生理痛や経血の量で悩んでいる人にもメリットがある「低用量ピル」。日本での内服率はそこまで高くないものの、最近ではピルの「オンライン処方」に対応したクリニックやサービスが増えてきています。
今回は、低用量ピルとピルのオンライン処方について産婦人科医の富坂美織先生に取材。オンラインで診療を受けて、処方してもらうまでの注意点も教えてもらいました。
監修:富坂美織先生(産婦人科医)
【INDEX】
「低用量ピル」とは
低用量ピル(低用量経口避妊薬)とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれる成分とプロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれる成分との配合剤のこと。一般的には、生理周期に合わせて毎日1個の錠剤を服用すると、配合されている2種類の女性ホルモンの作用により排卵を抑制し、避妊の効果が得られます。
正しく服用していた場合、99.7%の避妊効果が期待できますが、国連が発表した2019年のデータによると、日本でのピル内服率は2.9%だそう。
低用量ピルはこうした避妊目的の他に、月経困難症や過多月経といった症状の改善効果があります。
これまでは1カ月に1回の休薬期間を設ける周期投与がこれまで基本でしたが、最近ではより長期間連続投与を行う低用量ピルも承認されています。
低用量ピルのメリットと副作用
メリット
低用量ピルのメリットとしては、下記のような点が挙げられます。
- 避妊法の中で最も効果が高い方法の1つ
- 月経痛(生理痛)の軽減
- 出血量が減る
- 月経前不快気分障害(PMDD)に効果が期待できるものも
副作用
一方で、副作用や注意点として気を付けたいのは、下記のこと。
- 吐き気などの副作用
- 静脈血栓塞栓症のリスク
低用量ピルの種類
まず大きくわけて、避妊目的の保険適用外のピルと、治療目的の保険適用のピルがあります。
そのなかでも、休薬期間が1カ月に1度のものと、より長期間連続投与できるもの、また、粒に含まれるホルモンの配合がすべて同じものと、粒によって配合割合が異なるものがあります。
まずは自分がピルを飲んでも大丈夫な状態かどうかを把握することが大切です。下記が当てはまる場合には、注意が必要だったり、使用ができないケースがあります。
- 年齢が40歳以上
- BMIが30以上
- 35歳以上で1日15本以上のたばこを吸う
- 重度の高血圧や糖尿病
- 肝臓の障害
- 心臓血管の危険因子がある
低用量ピルは医師の処方によって服用するもの。自分の症状や服用目的、生活スタイルを伝えたり、自分の身体の状態をしっかりと把握したうえで問診票に記入して、医師に相談の上、自分に合った種類のピルを選んでもらってください。
ピルのオンライン処方のメリット
コロナ禍でオンライン診療を始めるクリニックが増えたこともあり、ピルのオンライン処方にもアクセスしやすくなりました。
メリットとしては下記のような点が挙げられます。
- 通院の時間がかからない、待ち時間がない
- 場所を問わずオンラインで診療を受けることができ、手軽で便利
- 対面より相談しやすいという場合も
ピルのオンライン処方の注意点
一方でオンラインで診療を受けたとしても、症状によって超音波などの検査が必要となり、オンラインだけでは完結せず、来院を勧められる場合もあるかもしれません。
また、実際に超音波や触診はできず、直接全身状態を確認できないため、医師に症状を言葉で適切に伝える必要があります。いつから、どの部位にどういった症状があるのかはもちろん、診療前に自分の月経の状況等を把握しておくように準備しておきましょう。
ピルのオンライン処方の課題
ピルが合わなかったときに困ったというケースもある、ピルのオンライン処方。
そうした場合だけでなく、クレジット決済や、オンライン機器の不具合、料金に不安があるときには、実際の診療と組み合わせるのもいいでしょう。
産婦人科医 富坂 美織先生
産婦人科医、医学博士。不妊治療を専門とし、テレビや雑誌など、幅広いメディアで活躍中。「さくら・はるねクリニック銀座」勤務の他、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師も務める。著書に『2人で知っておきたい 妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)など。