3月8日は国連が定める国際記念日である「国際女性デー」。女性の平等な権利について考える日とされていて、国際女性デーの公式サイトによると、2022年のテーマは「#BreakTheBias(バイアスを打ち破れ)」。
「男女平等の世界を想像して。偏見や固定観念、差別のない世界。多様で、公平で、包括的な世界。違いが評価され、称えられる世界。私たちは共に女性の平等を実現することができるはずです。力を合わせることで、私たちは皆、バイアスを打ち破ることができるのです」
SDGsの目標の一つにも掲げられる「ジェンダー平等の実現」に向け、私たちができることについて今一度考えてみよう!
国際女性デーとは?
「国際女性デー」は、毎年3月8日にある国際記念日。女性が平等に社会参加できるような環境づくりを呼びかける日として1975年に国連が制定。
1904年3月8日にアメリカ・ニューヨークで女性労働者が参政権を求めてデモを行ったことがきっかけとなり、1910年にコペンハーゲンで開かれた国際社会主義者会議で、この日を「女性の政治的自由と平等のために戦う日」とすることが提唱されました。
その後、戦争が激しくなるなか、各国で女性たちのデモや活動が活発になり、日本でも1923年に女性の政治的、社会的自由を訴える集会が初めて開かれ、終戦後の1949年には「婦人の日」も制定。
イタリアではこの日に男性から女性にミモザの花を贈る風習があることから、別名「ミモザの日」とも言われ、世界中がミモザのイエローカラーに包まれる日となっています。
なぜミモザ?
イタリアでは、3月8日は女性に感謝を伝える「FESTA DELLA DONNA(フェスタ・デラ・ドンナ=女性の祭り)」の日。男性が女性に敬意と感謝を込めて、この時季にイタリアで咲きほこるミモザの花を贈ることから「ミモザの日」とも呼ばれるように。
イタリアらしいこの風習、パートナーだけではなく、母親や友人など、いつもお世話になっている人にもプレゼントするそう。「春を告げる花」として知られるミモザは「感謝」「友情」「優雅」など様々な花言葉を持ち、愛と幸福を呼ぶ花としてヨーロッパ全体でも愛されています。
ジェンダー平等の実現はSDGsの目標の一つ
「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略であるSDGsは2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193カ国が2030年までに達成すべき17の目標。
目標5の「ジェンダー平等の実現」は、すべての女性と女の子へのあらゆる差別をなくすことに加え、政治や経済のなかで何かを決めるときに、男性と同じように参加したりリーダーになったりできるようにすること、子どもを産むかどうかや、いつ何人産むかついて個人やカップルが自由に選択できること、そしてとくに途上国で問題となっている児童婚や女性性器切除(FGM)などの有害な慣習をなくすことについて具体的に提示しています。
2021年は「女性リーダー」と「コロナ禍」にフィーチャー
そんなSDGsの目標であるジェンダー平等を実現するために制定された国際女性デー。3月8日に合わせて毎年テーマが発表されていて、2021年は「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」。
コロナ禍での各国の女性リーダーたちの奮闘ぶりと、コロナ禍で深刻な影響を受ける女性たちについて取り上げています。
日本では特に政治分野での格差が課題
日本はどうかというと、首相はもちろん男性。世界経済フォーラムが発表した、男女間の不平等を示す「日本のジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本は153カ国中121位で、G7中最下位。
この指数は経済、政治、教育、健康の4つの分野で格差を分析していて、政治単独で見ると日本はなんと125位。衆院議員で女性が占める割合も10%に満たず、191カ国中165位(2020年1月時点)と先進国では最下位。
ちなみに全体で1位のアイスランド、2位のノルウェー、3位のフィンランドはいずれも女性が首相を務め、ノルウェーやフィンランドでは女性議員の割合も40%を超えています。
コロナ禍で苦境に立たされる女性たち
弱い立場の女性たちをますます苦しめることになったのが、コロナ禍。
女性は最前線の労働者の大多数であるにもかかわらず、非正規雇用の割合が高く、男性との賃金格差も大きいため、経済危機の影響を受けやすいとのこと。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の女性たちが、家庭内暴力、無給の育児・介護義務、失業、貧困の増加に直面しています。
特に途上国ではパンデミックにより、これまで行われてきた児童婚やFGMを回避するための支援の実施が難しいこと、貧困と格差が拡大して、今まで以上に数が増えていることが懸念されています。
日本では女性と子どもの自殺率が上昇
日本では、コロナ禍で女性や子どもの自殺率が上昇。東京都健康長寿医療センター研究所などの発表によると、コロナ第2波では、女性の自殺率が37%上昇し、男性(7%)の約5倍、20歳未満の自殺は49%上昇。
また、内閣府によると、2020年度の家庭内暴力相談件数も2020年11月末までに13万2355件と過去最多を記録。在宅時間が増え、不安やストレスなどから家庭での暴力が増えている実態が浮き彫りに。
ここからは、これらの現状についてSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を目指して活動する、国連人口基金(UNFPA)の佐藤摩利子・東京事務所長に話をうかがいました。
1. 枠組みは変わっても、意識が変わっていないことが問題
戦後、女性も参政権を得るなど、法律面では変わってきました。けれども構造的差別、固定観念やジェンダー規範、無意識の偏見、空気感はあまり変わっていません。
アジアの国々ではめざましい経済的な発展や民主化にともない、女性の地位も少しずつ向上して徐々に価値観が変わっていくなか、先進国であるはずの日本だけが取り残されています。その根底には、女性が前に出ることを良しとしない社会構造や多様性を受け入れない寛容ではない社会の存在が。
東京五輪・パラリンピック組織委員会の一連の問題では、一個人の発言や女性差別の問題のみならず組織のあり方やガバナンスも問われています。残念ながら、日本の「普通」は世界の「普通」ではないこと、日本のジェンダーランキングがなぜこれほど低いのかということを世界に露呈する結果となってしまいました。
2. コロナ禍で後退する支援
新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで行ってきた女性の健康と権利を守るための様々な支援が停滞どころか、後退してしまっているという危機的状況です。
日本でも多くの女性が大変な状況に追い込まれていますが、途上国ではとくに顕著。性差が、コロナ禍で深刻となった格差をますます助長しています。女性の力を活かすことは、国力を上げていくためにも不可欠なのです。
3. 連帯し、声を上げましょう
これまでは多くの女性がなかなか声を上げることができませんでした。けれども今はオンラインでも声を上げられ、同じ考えの人とつながりを持てる時代です。それによって、以前に比べて格段にムーブメントを起こせる時代になりました。
たとえば、セクハラなど性的被害に対して女性たちが立ち上がった#MeToo運動はアメリカから世界中に広がりましたし、冒頭に挙げた東京五輪・パラリンピック組織委員会元会長の発言を巡っては、日本に駐在するヨーロッパ各国の大使館などがSNSを通じて#dontbesilentを訴えました。
課題を一つひとつクリアしていくことで、自分たちは世の中を変えられるのだという自信につながり、それがまた次の行動につながっていくのだと思います。
ポジティブなムーブメントを一緒に起こしていきましょう。危機をチャンスにし、意識の転換点となることを期待しています。UNFPAは支援の必要がなくなるその日まで、世界中の皆さんと一緒に活動し続けます。
国連人口基金(UNFPA)東京事務所の佐藤摩利子所長
Profile
秋田市出身。短大卒業後、1年間米国に留学し、帰国後は秋田市役所で勤務。その後、再渡米し、ニューヨーク州立大学で女性学を、コロンビア大学大学院で開発経済を学んだ。
国連人間居住計画(ハビタット)福岡本部(アジア太平洋担当)、ジュネーブ、バンコク事務所などを経て、2017年から現職。途上国で女性の命と健康を守る活動を推進。