世界中で注目を集め続けている、2020年米国大統領選挙。コロナ禍で繰り広げられたこの歴史的な接戦は、民主党のバイデン候補の勝利が確実となりました。

新「バイデン政権」が、アメリカや世界をどう変えるのかについては連日メディアで取り上げられていますが、本記事では中でもアメリカ人女性の地位向上や権利への変化についてフォーカス。<レッド イギリス版>から、米国大統領選挙でバイデン氏が女性から支持された理由や、女性に与えうる変化をお届けします。

※本記事は、記事が執筆された2020年11月8日時点の情報です。


【INDEX】


バイデン氏を勝利に導いたのは「女性票」

2020年の米大統領選挙でバイデン氏が当選した理由に関する分析が進むなか、同氏の勝利を支えたのが“女性票”と言われています。

前回の2016年の大統領選挙では、民主党からの候補が「アメリカ史上初の女性大統領」になりうるヒラリー・クリントンだったにも関わらず、白人女性の投票者の過半数がトランプ氏に投票したという事実は、波紋を呼びました。

しかし4年後の2020年の大統領選挙では、流れが一転。

選挙前世論調査によると、郊外に住む白人女性有権者からのトランプ氏の得票率は44%と半数を下回り、バイデン候補は51%の支持を得る形に。アフリカ系女性からはバイデン氏が84%の支持率を獲得した一方で、トランプ氏を支持しないと回答したのが87%にも及んだのだそう。

それではなぜ、多くの女性たちが今回バイデン氏を支持するようになったのでしょうか。

supporters of joe biden celebrate across the country, after major networks project him winning the presidency
Samuel Corum//Getty Images

女性たちがバイデン氏を支持する理由

最低賃金と有給休暇

データの分析を行う企業「Morning Consult」社は、バイデン氏を支持する理由には、女性の権利や賃金におけるジェンダー不平等、ヘルスケアなどよりも、単純に「経済的な理由」が女性たちの決断に影響を与えたと分析します。

トランプ政権による経済政策により、一時的には失業率が低下して、個人の所得が増加したものの、新型コロナウイルスの影響により大打撃を受けた人が多く、そのダメージを顕著に受けたのが、女性を含む社会的弱者たち。

そういった背景から、バイデン氏が提言した最低賃金の引き上げ(現在の7.25ドルから15ドルに)と、年間12週間の有給家族休暇と病気休暇の取得確保の政策が、社会的にも不利な状況に追いやられている女性たちにとって、バイデン氏に票を投じる理由の一つとなったのだそう。

妊娠中絶問題

女性の権利における重要な政治争点となっていた「妊娠中絶問題」についても、バイデン氏は連邦資金での「妊娠中絶費」の援助に賛成する意思を表明しています。

トランプ氏は、大統領就任後から保守派の最高裁判事を二人指名しており、これにより1973年に米最高裁が中絶を女性の権利として認めた「ロー対ウェイド」判決が覆され、中絶が違法となる可能性が浮上していました。そのため、バイデン氏が大統領に就任すれば、トランプ氏がまいた種を回収し、女性の権利が守られるだろうと考える人も少なくありません。

また、バイデン氏は男女平等のための憲法修正条項の批准を目指す表明。ジェンダーによる賃金不平等の是正のため、賃金決定の仕組みの透明性を高める意向も示しました。そして、妊娠中や妊娠直後の女性に対する職場での差別をなくし、職場でのセクシャルハラスメント被害者の保護を強化すると約束したのも、女性たちにとって好印象を残した模様。


「女性に寄り添う大統領」とするには問題も…

バイデン氏の「女性の権利」を守る姿勢は明確であるものの、無視できないのが同氏の「セクハラ疑惑」。7人の女性が、バイデン氏から不適切な接触を受けたと主張し、2019年には元アシスタントであるタラ・リード氏がセクハラを告発しています。

また、1991年にクラレンス・トーマス最高裁判事のセクシャルハラスメントについて証言したアニタ・ヒルさんに対して、当時公聴会の委員長を務めていたバイデン氏が、セクハラの被害を受けた女性に対して“無神経”とされる質問を投げたという事実が浮かび上がっています。


女性が活躍できる社会を目指して

president elect joe biden and vice president elect kamala harris address the nation after election win
Pool//Getty Images

今回の選挙で注目を集めたのが、民主党の副大統領候補であるカマラ・ハリス氏。有色人種の女性が副大統領となるのは、アメリカ史上初。そんな彼女を副大統領候補として指名したバイデン氏の政権に、期待が寄せられます。

2017年に激化した「#MeToo」運動によって、過去最多の女性たちが選挙に参加し、イルハン・オマルやアヤンナ・プレスリー、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスなど、有色人種で女性のカリスマ性溢れる政治家が活躍。

新「バイデン政権」で、より多くの女性たちが声をあげることができ、世界を索引していくために力を発揮できる環境が作られるか、注目が集まります。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: ARI

RED UK