朝起きて会社へ行き、決められた仕事をこなす…。そんな繰り返しの毎日に物足りなさを感じているとしたら、思い切って起業をしてみるのもアリ! 意外なことに、そこまで身構える必要はなく、自分の強みや経験を活かして、まずはできることからスタートする人も多いのだとか。
今回は、日本各地にに多くの受講生を抱える、女性起業家コミュニティサロン「大人の女子校」の代表である瀬戸まりこさんに、はじめての起業を成功へと導くためのヒントを伺いました。
——瀬戸さんは、2015年7月に「大人の女子校」を立ち上げられたわけですが、現在では、北海道から沖縄まで、全国各地に約350名の受講者がいらっしゃるそうですね。メンバーにはどのような方が多いですか?
20~50代まで幅広い年齢のメンバーがいて、これから何か起業したいと考えているビジネス初心者の方をはじめ、すでに月に7桁稼ぐ女性経営者の方や、育児をしながら家で何か好きな仕事がしたいというママまで、さまざまな背景をもった女性たちが集っています。
——瀬戸さんから見て、受講生に一貫しているスタンスは何かありますか?
みなさんからよく伺うのは、「自分らしく生きたい」ということ。女性は、結婚や出産、育児といったライフスタイルの変化によって、仕事など諦めなければならないことが多いと思われがちですが、実はそんなことは全然なくて、自分を活かせる場所は社会にたくさんあるはずなんです。この「自分を活かして、私らしく」というのは、「大人の女子校」が大事にしているコンセプトでもあります。
——20代後半~30代前半の受講生の中で、もっとも多い相談は?
今から5年ほど前には、やりたいことがすでに決まっていて、これで起業がしたい!という方がほとんどだったのですが、今は自分のやりたいことよりも、むしろ「起業」という働き方に憧れをもつ若い女性が増えています。自分で時間をコントロールでき、お金も好きなように稼げるといった自由度の高さは、やはり魅力的ですよね。では、実際に何をサービスにするのかを考えたときに、手に職もなければ、資格ももっていないので、どうすればいいですか?といった相談が多いです。
——実際、資格は必要なのでしょうか?
何か資格がなければ起業をできないと思っている方が多いですが、必ずしもそんなことはありません。私も最初はそうでしたが、自分に商品がない場合には他人の商品を売るお手伝いをしたり、これまでの経験をキャッシュに変えたりすることだってできるんです。
私が実際にアドバイスをした事例として、OL時代に事務でパソコンを使って資料作りをしていたという方に、「女性起業家むけに、書き換えのしやすい、リーズナブルなチラシを作ってみては?」と言いました。起業初期はお金も時間もない方が多いので、これは需要があると思ったんです。まずはチラシ作りからスタートし、その後は個人事業主の事務の代行、現在ではSNSやブログに貼る企業広告の作成まで、活躍の幅はどんどん広がっています。
また、好きなものや趣味がはっきりとしているのなら、それを活かしてビジネスをすることも。もともと歴史や神社めぐりが好きで、自分で参拝ツアーを組んで見所を案内する仕事を始めた方がいて、これが「スピリチュアル」や「神社女子」というマーケットに響いて人気になっています。
——将来の安定性を考えることも大事ですが、ひとまず今できること、やりたいことで起業をしてみるのはアリかもしれませんね。
結局、将来を見越して動いても、向いていないというケースもあると思います。ですから、まずは①「自分で商いをする」ということを経験してみましょう。その次に、②ビジネスを長く続けるためには何が必要なのかということを受講生にもアドバイスするようにしています。
——何が必要なのか、少しだけ教えていただけますか?(笑)
まず、大前提としてあるのが、価値のあるサービスを提供すること。加えて、長くビジネスが続いている方を分析していくと、「人柄」と「応援者」の存在も欠かせないと感じます。もし、同じ商品があったら誰から買うのか。そこで競合の中から選ばれるためには人柄の良さは重要ですし、併せて、お客さんだけではなくビジネスをサポートしてくれる仲間や支援者の存在も重要になってきます。
——起業家も、いかにファン(お客さん)を惹きつけていくのかという、自己ブランディングなんですね。セルフプロデュースするという意味で、「モテ人間」になるための秘訣はあったりしますか?
モテ人間に必要なのは、自己開示だと思います。これは、「私はこういう人間です」と相手に伝える能力です。そのためには、まず自分の魅力を知ることから始めましょう。しかし、それも文章で伝えるのか、直接話して伝えるのかなど、人それぞれで強みが分かれてきます。
——「自分を知る」というのは、なかなか難しいことですよね。
難しく思われがちですが、それは方法を知らないだけかもしれません。例えば、毎日鏡をよく見るというのも1つの方法ですし、人に「私の長所はどこだと思う?」と聞いてフィードバックをもらうのも有効だと思います。
——現在、会社勤めをしていて、将来的に起業を考えている方に必要な心の準備と、起業へのステップを教えてください。
まずは、今の自分の生活(会社と自宅)以外の世界を知ることから始めてみましょう。例えば、習い事やボランティアなど、なんでも興味のあることでかまいません。新たな自分の居場所ができることで、会社のストレスが軽減されたり、仲間から生き方のヒントを得ることができるかもしれません。
「大人の女子校」には、年齢も職業も違う、さまざまなバックグラウンドをもった全国の仲間が集っているので、そのコミュニティへの参加を楽しみに受講をしてくださっている方もいらっしゃいますよ。
続いて、起業までのステップとしては
①まずは人と繋がる
②そのコミュニティに属する人たちの思いを知る(何を求めているのかなど)
③その中で自分が提供できそうなことがあったら、小さなことでもいいからやってみる
④それが相手にとって本当に必要なことだったら、お金を払って頼まれるように
⑤起業
私がおすすめしているのは、商品ありきではなく、先にマーケット(顧客群)を作ってしまうこと。そこにある声を拾って、自分ができることを提供すれば、ニーズに添った価値のあるサービスが自ずと生まれるはずです。
仮にそのニーズが自分の思いと少し違っている場合でも、まずはお金を稼ぐ練習だと思って、チャレンジしてみることをおすすめします。商いが軌道に乗ってきたら、自分のやりたい方向へとビジネスをシフトさせていくのが賢明です。
起業で成功していた女性のエピソード
▼ブログ診断
もともと不動産営業をされていて、そのときにお客様へお礼状を書くのが上手で、とても相手に喜ばれたという方がいます。彼女は今、企業が発信するSNSやブログを顧客視点で読み、こうすればもっと伝わりやすくなりますよとアドバイスをする、ブログ診断の仕事で活躍しています。
▼ベビーマッサージ→ブログカスタマイズ
資格をとってベビーマッサージをしていた方がいるのですが、人気資格のため、他者と差別化ができずに悩んでいらっしゃいました。他に得意なことをヒアリングしたところ、ブログのカスタマイズができるということで、そちらにジョブチェンジするようアドバイスし、現在はそちらで成功されています。
どんなに自分のやりたいことでも、お客様のニーズがなければビジネスは成り立たないので、場合によっては方向転換をおすすめしています。
——起業前後で瀬戸さんの人生はどのように変化しましたか?
まずは、大人になってから友達や仲間ができたこと。これは受講生からもよく聞かれる嬉しい言葉です。自分の生活圏以外の地域にまでネットワークが広がり、次なるビジネスチャンスが生まれるきっかけにもなっています。また、社会の中で、私らしく活躍できる場が見つかり、そこで自分の力だけでお金を稼げるようになったことも、大きな自信を与えてくれました。
同じように、起業したいという女性一人一人にとって、自分らしく輝ける生き方が見つかることを応援していきたいと思います。
「大人の女子校」
代表取締役 瀬戸まりこさん
大手通信会社でのOL生活を経て、2012年7月に独立。以後、起業セミナーのサポート等を行いながら、2015年7月に女性のための起業サロン「大人の女子校」を開設。全国に約350名の受講生を抱え、毎月約20本のセミナー開催中。「自分を活かす」をモットーに、起業にむけた各種コンサルティングをはじめ、女性が自分らしく働くためのサポート活動にも力を注いでいる。